第1話
ある日の朝。目覚めると、愛猫のタマが死んでいた。
夜、寝た時は俺のベッドの足元で、丸まってすやすやと寝ていたのに。いつも通りで、体調が悪いとか何の異変もなく、本当にいつも通りだった。
それが、目を覚ますと、タマは丸まったまま冷たくなっていた。
そんな俺を襲ったのは、悲しみよりも喪失感の方がが大きかった。
「タマ…」
死んでしまった、タマにどうしたら、何をどうやって、いや、何をしてあげたら?
喪失感で上手く頭が回らない。だが、このまま何をしないでもいられない。
何も特別なことをしなくても…。
「そうか。弔ってあげればいいんだ」
そんな独り言に似た呟きしか出なかった。
回らない頭で考える。
今の俺に頼れるのは、情けないことにスマートフォンだけだ。まずは、ペットが亡くなったらどうすべきかを検索して調べた。
導き出された答えは、ペット霊園で弔ってあげることで、その前にどうしたらいいかもペット霊園のホームページに書いてあった。
段ボール箱に入れてあげて、その中に花やペットの好きなフードを入れるのが一般的らしい。
タマは猫としては大きい部類に入るくらい体格は良かった。メジャーで測ってサイズをメモして、近くのホームセンターで段ボール箱を買えばいい。
火葬費用は三万円で、霊園の合同墓地で供養してくれるらしい。諸経費を考えて、コンビニのATMで下ろせばいいか。
「タマ…」
思うに、タマの18歳という年齢を考えると、寿命というか天寿を全うした大往生だというのが、俺には救われる。
病気で闘病で苦しんだわけでもなく、静かにすやすやと息を引き取ったと思うからだ。
やるべきことが決まれば行動するのみだ。
電話をしなければ、ペット霊園に。
スマホを手に取ると、近くの評判の良いペット霊園に電話をかけた。
「はい、メモリアルホール〇△です」
年配らしき女性で、優し気な雰囲気が声からも伝わり、不安だらけだったが、少し不安が和らいだ気がした。
「高木といいますが、愛猫が亡くなったので、お願いしたいのですが。すみません、初めてのことなのでどうしたらいいのか…」
「ご愁傷様です。弊社のホームページはご覧になさいました?」
「わかりやすくて助かりました。必要なものは大丈夫だと思います」
「それでしたら、本日午後でしたらいつでも大丈夫ですが、いかがですか?」
「午後少し遅くなるかもしれませんが…」
「ご心配なさらず。24時間365日対応しておりますので、また何か不明なことでもおありでしたら、ご連絡下さい」
「ありがとうございます。では、よろしくお願いします」
通話を終えると、どっと疲れが出て頭がくらくらした。
ベッドのタマに話し掛ける。まるで、本当にただ眠っているかのように見える。
「タマ、お前との出会いは、あれは出会うべくして出会った運命の出会いだと思うぞ。今も可愛いが、子猫のお前は、またそれはそれで可愛かったな」
そう。タマは俺の住むマンションの前に捨てられた捨て子猫だったのだ。




