20 妖精の世界
・まえの回のあらすじです。
『ユノが光のはしらに飛びこむ』
〇
光のうずのなかで、ユノは正体なく揺らいだ。
ふわふわと浮くような酩酊感。
目を閉じて、きみょうな感覚がおさまるのをじっと待つ。
両足が堅いものに触れた。
すとん。
と音をたてて着地する。
重力が復活したように、ずしりとした向きのちからが全身にかかる。
自分の足で立つ感覚。
まぶたを持ちあげる。
うすくあけた目に、「サッ」とすべりこむものがある。
光だ。
まっしろで、目のくらむほどにあかるい。
緑のにおいがした。すみきった空気の、肺を満たす清涼なここち。
(天国?)
ユノはかんぜんに目をあけた。
純白な輝きにぼやけていた視界のピントが、徐々に合っていく。
『空』があった。足もとに。
巨大な巌か山のように盛りあがった雲海が、島々をよこぎっていく。
周囲にひろがる光景に、ユノはあぜんとした。
ちかくに人里のようなものはない。眼前にひろがるのは、無数の島と、船のごとく遊泳する白雲のかたまり。
そのいずれもが、日差しのなかにあった。
『天上の領地』なのだ。ここは。
夜空よりもたかく陽のかくれることもない。あるいは時間のながれがちがう。
まばゆさだけが満ちた場所。
【神】も【妖精】も【精霊】もいるのなら、なるほどここは、「天国」と呼んでもさしつかえのないところだった。
ユノは自分の立っている地点をあらためる。
エンタシスにささえられた、祭壇のうえにいた。【祠】。とでもいうべきか。
あたりに壁やとびらはなくて、ユノがでてきた光の柱は、陽だまりのなかに剥きだしになっていた。
「ぎゃふぎゃふっ!」
すぐそばから声がした。ユノはきょろきょろ、左右を見まわす。
だれもいない。
「があっ!」
「えっ」
ぼんっ。
火の玉が飛んできた。
ユノのあたまに直撃する。
赤い熱の球体は、雪だまのように弾けて消えた。
完全な不意打ちに、こめかみにうけた衝撃にまけてユノはころぶ。すぐに身を起こしながら、腰の剣に手をのばす。
と、視線がぶつかる。
黄金のまなざし。
「ぎゃぎゃっ。ぎゃふー!」
つる性の植物が、天然芸術のようにかざりたてるギリシャ風の石柱。そのたいらな天頂に、一頭の『像』があった。
西洋の寺院においていりぐちを守る、『ガーゴイル像』かとユノは思った。だがちがう。
【竜】だった。
生きている。
剣を抜くのもわすれて、ユノは金色のちいさな竜に見入った。
ぽかんとくちをあける剣士の少年のまぬけづらのうえで、竜の稚児はゆかいそうに、手をたたいてわらっていた。




