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汗臭い


「美奈子さん…オレ、勝ちました」


 目を開けたら、そこに孝太がいた。


 布団から出た彼は、美奈子に前に座っていたのだ。


 勝った?


 一瞬、何のことか分からなかった。


 ただ、その腫らした顔の孝太は、とても誇らしげで。


 それが、たとえケンカに勝ったという意味であっても、他の意味であっても、どうでもよかった。


「「そう…おめでとう」」


 勝った負けたより。


 孝太が、いまここにいてくれることの方が、本当は嬉しかった。


 その気持ちを、美奈子は隠さず言葉に乗せる。


 言葉だけでは、足りなかった。


 本当に、本当に嬉しくて。


 両手を、伸ばしていた。


「「おめでとう…おめでとう」」


 意味なんか分かってないのに、孝太の首にかじりついて、美奈子はただそれを繰り返す。


 彼は汗臭かったが、そんなことどうでもよかった。


 いや。


 臭かったからこそ、そこにちゃんと彼がいるのだと、これは現実なのだと、自分の身体に教えられたのだ。


「あの、み、美奈子さん…」


 戸惑った、うわずる声。


 はっとする。


 そうだ。


 突然抱きしめられたら、彼だって驚いて当然だ。


「「あ、ご、ごめんなさい」」


 美奈子が、慌てて離れようとしたら。


 身体が、逆に戻ってゆくではないか。


 え?


 磁石でもついているかのように、自分の身体が孝太に押し付けられたのだ。


 強い力で。


 え?


「み、美奈子さん…」


 孝太の腕によって、彼女は強く強く抱きしめられていた。


 ええっ?

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