28 誘拐の容疑
〇前回のあらすじです。
『ユノが【フローラ】にいきなり蹴られる』
「ユノっ。あなたねえ!」
ぐいっ。
倒れたユノの胸ぐらをつかんで、フローラはむりやり立たせた。
「なっ」
存外の腕力に、ユノはおどろきつつもふがふが鼻血の出た顔でうったえる。
「なんなんだよおっ。ボクがなにしたって言うんだよッ」
「なにもどおしたもないわよ。あんたね。いくら自分がモテないからって、こんな年端もいかないおさな子をゆうかいするなんて……。モテないからって、やって良いこととわるいことがあるわよッ」
「『モテない』を連呼しないでよ。気にしてるんだから」
はんぶん泣きながらユノはわめいた。それにフローラはゴカイをしている。
「ボクがつれてきたんじゃないよ。ボクがこの子に、ここにつれられて来たんだ」
「はあああっ!? あんたゆーにこと欠いてすべての罪をハルになすりつけようっての!? ずーずーしいにもほどがあるわ!」
「ぶへああッ!」
渾身の頭突きを鼻っぱしらにたたきこまれて、ユノはふたたびくずおれた。
ぐるぐる。
目をまわして草のうえに仰臥する。ぐるぐる。
ばさり。
上空から人のかげが降りてくる。
翼のある少女だ。