始まりは星の下で
星空を見上げている二人の少女がいた。
片方は綺麗な白髪。もう片方は艶やかな黒髪。そんな対称的な二人は星の下で夢を語っていた。
「私は絶対にあんたに負けないぐらいの大魔道士になって、私だけの魔法を研究しつくす!」
「そう、なら私はあんたより年収の高い職に就いてぬくぬく暮らしていこうかしら。」
そうやって、何年も互いに笑いあって語ってきた。魔法を学びたい。魔法を使えるようになりたい。互いの夢は違うが、二人とも魔法が好きなのと負けず嫌いなのは似ている。
「なぁ、明日から私達は魔法学園に行って魔法の勉強をするんだよな。」
「えぇ。…長かったわね。」
「そうだな。…なぁ凛火。」
「何?レーテ?」
「強くなろうな。二人で。」
「そうね。」
そうして、二人は部屋に帰っていく。
「やっべ!遅刻する!」
飛び起きた時間、七時半。授業の開始は八時から。初日からピンチになるなんて私はついてないなと思いながら、自慢の白髪を後ろに両サイドから後ろに流し、お気に入りの魔法使い帽子を被る。卸したての新品の制服はボタン止めに時間を食われたが、まだ間に合う。壁に立てかけてある古びた箒に跨り、颯爽と窓から飛び出て玄関目掛けて一直線にかけていく。
「くっそぉ〜!なんで凛火のやつ起こしてくんなかったんだよ!」
同室の幼なじみに腹を立てながら、自分の上履きを手に取り、教室を確認次第走って向かう。現在の時刻も気にはなるが見ただけでロスタイムだ。
「間に合え〜!そして、初日遅刻は絶対避けろぉぉぉぉ!」
そうしてガラリと扉を開ける。心臓がバクバクなって息も切れ切れ、前を向く体力も今はほぼないが、向くしかない。
「間に合ったか!」
「…………」
教室が静まり返って全員が彼女に注目する。
「あれ?間に合わなかったのか?」
「レーテルさん、大丈夫ですよ。後二分ありますから。」
「マジか!やったァァァァァ!!」
隣から男の声が聞こえた。ただそれよりも間に合ったことが嬉しすぎて力が抜ける。そして息を整えつつ空いている席を見つけ、そこに座る。
「はい、ではみんな揃いましたね。」
さっき話してきた男が喋る。頭が冷静になってきた今になって気づいたが、あれは担任だ。そして初対面のクラスメイトの前で雄叫びを上げてガッツポーズをとったことを理解し、恥ずかしくなって顔を下に向ける。
「みなさんおはようございます。」
そんな私を無視して担任の男は話を進める。
「えー、私は今日からこのクラスの担任のサリストン・カーターです。名前、長いのでサリーでいいですよ。好きな事は植物の育成です。…はい、では私のことは後々知っていただくとして。これからの授業の説明をします。」
そこからは淡々とした説明だった。魔法の属性がどうだの、この国での魔法の立ち位置がどうだの。そんなことばっかりな一時間だったので、寝そうになった。
「はい、では十分間の休憩をとります。まぁ、この間に隣の子とお話して親睦を深めるといいですよ?もちろん、お手洗いに行きたい方は行かれても構いません。」
そうして、サリー先生が教室から文字通り姿を消すと謎の静寂が流れた。登校初日でカマしにカマした私は羞恥心で正直周りに話しかけずらい。どうしようかと悩んでいると、隣の内気そうな女の子が話しかけてきた。
「あの、すみません、あなたのお名前聞かせてくれませんか?」
「うん、私か?私はレーテルだ。お前は?」
「ロザリアって言います。」
「そっかじゃあローザだな。よろしく!」
「あ、はい!よろしくお願いします、レーテルさん。」
良い子そうで一安心した。これの子が礼儀正しい子じゃなかったら今頃ガッツ女呼ばわりされて私の三年間終わったところだったよ。
「なぁガッツ女!」
「あぁ!?」
と思った矢先後ろのやつにそう呼ばれた。
「おいおい、そう睨むなって。俺はただ仲良くなりたいだけなんだ。」
「だったらその呼び方を止めてくれ。」
「はいはい。で、なんだ?」
「なんだって、名前だよ、名前聞きたいんだ。」
「レーテルだ。」
「そっか!俺はアンドリューって言うんだ!よろしくな。」
「アンドリューか、…長ぇな、どう短くしてやろうか。」
私が、名前を略すのは基本呼ぶ時に長いとめんどくさいからっていう理由と略した方が何となくだが親近感が湧くからだ。だから友達になろう記念でそいつの略を決める。
「…うっし、決めたぞ。お前リューな」
「へぇ、皆の略した名前考えるんだね、君。」
「私の癖だと思ってくれ。」
「それにしてもそんな呼ばれ方されたのは初めてだな。」
「だろ?これで呼ぶと誰が呼んだか分かりやすくなるのも便利なんだよな。」
「確かに…ってそろそろ十分だ。先生が来るよ。」
そう言ってリューは前に乗り出した体を後ろの椅子にきちんと座り、前を向く。座り方が綺麗だったので、意外と育ちが良さそうだなと感じた。
「はい、では、みなさん?次は簡単な自己紹介をしましょうか。もう、近辺の方々とはやったと思いますが、まだ知らない人の方が多いでしょうから。」
正直、個人にやるより早々にクラスの前で自己紹介していた方が二度手間にならないんじゃないかと思ってしまったが、まぁ言われたことはきちんとやろう。ということで本日二度目の自己紹介。さっきの件のせいで私の第一印象は絶対に変なやつだ。あまり下手なことは言わずにさっさと済ませよう。
「では次。」
「はい、……レーテルだ。とりあえず一年間、よろしくな。」
「はい。ありがとうございます。では次の方。」
そうして自己紹介が進んでいく。
「俺は、アンドリュー・クラエスト。みんなよろしく!」
自己紹介のこの時間で大体のやつの印象が決まる。リューはさっきやったからかもしれないが、私の中では気さくな良い奴という印象が感じられる。
「カリーナ・ラフテルよ。よろしく。」
あいつは絶対気が強いお嬢様気質だ。間違いない。きっと直ぐに取り巻きができて侍らせて歩くのが目に見える。
「ロザリア・アルバです、よろしくお願いします。」
少し気の弱そうなローザはきっと苦労するだろうなと思う。多分カリーナってやつに目をつけられて最初に絡まれるだろう。頑張れ。
そして各々の自己紹介が終わった。
「はい、それじゃあ次は魔法適性を調べますね。やり方は簡単です。この水晶に軽く魔力を流してください。そしたらこの水晶が光るので、その色で判断できます。じゃあさっきとは逆の順番で。」
魔法の適正は大まかな五属性がある。火、水、土、風、雷。これを知ることは魔法を使う上で大事なことなので最初の授業でやるのだろう。そして、各生徒が水晶に触れていく。ローザは風、リューは土の適正反応を示していた。
「では次はレーテルさん。」
「はい。」
魔力を込める。実際私は自分の適正が何かは分かっているから別にやる必要はないのだが、クラスメイトは私含めて皆が何の適性があるのかが気になる。だから私は見せるためにこの水晶に魔力を通す
「ほぉ、光ですか。」
「まぁな。つっても器用貧乏なだけだろこの属性。」
「確かにそうです。しかし使い方次第ですよ。魔法は。」
「…」
「えぇ、ですからあなたにピッタリな魔法だなと思いました。」
「そうかい。」
サリー先生の言ってることは間違いない。魔法は使い方次第ではどうとでもなるのだ。ただ、この光魔法の特性としては全属性が淀みなく使えるというものだ。だが人間、全属性が使えるというのは正直誰でも出来る。鍛錬をして使えるとかではなく使うこと自体は当たり前なのだ。ただ規模の大小があるため、普通はひとつの魔法に特化するただそれだけの話だ。
「はい。ではみなさん終わりましたね?それでは次の授業は早速実技をしてもらいます。なので、中庭の演習場に集合してください。あ、お昼休憩なので一時間後ですね。」
食堂に行こうとする人、その場で弁当を食べる人。様々な人間がいるが私は。
「お、食堂に行くのか?じゃあ俺も行くぜ。」
「いいぜ。それじゃあローザ、お前も来るか?」
「いいんですか?なら私も…。」
「待ちなさい!」
ローザが立とうとした時に、横から高圧的な声が聞こえる。間違いなくアイツだ。
「ロザリアさん?あなた、私とお友達になってくれないかしら?」
さぁどう出るローザ。




