第12話 ミスタートクダ、あなたは何者ですか?
トクダの一員となったハンプスはGVへの報復を考えていた。元は自分が作った対トクダ戦略。切り崩し方も穴もすべて彼女にはわかっていた。それを見据えてか、清久はハンプスにこのようなことを言った。
「あなたを失ったこと後悔させてやればいい。それはそれでかまわない。だが、私があなたに求めているのはそんなことではない」
ハンプスは尋ねる。
「何をお望みでしょう、ミスタートクダ? 私はトクダが欲するモノを全力で献上する覚悟です。そのために私はここにいます」
「私は、敵対行動を望んではいないよ」
驚いてハンプスは尋ねる。
「ライバルを蹴落とさないのですか?」
「しない」
「そんなことで生き残れますか?」
ハンプスは疑わしげに清久のメガネの奥の瞳を覗き込んだ。
清久が逆に尋ねる。
「生き残るべきはどこだい?」
ハンプスは考える。トクダの盟主はトクダの生き残りを考えていないのか? 自分の選択は間違いだったのか?
「生存を賭けてライバルと戦い且つ切磋琢磨する。そうしてモビリティ業界は発展してきました」
「そのとおりだ。そうやって我々は成長してきた。だが、これからはそうではない」
「何が違うのです?」
「自動車業界だけに関して言えば、垣根を超えてクルマを愛すればいい。だが、これからは自動車業界だけではない。未来に必要とされている異業種の企業ともどんどん手を結ばなければならない」
ハンプスはいま一度自分を買い入れたトクダの真意を探る。
「だったらなぜ私を迎え入れたのです? GVを倒すためじゃなかったんですか?」
「違うよ」
「わかりませんミスタートクダ。あなたは私にいったい何をして欲しいのですか?」
「うん。共に人類の未来のために働いて欲しいんだよ」
「ミスタートクダ、あなたは何者ですか?」
「私かい? 私はただのクルマ好きさ」




