表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅する不死者は昼も歩く  作者: 真野真名


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/36

33、何もしない距離

 すみません。過去投稿分の文体、内容一部修正しました。


22、金髪の冒険者(文体修正)

24、暗がりへの決意〜31、夜の侵入者(文体修正)

32、顔を見る距離(文体修正、内容変更)





32は内容が少し変わっています。











 代官所は、街のど真ん中にあった。


 昼間は人が出入りして、夜になると門が閉まって、兵が立つ。


 よくある役所。

 ……の、はずだった。



 夜の代官所は、妙に静かだった。


 見張りはいるし、灯りもついてる。結界だって、ちゃんと張られてる。


 なのに、なんていうか──

 「誰も使ってない建物」みたいな空気がする。


「……ここ、嫌な感じする」


 気づいたら、口に出てた。


「正しい」


 すばるが、短く返す。


「人のために使われている場所じゃない」


 フォローもオブラートもなし。……ほんと、この人はこういう人だ。


 門を越えるのは、拍子抜けするほど簡単だった。

 統が結界に触れると、それは抵抗もせず、すっと道を空ける。


「……壊してないよね?」


「壊していない。“客”として通されただけだ」


「あとで怒られたりしない?」


「問題になる頃には、我々はいない」


 はい出た。

 身も蓋もないやつ。


 

 中に入ると、びっくりするくらい整っていた。

 廊下はピカピカに磨き上げられ、壁には紋章っぽいものが。

 多分、男爵家の家紋なんだろうけど、和風な香りがする。


 深夜だから、寝静まっているんだろうけど、人が暮らしてる気配が感じ取れない。


「……住んでないの?」


「住んではいる。ただし、“生きて”はいない」


 言いたいことは分かる。

 分かるけど、ちょっと言い回しがキメすぎ。


(この人、長い人生のどこかで絶対浮いてたよね)



 探し物は、きっと執務室と、保管庫にある。

 まずは怪しい地下から行くことに。


 階段を下りるにつれて、空気が変わる。


 冷たい。

 湿っていて、重たい。


 金属の匂い。

 紙の匂い。

 それに、ほんの少しだけ──血の残り香。


「……あった」


 棚の一角。そこに、見覚えのある布があった。

 わたしは、思わずその場にしゃがみ込む。


 ローデリヒの上着。

 安物だけど、ちゃんと手入れされてたやつ。


 ディルクの工具袋。

 刃の減り方まで、そのまま。


 ──ここに、あった。


 “処理された”はずなのに、

 きれいさっぱり消せてない。


「……証拠だね」

「ああ」


 統は淡々と書付を確認していく。


 日付。

 命令書。

 署名。


 全部、合法の形。

 だからこそ、たちが悪い。


 胸の奥で、“深い心臓”が、

 ごん、と低く鳴った。



 そのとき、上から足音がした。

 階段を下りてくる音。

 軽い。焦ってない。


 統が、静かにわたしを止める。


「……来る」


 階段の上に、灯りが揺れた。


 現れたのは、若い男。


 派手な服。

 指輪。

 顔には、まだ余裕が残ってる。


「……誰だ?」

 声が、ちょっと震えてた。

 強がりの震え。


 ──グソック・オーダイン。


 オーミ代官、クアンサマ・オーダイン男爵の息子。


 彼は、わたしたちを“見てしまった”。


「衛兵を──」

 叫びかけた口が、途中で止まる。


 統が、一歩前に出ただけ。


 触れてもいない。何もしてない。

 ただ、そこに立っただけ。


 グソックの喉が、ひくっと鳴る。


「……な……なに……」


 目だけが、逃げ場を探してる。

 でも、体が言うことを聞いてない。


 わたしは、前に出た。


 一歩。


 殴れる距離。

 殺せる距離。

 ……でも、何もしない距離。


「……覚えておいて」


 自分の声が、思ったより低くて驚く。

「今夜、ここに来た人がいたこと」


「ひっ……」


「あなたは、生きてる」

 はっきり言った。


「それは、選ばれたからじゃない」


 グソックは、完全に息を忘れてた。

「……父上に……」


「言えばいい」

 統が、淡々と続ける。

「だが、証明はできない」


 理解した瞬間、グソックの顔から血の気が引いた。


 わたしたちは、何もしない。


 でも──


 入られた。

 見られた。


 触れられなかった。


 それだけで、十分すぎるほどだった。


 統が、わたしの肩に手を置く。

「行くぞ」


 振り返らずに、階段を上る。

 背後で、何かが崩れる音がした。



 外に出ると、夜風が冷たい。


 代官所は、何事もなかった顔で立っている。


 でも──中は、もう静かじゃない。


 わたしは、手の中の遺品を強く握った。

「……終わりじゃないね」


「ああ」

 統が答える。

「だが、一区切りだ」


 

 代官所の闇を背に、わたしたちは、音もなく去った。


 胸の奥で、“深い心臓”が、静かに、確かに、脈を打っていた。








 すみません。

 いろいろ書き散らしているせいで、文体(地の文)に揺れが出ていましたので、修正致しました。


32は内容修正(シーン削除、後半33への繋がり修正)しておりますので、この回を読んで「ん? んん?」って感じたら、「ごめんなさい」32の再読お願いいたします。





 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ