砂の海
新たな電撃攻撃(名称未設定)を獲得した健太郎は一番丈夫だろうギャガンを揺り起こし、彼の手を借りてグリゼルダとステフ達をトラックモードの車内に積み込んだ。
どうやらスタンガンの事を考えていた所為で、電圧は高くても流れた電力量自体は少なかったようで全員、命に別状は無かったようだ。
その事に健太郎がホッと胸をなでおろしていると、グリゼルダ達を運び終えたギャガンがドカッと運転席に座った。
「テメェ、あんな派手な技、使うなら事前に何か警告しろよッ!! おかげで毛がチリチリになっちまったじゃねぇかッ!!」
「ブルブル」
メンゴメンゴ、でもパンチパーマみたいでちょっと可愛くなったよ。
「ふぅ……チッ、相変わらず何言ってんのか分からねぇ奴だ…………帰るか」
「ブルルンッ!」
そうだねッ!!
健太郎は電流によりパーマの掛かった四人を連れて、王宮へ向かい走り始めた。
■◇■◇■◇■
王宮に帰ったギャガンを見てミラルダはポカンと口を開け一瞬固まった後、盛大に吹き出した。
「ブフッ!? ブハハハハッ! どっ、どうしたんだいソレッ!?」
「どうしたもこうしたも、全部、このゴーレムの所為だッ!!」
「ミシマの? 何をしたらそうなるんだい?」
「コホー……」
それはだねぇ……。
ギャガン達を巻き込んだので健太郎が口ごもっていると、グリゼルダが怒りの籠った口調で何が起きたか説明する。
「我々を巻き込んで広範囲に電撃を放ったッ!! それも何の予告も無しにだッ!!」
そう憤ったグリゼルダに目をやり、ミラルダはあれまぁと微笑みを浮かべつつ健太郎に視線を移す。
「ミシマ、そんな事したのかい?」
「コホー……」
面目ない。そう言って頭を掻いた健太郎に苦笑を返すと、ミラルダはギャガン達に順繰りに目を向けた。
「何はともあれ無事で良かったよ、それにさ、ギャガンはちょっとアレだけど……」
「アレって何だッ!?」
「とにかく、あんたやステフ達は可愛くなったよ」
「戦士に可愛さなど不要だッ!」
そう言って頬を膨らませプイッと顔をそむけたグリゼルダだったが、確かにパーマの掛かったグリゼルダは以前よりも柔らかく見えた。
■◇■◇■◇■
それから数日後、健太郎達はロガエストの中心、ガリア砂漠を望む港(船着き場なのだから港と呼んでいいだろう)から砂漠を望んでいた。
「はぁー、これが砂漠……ホントに一面砂しかないねぇ……でもキラキラして綺麗だねぇ……」
ミラルダは石組の船着き場に溜まっていた砂を手に取ると、その手触りを確かめている。
「サラサラだ……」
「コホー……」
大丈夫だろうか……関節部分に砂が入って作動不良とか起こさないよな……。
健太郎は今更だが余りに粒子が細かく滑らかな砂に不安を覚えていた。
「ラーグの奴らにゃあ珍しい景色だろうが、段々広がる砂漠はこの国じゃ怨嗟の対象だぜ」
健太郎達の様子を見たギャガンが忌々し気にそう呟く。
「コホーッ?」
そうなの? じゃあ水路とか作って緑化をすれば……。
「水路ねぇ……するにしても凄い労力とお金が掛かりそうだねぇ」
「へッ、どの道、砂竜に襲われる様な状況じゃあ工事なんて出来ねぇよ」
「確かにな。単細胞かと思ったら意外と知恵が回るじゃないか」
グリゼルダがニヤッと笑いながらギャガンを煽る。
「あぁ!? 誰が単細胞だッ!!」
「貴様に決まっているだろう? すぐに頭に血が上る子猫ちゃん」
「ググッ、テメェ、ぶっ殺してやるッ!!」
「二人ともお止めッ!! またお仕置きされたいのかいッ!?」
「ぐッ……」
「あれはもう勘弁してくれ……」
ギャガンは口をつぐみ、グリゼルダは顔を引きつらせていた。
「ふぅ、あんた等は何でそう仲が悪いんだい?」
「コホーッ」
二人とも皮肉屋だからね。似た者同士はいがみ合うもんだよ。
「そんなもんかねぇ……」
ため息を吐いたミラルダに赤毛の狼の頭を持つ獣人が声を掛けた。
「ミラルダ、砂上船の集合は今日中に出来るだろう。それでそろそろ荷を積み込みたいのだが……?」
「了解だよ。ミシマ、トラックになって貰っていいかい?」
「コホー」
分かった……暫くトラックかぁ……色々不便そうだなぁ。
ぼやきつつも健太郎は運ばれた荷物の傍に歩み寄り、カシャカシャとトラックへとその身を変える。
「……ふむ、初めて見たがこんなゴーレムもいるのだな」
「そいつは普通のゴーレムじゃない。我々、魔人族はゴーレムの研究に世界で一番精通している種族だ。だが、このような可変を実現した者は誰もいない」
「ブルブルッ!!」
そう、俺はゴーレムじゃ無くてロボットだよッ!!
健太郎の叫びにミラルダは肩を竦めると、グリゼルダに向き直った。
どうやらバイクと同じで流石にエンジン音的な音だけでは意思の疎通は難しいようだ。
「ブルブル……」
これは今後の課題だな。
そんな健太郎の呟きを無視してミラルダはグリゼルダ問い掛ける。
「ゴーレムじゃないって、それ、前も言ってたね? じゃあグリゼルダはミシマは一体何だと思うんだい?」
「……今、ミシマが変形したのは異界の乗り物なのだろう? という事はミシマ自身、その体自体も異界の物なのでは無いだろうか」
「んじゃ、こいつは別の世界から来たって言うのかよ?」
ギャガンの問い掛けにグリゼルダは頷きを返す。
「そうだ。でなければ全く魔力の流れを感じない事の説明がつかん。魔力では無い未知の技術や力、それを動力源にしているとしか考えられん」
「ブルブルブル……」
動力源か……ほんと何で動いてる設定なんだろ……モンスターを倒すと光の粒子は吸いこんでるけど、動いても視界のバーは減らないし、アレはエネルギー源って感じじゃ無いんだよな。
もしかして核とかで動いてるって設定じゃ無いよな……。
健太郎の脳裏に白い悪魔と呼ばれたロボットが緑のロボットを倒すシーンが浮かぶ。
倒されたロボットは動力源の核融合炉を爆発させてスペースコロニーに巨大な穴を開けていた。
「ブルブル……」
今の所、この体に傷を付けられる事は無かったけど……そろそろ、躱すという事も考えた方がいいかもしれない。
「ふむ、魔人族はやはり博識だな。だがまぁ、今はミシマ殿の正体はさておいて荷物の積み込みを始めて構わんか?」
「そうだね。よろしく頼むよ」
「うむ、ではミシマ殿、扉を開けてくれ」
「ブルブル」
了解。
健太郎がバックドアに意識を向けると、上部に跳ね上がる形でドアが開く。更にドアに上る為のスロープもドアの下部からスライドして降ろされる。
「ほう、これは便利だ。よし、荷物を積み込め」
「ハッ」
ファンゴの部下である炎狼族が指示を受けて水と食料、装備を積み込んでいく。
今回の作戦はギャガンの部下、二十名と炎狼族、三十名による速度を生かした奇襲作戦だ。
重い食料や鎧等を健太郎が運び、兵は軽装で小型の砂上船に乗り込む。
グリゼルダの話では砂竜は匂いにも鋭敏だが、主に目を使い狩りをするので襲撃は基本昼間に行われるそうだ。
朝、魔人族が襲撃に出た後、手薄になったアジトに奇襲を掛け掌握、その後、アジトで待ち受け戻って来た残りを叩く。
作戦は理解出来たが、生け捕りといっても攻撃したらお互い無傷という訳にはいかないだろう。
無論、なるべく誰も、それは敵も味方も死なない様、努力はするつもりだが……。
荷物を運びこまれながら、健太郎の思考は誰も死なない方法を模索し始めていた。
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