眠れぬ夜
その日の夜――
私は、夜空の月を眺めていた。
今日、戦った少女――
総合力では、こちらに分があったと思う。
だと言うのに、あと一歩で倒されるところまで追い詰められた。
それ自体は恥じるべきことだ。
だけど、もしかすれば、彼女が私が強くなるきっかけに、なるのかも知れない。
もし、次、彼女に会うことがあれば、その時は――
「クリスさん、眠らないんですか?」
「セレナ」
「明日も朝早いんですから、眠らないと」
「うん、ちょっと寝付けなくてね。でも、私は少し眠らないくらいじゃあ、なんともないから」
「駄目ですよ!仮に体力に問題がなくても、お肌が荒れるんですよ!」
「……」
セレナの言葉が意外で、私の目は点になった。
「……ふふ、ありがとう。そんな心配されたことなかったから」
「どうしてですか?」
「うーん……思えば、あんまりそういうことに気をつかったことはなかったなぁ」
物心ついた時から、修練漬けが当たり前だった。
姉達はそれでも、おしゃれや美容に気を使っていたけど、
他のきょうだい達に劣っていた私はそんな事に気をさく余裕はなかった。
「どうしてですか?クリスさんは綺麗なのに勿体無い」
「……私、綺麗なのかな?」




