21 ユノとドラゴン
・まえの回のあらすじです。
『ユノが【妖精の世界】で、こどもの竜と出会う』
【竜】はふわりと柱のうえから飛んだ。
金色の翼がぱたぱたとせわしなく動く。
おむつをつけた身体が、くるくるユノの頭上を旋回した。
どすん。
黒い髪に、金の小竜が着地する。
ユノのあたまを乗りものがわりに、みじかい両足でしっかりとつかんでのしかかる。
「おもい……」
ぐきりと首をかたむけたまま、ユノは武器を取ることもせずに立ちあがった。
両手を草地について、ゆっくりひざをのばす。
かたぐるまのかっこうになっていた子どもの竜を、くろうして頭部からひきはなす。
だっこの要領で目のまえに持ってくると、竜はこちらの気も知らずに「よっ」とあいさつよろしく、みじかくふとい前脚をあげた。
ユノはあいてを凝視する。
(フローラ王女やアテナ王女の言っていた【黄金の竜】って、この子のことかな?)
以前、王都【ペンドラゴン】の王城で、ふたりの姫君からきいたはなしを思いかえしながら、ユノは考えた。
(でも、『神さま』っていうわりには、なんかたよりないよなあ)
おむつしてるし。
人間の子どもでいえば二歳くらいの大きさのドラゴンは、どこから調達したのか紙おむつをはいている。
とはいえいままで遭遇してきた【モンスター】には、「竜族」と呼べるような造形のものはいなかった。
あえて言えば、さきほどわかれた【サラマンデル】がその系統にちかい。が、彼らの【メルクリウス】における分類は、『爬虫類』――『トカゲ』に属する魔物である。
「ぎゃぎゃっ。ぎゃあ」
竜はじたじたと足を動かした。
ユノの手からのがれる。
「あっ」
翼を動かして、ふいっとどこへともなく飛びはじめる。
「待ってよ」
ユノは竜を追いかけた。思えばこの天上の島々の、どこを行けばいいのかさっぱりけんとうがつかないのだ。
ユノのいく場所は【霊樹の里】と決まっていた。
しかし光と雲の世界には、数多の小島といくつかの大きな陸地がある。
そのすべてに、ゆたかな森と緩急のある丘と清らかな滝や川が息づいていた。
くるり。
竜がふりかえる。
「ぎゃあ、ぎゃっ」
くいっ、くいっ。
ちいさな金の前脚が、うしろの少年を手まねきする。
ユノは駆けていた足を止めた。
(うげっ)
自分がいかにちいさな陸地にいるかを思い知ったのだ。
あのままいきおいにまかせて走りつづけていれば、足をふみはずして雲間におちていただろう。
一メートルほどさきに、ガケのふちはあったのだ。
そのそと側には、ずっとはなれたところに島がいくつもある。しかし、橋でもなければ到底たどりつくことはできない距離だった。
「あぎゃぎゃぎゃっ」
はやくしろ。
と言いたげに、竜が『空』をたたく。
一見とうめいな、空気をぶっているふうにも見えたが、たたいた衝撃でかすかにふるえたそれは、光の屈折によってゆらゆらとオーロラめいた色あいになみ打った。
ユノはおそるおそる、七色がゆれるとうめいな道のはし――がけっぷちまでのびる足場につまさきをのせる。
ブーツの底が、いちどたよりなくしずみこんだ。
すぐに、まるでフウセンのうえをあるくような、弾力のある感触がクツのうらを押しかえす。
これならあるけそうだと息をつき、ユノは見えない【道】をすすんだ。
竜がふたたびまえを向き、案内を買って出るように、雲のうえに浮かぶいくつもの陸地へとすすんだ。




