令嬢の覚悟
「……駄目でしょうか?」
「駄目というか……シンシアさん、エルシャーレ家はどうするんですか?」
シンシアさんはエルシャーレ家の一人娘だ。
お母さんは既に亡くなっており、
お父さんも直前に亡くなっている以上、シンシアさんが管理しなくてはならないはずだ。
「……もはや、エルシャーレ家に以前のような力はありません。
出来ることと言えば、遺産の運用で維持費を稼ぐだけ」
「それでも、シンシアさんの遺産でしょう?」
「代理人としてアイナに任せました。仮にそれで維持出来なくなったとしても、構いません」
「え……ど、どうしてですか!?」
「お父様もいなくなり、もはや、あの場所は辛い記憶しかありません。
どこか遠くに行ってしまいたいのです」
「だから、私に同行を……?」
「はい。クリシュナさんの目的は聞いております。
でしたら、セレーナさんと同様、アタシも安住の地を探したいのです」
「……」
「もちろん、タダでとは言いませんわ。この馬車は遺産の一部で買いました。
その他、旅に使えそうなものは買いそろえてきました!だから……」
「あはは……そんな覚悟を見せられたら断る訳にはいきませんね」
「じゃあ!」
「はい、改めてよろしくお願いします。シンシアさん」
「よろしくお願いしますわ!」




