異なる攻め手
前回と同じ轍は踏まない。
単純に剣技だけなら、少女の方が上だ。
なら、同じ、剣という土俵に立つ必要はない。
「『アイシクル・ウインド』!」
雹風が少女に襲いかかる――
「――『旋風』」
少女は剣を円状に回転させることで風の障壁を生み出すことで、
一瞬、雹風を食い止め、その隙に魔法の有効圏外へと離脱する。
そして、私はその回避先へと――
「『瞬槍』――」
「!」
「――『連撃』!」
私は剣の持ち手部分を氷魔法で伸ばした、即席の槍を突き立てた
「――っ」
少女が奥歯を噛みしめるのが見えた。
私はそのまま、突き続ける。
”剣術三倍段”――
槍などの長い得物を剣で相手するには三倍の技量が要るという意味だ。
現にセーラー服の少女は防戦一方――
当たり前の話だ。
通常の剣の届く範囲に私の身体はない。
攻め手に転じるには無理のある距離だ。
対して、私は剣を槍にする為の魔法の調整と、
持ち手が氷であることの滑りに気をつける必要はあるものの、
前述の通り、相手の反撃の対処には一定の余裕がある。
そもそも、『剣聖』である父からは剣以外にも槍や他の武器の扱い方も教わっている。
流石に私の槍の技量が彼女の剣の技量の三分の一以下のはずがない。
だから、このまま連撃を緩ませず、攻め続ければ、少女はいずれ防げなくなる――
――――――はず、だった。




