活気なき酒場街
次の日の夕方、私達は街に着いた。
『リンドロンド』……近くに鉱山がある事から、鉱夫が多く、
それに追随する形で製鉄産業や鍛冶屋も多い、
そして、そういった男達が多いことで夜は酒場が盛んな街――と聞いていた。
しかし――
「どこもかしこも閉まってますね、酒場はむしろ今頃から空くはずですのに」
「休業日を合わせてるんでしょうか?」
「商売の観点から見れば、余りない話ですが……あ、あそこ開いてますわ」
シンシアさんが指差した店は一階が酒場、二階が宿屋という一体型の店舗だった。
加えて、馬車をおいておけるスペースもある。
「じゃあ、あそこにしましょうか」
……
私達はチェックインを済ませると、食事をとるために一階の酒場に降りた。
すると、一階の酒場は窓も扉も締め切り、私達の他に何組かの客だけ、座っていた。
「あれ?もうおしまいですか?」
私がそう聞くと、店主が苦笑いしながら答えた。
「いえ、宿のお客さんだけ相手してるんです」
「あ、そういうお店なんですか?」
「いえいえ……お客さん達、リンドロンドは今日着いたんですね?
じゃあ、ご存知ないかも知れませんね」
「何をです?」
「夜、灯りを外に漏らすと、”狼”が襲ってくるんです」




