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ファンタジーハンター  作者: Who
恐怖と救い
20/49

その6

「…そうか、十数人、と言ったところか」

「いやー、流石に全員は救えなかったっすね。すいませんっす」

「何を言う、あの状況の中でよくこれだけの人数を救ってくれた。私はお前たちを誇りに思うよ」

「いやー、そんな、照れるっすよ〜」


帰投後。俺たちは例に漏れず、ナツメのいる作戦室にやって来ていた。

他でもない、今回の報告をするためだ。

ナツメの手元には資料。俺たちが車内で眠りこけている間に、他の人が作成してくれたらしい。細かいところは俺たちが加筆したが、ほとんど出来上がっていたものに何点か加えただけだ。

結局、救出できたのは18人。そのいずれも、大なり小なり怪我を負っている状態で、だ。

それでも、ナツメは今回の結果に満足とは言わないまでも、納得をしてくれたらしい。


「疲れただろう? 今日はここまでにしてやるから休んでこい」

「んー」

「どうした?」

「いや、それなんすけどね。最後に俺たち寝てたじゃないっすか。それでなんか元気になってるっぽいんすよね…だからーー」

「誰が、肉体的な疲労だと言った?」

「へ?」

「裕二を見てみろ」


ぼんやりと思考をしていると突然、ナツメから話を振られる。それに呼応して、マークもこちらを覗き込んでくる。

突然の居心地の悪さにたじろいだ瞬間。


「うわ、裕二、顔色どうしたんだよ!?」


マークに指を刺される。それほどひどい顔色なのだろうか。が、それを言うならマークだって。


「言っとくがお前も大して変わらないからな?」

「げぇ、まじっすか!?」


ひどい顔色だ、と言おうとしたところでナツメにセリフを取られる。飛び出しかけた言葉は、あえなく喉の奥に引っ込んでいった。


「まじだ。あれほど人の悪意に晒されたんだ。精神的に疲れていてもおかしくない。だからこその休息だ」

「それなら、了解っすよ。行こうぜ裕二」

「ん? ああ……」


未だ頭はぼんやりするものの、マークに肩を組まれ、一緒に退室する。

そうして、今回の作戦は幕を閉じたのだった。



ーー



他に人がいなくなった作戦室。部屋のあちこちで動作しているシステムやハードの稼働する音以外、何も聞こえてこない部屋で。さっきまでいた二人を思いながら、ナツメは思索に耽っていた。


(クソ! ……やってくれるじゃないか!!)


続いてドン! と机を叩く音。他でもない、彼女自身が、目の前の物を殴り、出した音。

そうして彼女が悔しそうに睨む先には、モニターに映る一体の影の存在があった。



ーー



「なぁ裕二、せっかくだし風呂でもーー」

「いや、今日は…いい…」

「そうか、ってお前さっきよりやばい顔になってるぞ? 大丈夫か!?」


振り返ったマークからそんな言葉が飛んできた。それに対しては大丈夫、と返すものの、正直そのマークの声で吹き飛びそうだ。

頭が痛い、足がふらつく。まともに思考がまとまらない。


「悪いが俺は部屋に戻るよ」

「お、おう。気をつけてな」


そう言ってマークと別れてから、できるだけなんでもない様に歩く。…いや無理だ。視界がふらつく。足が地面についていない様な気さえする。

そんな状態で真っ直ぐ歩けるわけもない。すぐに隣までやって来たマークが肩を貸してくれてようやく。

俺の部屋の前までやってこれた。


「ほら、ついたぞ」


扉を開く。そこにはトカゲの姿が。


「おワ! びっくりシタ。ゾンビが襲って来たのかと思ッタ」

「はは、ハロウィンなら大人気っすね…。ってそれどころじゃないんすよ。裕二の奴、気分が悪いみたいで」

「おっと、そりゃ急がないト。奥に運んでクレ」


言って道が開けられる。そのまま裕二は部屋に入り込み、俺を寝台へと転がした。


「これでよし、っと」

「ふーム、体調は問題ない様に見えるガ…?」

「っす。どうも精神的に疲れたらしくて」

「マー坊は大丈夫なのカ? お前も似た感ジに見えるが」

「ああ、俺は大丈夫っすよ。これから風呂でも入ってスッキリして来ます。そうすりゃ、これぐらいすぐ回復しますから」


そう言って、立ち上がるマーク。そう言いつつも、彼自身限界なところもあるのだろう。それでもここまで運んでくれたことにお礼を、と意識を持ち上げたところで。


「……」

「ありゃ、寝ちまったカ」


限界だった意識はそのまま一度落ちた。



ーー



「…?」


目を覚ます。あたりを見ると暗闇。だが、おそらく俺の部屋なのだろう。どことなく安心感に似たものを感じる。

トカゲはもう寝たのだろうか。そう思って、あたりに意識を向ける。


「……が、もう、始まるんダナ」


一部が聞き取れない様な声がすぐ真横から聞こえてくる。トカゲだ。

それが何かを問いただす前に、トカゲは席を立ち、そして。

ドアの開いて閉まる音がした。そうして部屋はまた、静かな場所になった。

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