新しい機能
ミラルダに彼女の親だと思われる炎狼族との話し合いを打診したロガエスト王ランザ。
彼女は王宮に戻るとすぐに都に駐留していた炎狼族の若者を呼び寄せた。
「ご苦労様です。ファンゴ、今日来てもらったのは貴方に会って欲しい人がいたからなのです」
「会って欲しい人ですか?」
「ええ、ミラルダさん、彼はファンゴ。炎狼族の次期族長です」
「へぇ、次の族長さん……」
呼び出された赤毛の狼ファンゴは、通された王宮の一室でミラルダを見て驚き目を丸くしていた。
「君はもしかして……」
「あたしの事、知ってんのかい?」
「ああ……君は恐らく俺の従妹で間違いない。君の母親……俺からいうと義理の伯母にあたる人に瓜二つだ」
「そうかい……ねぇ、あたしの両親は……」
ミラルダの問いにファンゴは目を伏せた。
「二人は君が生まれる前に里を出たんだ……この国では余り人間は歓迎されない、炎狼族の集落にもそんな古い考え方の人もいてね……ルエラさんは何か言われても気にしないと言って笑ってたが、伯父のガッシュはその事を気にして、人間の国に行くと……」
「その後の足取りとかは……?」
ファンゴは静かに首を振った。
「元気にしていると便りが一、二度来た程度だ……北に行くと書いてあったそうだから多分、ラーグに向かったんだろうと父は言っていた」
「……二人は……あたしの両親はどんな人だった?」
「……伯父のガッシュは真面目で優しい人だったよ、モンスターに襲われていたルエラさんを助けたのが、二人のなれそめだって聞いてる……ルエラさんは……明るくて良く笑う人だった……悪ガキだった俺によく揚げ菓子を作ってくれた……二人ともとても仲が良かったよ」
「そうかい……」
ミラルダは胸元で手を握り、喜びと悲しみがない交ぜになった笑顔を浮かべた。
「教えて欲しい、二人は今?」
ファンゴの問い掛けに今度はミラルダが首を振る。
「……分からない。あたしは教会の軒先に籠に入れられて捨てられてたらしいから」
「何か手掛かりは残されていなかったのか?」
「ミラルダって名前とよろしくお願いしますって書かれたメモ、それと銀貨が少し……それだけさ」
「そうか…………君が捨てられた経緯は分からない。だが、伯父もルエラさんも俺の知る限り子供を捨てる様な人じゃない、きっとそうせざるを得ない事情があったに違いない」
ファンゴはミラルダを琥珀色の瞳を真っすぐに向けて断言した。
そんなファンゴの様子にミラルダは微笑みを返す。
「……あんたがそこまで言うんだから、あたしの親はいい人だったみたいだね」
「……ああ、いい人達だった。この牙と爪に賭けて誓おう」
ファンゴはそう言うと伸ばした右手を胸に当て、ニッと笑い牙を見せた。
■◇■◇■◇■
ミラルダとファンゴがそんな話をしていた頃、健太郎は都から少し離れた岩場でギャガンとグリゼルダ、それに犬人族のステフとミハイと共に新しい体の機能を模索していた。
それというのもグリア砂漠のアジトにいる魔人達をランザは生け捕りにして欲しいと言って来たからだ。
なんでも今回の被害に対する損害賠償、さらには領土侵犯についての取引材料として使いたいらしい。
人を殺さない事は健太郎としても大歓迎だったのだが、魔人は魔法のスペシャリストである為、例外無く魔法で空が飛べるらしいし健太郎の現在使える技では単体相手か、強力過ぎるかで効率良く無力化するというのは難しいと思えたからだ。
軍の精鋭をランザは用意してくれるようだが、健太郎はなるべく死傷者を出さない為の切り札的な何かが欲しかった。
大声は離れた場所だと怯ませるぐらいしか出来ないしなぁ……。
「そうだ。鉄の馬車になれんなら、デカくなる事も出来んじゃねぇか?」
アイデア出し要員として連れて来たギャガンが腕を大きく広げながらそう提案する。
「コホー?」
デカく? ……大きくかぁ……。
「止めろミシマッ!!」
巨大化を思い浮かべた健太郎をグリゼルダが慌てて止める。
「何でだよ? デカくなりゃ魔人共を一方的にやれんじゃねぇか?」
「ランザは生け捕りを望んでいる。攻撃の効かない巨大なゴーレムもどきが暴れれば、死人が出る事は必至だろうがッ!?」
「チッ、面白れぇと思ったんだが……」
「面白いか面白くないかでアイデアを出すなッ!!」
「じゃあ、テメェは何かあんのかよ?」
「そうだな……ミシマ、あの赤い光を弱めた物は出せるか? あの光なら上空を舞う魔人も撃ち落とせると思うのだが……」
「コホー?」
どうだろ? アレってチャージしないと撃てないし、弱くとか調整は出来ない気がするんだよね……。
そう結論付け、健太郎は首を振った。
「そうか……確かにかすめただけで竜の翼を焼く様な技だしな」
「ん? テメェ、そんな技を持ってたのかッ!? 何で俺と戦った時は使わなかったんだよッ!?」
「コホーッ」
いや、だから殺すのが嫌だって言ったじゃん。
健太郎は首の横で掌を振り、その後、腕でバツ印を作った。
「チッ、そういやそんな事をミラルダが言ってたな……おい、犬共、お前らは何かねぇのか?」
「そうだなぁ……空を飛ぶ相手……鳥なんかを捕る時は俺達は網を使ったりするけど……」
ギャガンに問われミハイが小首をかしげながら答える。
「後はやっぱり弓だろう……矢じりを丸くすれば殺す事は避けれるんじゃないか?」
「コホー……………コホッ!? コホーッ!!!」
網と弓……そう言えば外国の特殊部隊が網を発射するランチャーみたいなの持ってたよな、それに飛び道具なら弾丸にコードが付いて電流を流す奴とかもあった筈だぞ……網、弾丸、電流……電○ネットワーク!? これじゃあ!! これで決まりじゃあ!!!
「「「「!?」」」」
健太郎はテンションが上がったが体が反応する事は無く、ただ握った拳が掲げられただけだった。
そんな健太郎の突然の行動に驚き、ギャガン達は彼の傍から慌てて離れた。
「…………なんだ、なんも起きねぇじゃねえか」
「急に動くなッ!! それでなくても貴様は突拍子もない事ばかり起こすのだからなッ!!」
「そうだそうだッ!! やる事がいきなり過ぎるんだッ!!」
「でも撫でられるのは嫌いじゃないぜッ!!」
「コホー……コホーッ!!」
クッ、駄目か、いいアイデアだと思ったんだが……いつもは勝手に動く癖に……気の利かない体だぜッ!!
そう言って首を振り下ろした健太郎の右腕が俄かに電光を帯びる。
「コホー?」
何だ、コレ?
電光はパリパリと右腕の装甲の上を尺取虫の様に動いていた。
「おい、何だその雷の様な物は……まさかまた何かおかしな事を……」
「……もっと離れた方がよくねぇか?」
「そっ、そうだな……」
「ミッ、ミハイ、俺を盾にするなッ!?」
「いいじゃないですか、一回庇ったんですから」
そんな事をギャガン達が話している間にも健太郎の腕に走る電光の数は増していき、やがて両腕、前腕部の装甲が展開、数本の金属の棒を伸ばした。
「コッ、コッ、コホーッ!?」
えっ、えっ、何コレッ!?
その健太郎の戸惑いの声と同時に両腕から放たれた電光は彼の周囲、半径約五十メートルに雷撃を放った。
「ギャアアアッ!?」
「アババババッ!?」
「キャイーンッ!?」
「ブブブブブッ!?」
高圧の電撃を食らったギャガン達はガクガクと奇妙なダンスを踊り、やがて電撃の放出が終わるとシュウウウと湯気を上げて全員がパタリと倒れた。
「コッ、コホーッ!?」
みっ、みんな大丈夫ッ!?
そう言って駆け寄った健太郎がギャガン達の顔を覗き込むと、彼らは全員、何故か満足そうな笑みを浮かべ気を失っていた。
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