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五話『ハイオーク』

「ん……。うぅぅぅぅん……」


 朝に目が覚めると、なんだか香ばしい匂いがしていた。


 隣の寝袋を見ると、ヒリアがいなかった。


 ということは、ヒリアが調理しているのが、この匂いの原因だろう。


 この香ばしい匂いは、お肉系の料理かな?


 気になり、テントの外へ出てみると、ヒリアはいつの間にか集めた焚火の前でフライパンを転がしていた。


「おはよう。ヒリア」


 あたしが声をかけると、ヒリアは笑った。


「おはよう。リベル。いまベーコン焼いていますから、待っていてください。朝食はベーコンサンドにしますから!」

「うん。わかった」


 実を言うとヒリアは食べるだけじゃなく料理も普通にできるタイプだ。


 よくよく考えてみたらヒリアがいなければ、あたしは野垂れ死にしていたのではないか。


 ただでさえマイペースで物臭なタイプなのだ。


 生活能力も言うほど高くないし、やはりヒリアを連れてきて正解だったかもしれない。


 それに昨日は何故か慰められてしまったし。


 やっぱりヒリアって純粋に考えて可愛いよな。


 幼馴染だから気が付かなかったけど、正直あたしには勿体ないくらいの良い子だと思う。


 それに比べてあたしは可愛げがないし、考え方も冷たい方だ。


 どうしてヒリアはあたしなんかを好きなんだろうか。


 それが不思議でならない。


 それより朝ごはんがもう出来上がっていた。


 ヒリアは皿に置いたベーコンサンドを渡してくれた。


「はい。リベル。焼きたてで熱いから気を付けて食べてくださいね?」

「うん……。ありがとう」


 ヒリアから皿を受け取る時、手が触れた。


 さっきまでよからぬことを考えていたせいで、なんだか意識してしまって恥ずかしい。


 なるべくポーカーフェイスで悟られないように、皿を受け取ると、その上に乗ったベーコンサンドを手に取り、口に運んだ。


「美味しい……」

「それは良かったです。それじゃわたしも食べるとしましょうか!」


 当然のことだが、ヒリアの皿には十個もベーコンサンドが乗っていた。


 こんなに食べているのに、華奢で細身なのはどういう体の仕組みをしているのだろうか。


 あたしはどちらかというと小柄だが、肉付きがいい方なので、ヒリアのように華奢で可憐な女の子らしい体系はどうにも羨ましく思ってしまう。


 もう一口ベーコンサンドを食べると、口内にふわふわのパンにカリカリに焼けたベーコンが食欲を満たしてくれる。


 しかし、収納袋にどれだけ食料を入れてきたのだろうか?


 なんだか院長先生に申し訳なく思ってしまう。


 色々考えを巡らせながらゆっくりとベーコンサンドを完食すると、ヒリアも十個もあったベーコンサンドを全て平らげていた。


「はぁ。美味しかったです!」


 腹が満たされたのか、なんだかとても幸せそうだ。


 当然、あたしも腹は膨れたので、満足だ。


 あたしは皿をヒリアに返した。


「ヒリア。ごちそうさま。とても美味しかったよ」

「はい。お粗末様でした!」


 あたしは軽く食事の後片付けを手伝い、テントやら皿やらを全部ヒリアが収納袋に直し、焚火の火を初級の水魔法を使い消した。


「よし。出発しよっか」

「賛成です。お腹も満たされましたし、今なら何キロだって歩けますよ!」

「ふふ。それは頼もしいね」


 あたしたちは荷物を持ち、野営した場所から離れた。


 そのまま森へと入り、森の木々を眺めながら、昔の思い出を思い出した。


「そういえば。昔、ヒリアってば、あたしと喧嘩して森で迷子になっていたよね?」

「ええ。今でも鮮明に覚えていますよ。迷子になったわたしは魔獣に襲われて、もうダメかもって思っていたら、リベルが助けてくれたんですよね!」

「そんなこともあったね」

「その時からですよ。わたしがリベルに恋したのは……」

「そ、それはどうも……」


 そんなさらっと恋したとか言える大胆さが羨ましい。


 人見知りでコミュニケーションが苦手なあたしにはとても言えない言葉だ。


 なんだかドキドキしながら、森を進んでいると、急に殺気のような物を感じた。


「ヒリア。来たよ。魔獣だ!」

「はい。わかりました! 臨戦態勢に入りますね!」


 ヒリアは杖から剣を抜いた。


 彼女の使う杖剣は、彼女自身が錬金術で作り出した一級品だ。


 そこらの魔獣に後れを取るやわな代物じゃない。


 あたしも念のために後ろからバックアップするためにユニークスキルで弓を作り出した。


 基本的に狩りの時もヒリアが前衛に行くようにしている。


 それは彼女がもっと強くなりたいからと自分で言い出したことだ。


 しかし、それは時と場合による。


 大物の場合はあたしが前に出ることも普通にある。


 さて鬼が出るか蛇が出るか。


 周囲に最新の注意を配ると、出てきたのは二匹のオークと一匹のハイオークだった。


 オークはともかく、ハイオークはいまのヒリアには荷が重いだろう。


「ぶひひひひひひひひひひぃぃぃぃぃぃぃ!」


 気持ち悪いオークの声が聞こえる。


 後ろにいるハイオークはこちらを捕食するような瞳を向けていた。


 危機感を抱いたあたしはすぐに弓に最大火力の魔力を矢に込めた。

「ハイオークはあたしがやる。あとの雑魚は任せたよ」

「了解です!」


 ヒリアがオークに向かって駆け出すと同時に、あたしは風の魔力を込めた矢を一気に穿った。


 ズパァァァァァァァァァァンと心地良い音が響き渡り、ハイオークは一撃で落とした。


 残るオークとヒリアの戦いが始まる。


「はぁぁぁぁぁぁぁ!」


 魔力を武器と体に纏わせたヒリアの動きは正直中級冒険者と同格の強さを有している。


 あっという間に一匹目のオークを屠り、二匹目の軽く斬り裂いた。


 オークたちの死体は黒い靄となって消えて、魔石を落とした。


 あたしとヒリアはそれをゆっくりと回収した。


「やりましたね!」


 そう言って拳を突き出してきたので、こちらもコツンと軽くぶつけた。


「うん。大勝利だね!」


 こうして無事に旅立って初の魔獣戦も無事に終えることができた。


 次はいよいよ隣街【ロイデル】で宿を取って、冒険者登録だ。


 気を引き締めて行こう。

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