未熟
男は咄嗟に銃で防御する。
――問題ない。
銃を一刀両断し、男の肩口辺りで、剣を止めれば、それで終わりだ。
そう確信し、振り下ろした剣は――銃を両断することが出来なかった。
「!?」
「っおぉぉおおっ!」
瞬間、男が左手でなにかをしたかと思うと中折れ帽から針状の暗器が射出された。
「しまっ……」
反応が遅れて避けられない、そう思ったと同時に針は弾かれた。
母のペンダントの加護だった。
弾かれた針の行方を目で追いながら、私は後退し剣を構え直す。
針は私と男のちょうど間に落ちた。
そこから一秒にも満たない、私と男のにらみ合い――
――それを破ったのは男の声だった。
「参った。これで手詰まりだ」
「……え?」
内心困惑する私を知ってか知らずか、男は続けて口を開く。
「剣を受け止めたせいで、オリハルコン化合物で出来た銃はオシャカ、右腕は骨折。そして、頼みの綱の絡め手も通用しないとなっちゃあ、もうどうしようもない」
「……」
通用……しなかった訳じゃない。
もし、あの暗器が私にダメージを与えられるシロモノだったなら、結果はどうなっていたかわからない。
これが、私の未熟さ。
きょうだい達の中で最弱である私の実力……
だけど、今は――
「なら、話を聞いてくれますね」