第17話:自粛
男子嫌いで鈍感な女子高生、蓮花はいつも遠くからさり気なく助けてくれる中学の同級生田中とは安心して会話ができるようになった。高校に進学し、田中とは真逆のタイプの瀬野と出会い・・・続きは本編でどうぞ・・・。
美里:蓮花、今日の放課後本当に大丈夫?ごめん!委員私なのに!!頼んじゃって!
蓮花:ハハハ。いいよ別に。
美里:今度埋め合わせするね。
放課後―
瀬野:おい木内、帰れるかぁ?
蓮花:帰れるー、じゃぁ行こうかぁ。
瀬野:おう!
2人は教室を後にした。
2組の前を通り過ぎようとした時、蓮花は2組の女子と目が合った。すぐ目を逸らされたが、球技大会の時に顔を見ていたので、瀬野に以前告白をした子だとすぐに解った。
蓮花:・・・・瀬野さぁ・・。
瀬野:あ?
蓮花:あんたモテるのに何で彼女いないの?
瀬野:・・・モテるのと彼女いるのってイコールなのか?
蓮花:・・・・違うの?
瀬野:違うだろ。選択肢が増えるとかって解釈か?・・・俺の選択肢は1つしかねぇよ。
蓮花:あぁ、そうかぁ。そうだよねぇ。色んな人から好きになられても自分が好きじゃなくちゃダメだよねぇ・・・。
瀬野:・・・・。
そんな話しをしながら、靴箱を出てグラウンドを横切りながらショップへ向かった。グラウンドではサッカー部がまた練習をしている。
佐藤(田中のクラスメイト):あれ?あれまたイケメン君と蓮花ちゃんだ。
田中:・・・・。
佐藤:・・・・田中!練習の続きすんぞ!!
田中:あぁ・・・。
田中は2人を見て、今までに感じた事が無いような焦燥感を感じていた。
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蓮花:やっぱさ、瀬野とこうして話すんの慣れてきた。
瀬野:お!いい傾向だな!
蓮花:うん。最初は本当に苦手だったけどね。避けて通ってきた道だったから・・・。
瀬野:そんな苦手だったのか・・・?
蓮花:だってさ、下手したら自分だけならともかく瀬野も傷つけて共倒れだよ?そんな危険な賭けできないでしょ。自分の問題で他人を利用できないと思ったし・・・だから何回も聞き飽きてるだろうけど、ありがとね。
瀬野:・・・よし!!じゃぁ本当に慣れたか手でも繋いでみるか!!
蓮花:それは無理(即答)。
瀬野:そ・・冗談だよ。
蓮花:アハハ。
そんな話をしながら2人はコスプレショップについた。
店員:あらぁ、この前のお2人さん!今日は赤毛の元気なおじょうちゃんはいないのねぇ。
瀬野:(美里の事か・・・)あぁ、バイトらしいです。
店員:ところで、お2人さんて、美男美女のカップルさんねぇ。
蓮花:カップルじゃないです!
瀬野:・・・・。
店員:あらそうなのぉ?お似合いなのにぃ。
瀬野:あ、衣装!・・衣装!借りていきます!
瀬野は少し照れながら店員に言った。
店員:はいはぁい。
文化祭の衣装を借り、2人はショップを後にした。蓮花が最初にショップを出た。すると後から慌てて瀬野が・・・
瀬野:おい、俺持つよ。
蓮花:え?大丈夫だよ、結構軽いし!
蓮花は後を振り返りながら瀬野に答えた時、足をグラつかせて転びそうになった。
蓮花:え?
瀬野:おい!
同時に瀬野が蓮花の腕を引っ張り自分の方へ抱き寄せた。
瀬野:・・・・。
蓮花:・・・・。
瀬野は、蓮花を抱き寄せたまま・・・
瀬野:・・・ふぅっ。
蓮花はパッと瀬野から離れた。
蓮花:ご・・・ごめん!
瀬野:あ、いや・・・ほらな!!だから俺が持つって言ったろ!かせっ。
蓮花:はい・・・。
蓮花は衣装を瀬野へ渡した。
2人は少し緊張したまま帰りの道を歩いた。
瀬野:なぁ、木内。
蓮花:?
蓮花は瀬野の方を向いた。
瀬野:いや・・・さっきさ、俺が傷ついたら共倒れって言ってたけど・・・俺、何度も聞き飽きてるかもしれねぇけど・・・俺、傷つかねぇから。だから俺に何か言ってお前も傷つく必要ねぇよ。
蓮花:うん。聞き飽きた。
蓮花はクスリと笑みを浮かべて言った。
瀬野:・・・家まで送ろうか?
蓮花:ううん、大丈夫こっから逆方向だよね。また明日ね!
瀬野:・・・ん、また明日。
瀬野は蓮花の後姿を見送り、彼女を抱き寄せた時の自分の両腕を眺めた。
瀬野:俺、自粛できる自身全然ねぇ・・・。
瀬野は独り言を言いながら歩き出した。