29 天空裁判
〇前回のあらすじです。
『ユノがあらぬうたがいをかけられる』
「はなしくらい聞いてあげたら? フローラ」
あきれたちょうしでユノとフローラのそばに着地したのは【パンドラ】だった。この場で最も冷静で――それゆえにつめたくも聞こえるのだが――最もユノが欲していた対応なだけに、内心で彼女の仲裁に喝采する。
パンドラはユノへのあいさつもそこそこに、地面に鎮座している金の小竜を抱きあげた。すこしさみしい気もしたが、パンドラとはまだわかれて一月と経っていないのだ。そんなものだろうとユノは自分に言いきかせる。
「【ハルモニア】さまがセレンから逃げるのに、ユノさんをうまいこと利用しようとしていたのかもしれないし」
「ちょーおっと。聞き捨てならないわね。うちのハルがそんなことするわけないでしょ」
「かと言って。ユノさんがさらったとも考えにくい。ってゆーか。それより苗木だよ。ハルモニアさま。【霊樹の苗木】についてなにか知りませんか」
ぱちん。
とフローラも指を鳴らした。ふたりはもうユノのことなんてほったらかしで、金の竜にかかりっきりである。
(なえぎ?)
ユノは気になったものの。
「ハルは良い子だから、なあんにもしてないわよねー。セレンがなくしちゃったみたいなんだけどさ」
「訊くときにはちゃんと訊こうよ。あまやかしすぎってよくないよ」
ちいさい竜は愛想よく「ふぎゃあ」と鳴いた。パンドラの腕からもぞもぞしてのがれる。ちいさい翼を動かして。空中をおよいで。フローラの胸に飛び込む。あたかも「自分はそんなのはじめて聞いたよ」と言わんばかりに。
大きな黄金の両目をきらきらうるうるさせている。姉のフローラを見つめている。




