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慧斗と栄斗  作者: 白 月虹


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1話 慧斗と栄斗

※男性同士の恋愛を含みます。

苦手な方はご注意下さい。

高校三年生。

お互い丁度彼女が出来たけど、慧斗の心は満たされていなかった。


(はぁ…。楽しくねーなぁ…。)


「ねぇ!ちょっと聞いてる?」


ぼーっと教室の窓の外を見ている慧斗に、彼女が不機嫌そうに言った。


「聞いてるよ。栄斗と花凜と…」


「杏ちゃん!

いい加減名前、覚えなよ!」


「だって違うクラスだし…。」


「俺の彼女なんだから、覚えろよなー。」


栄斗が慧斗の肩を組む。

顔を向けると、思いの他近くて、ドキリとした。


「四人で出かけるんだよな!」


楽しそうに栄斗は花凜と話している。


(こんな事がもう3ヶ月か…。)


そして、四人で出かける日。

駅で待合せをしている。


「ごめーん!また私がビリだ…。」


「なんでお前はいつも遅いんだよ。」


栄斗が杏のおでこを突く。


「だって、可愛くしたいじゃん…。」


「杏ちゃんは何着ても可愛いよ!」


「ありがと〜。花凜ちゃんも可愛いよ!」


「ありがと〜!」


「早く行かね?電車一本逃してるし。」


そんな女子の会話を横目に、慧斗が呆れたように言う。


「ごめん…。」


「慧斗!俺の彼女に冷たくね?」


「あ?……くっ。」


「…揃った事だし、行こ!」


見かねた花凜が慧斗の腕を掴んで、歩き出す。

電車の中は混んではいないが、座れず、四人は立っていた。


「私、このパンケーキ食べたいの!」

「おいしそ〜!」


杏と花凜はスマホを見ながら計画を練っているようだ。

栄斗は慧斗の雰囲気がいつもと違うのに気づいていた。


「…今日、乗り気じゃなかった?

慧斗、出かけるの好きじゃないもんな。」


「ん?…別に…。」


「俺は楽しいよ。彼女いるのも良いけど、四人で…慧斗と出かけるの。」


その言葉で慧斗の気持ちは少し軽くなった。


「うん。俺も、楽し――」


言い終わる前に、電車が大きく揺れる。


バン!


慧斗の顔の隣に、栄斗の腕が置かれた。


「っ!」

「悪い!」


慧斗の顔がほんのり赤くなる。


「なんか…男同士の壁ドンって、エッチだね。」


「バカか。」


面白がる花凜に、栄斗が笑いながら返した。

でも、慧斗の心臓は早いままだった。


そして、あれから一年。

二人は別々の大学に通っている。


慧斗と栄斗はお互い新しい友達も出来、ほとんど会う事もなかった。

そんな大学二年生になったある日、高校の友達数人と飲み会の約束をする。


(栄斗に会うの半年ぶりか…。

服…買うか…。いや、いつもので良いか。

なんでこんなに落ち着かないんだ!?)


慧斗が頭を抱えてモヤモヤしている横で、

大学の友達の慎が話しかけてくる。


「慧斗〜。レポート見せてってば〜。」


「おお。悪い聞いてなかった。」


「レポート!」


パサっと、机の上にレポートを出すと、真剣な顔で慧斗が言う。


「なぁ…高校の同級生と、半年ぶりに会うんだけど、何着ていけばいい?」


「え?女?」


「いや、ヤローだけ。」


「なんっでも良いと思う。」


慎は興味なさそうで、レポートを写す手は止まらない。


「レポート…もういいんだな?」


「っ!お前、背高いし、なんでも似合うと思うよ!この前着てた…黒とグレーの配色のシャツとか良いと思います!」


レポートをぎゅっと掴みながら、慎は早口だった。


「あー、あれか…。まぁいいか…。」


「なんで?好きなやつでもいんの?」


「はぁ!?バ、バカ!ヤローだけだって言ったし!」


「冗談なんですけど…。」


慎は少し眉をひそめた。


飲み会当日。

慧斗は落ち着かない様子で、待ち合わせ場所にいた。


すると向こうの方から友達数人がやって来る。


「慧斗久しぶり!」

「早くね!?」


その中に、栄斗と三人で良く遊んでいた、潤も居た。


「慧斗〜!」


抱き合う二人。

すると後ろから声が聞こえる。


「デカイ男が抱擁するなよ。邪魔くせーな。」


半年ぶりに聞く声は、同じなのに別人のように聞こえていた。


「よお!栄斗!」

「久しぶり!俺とは一年ぶりだよな!?

背伸びた?」

「そうか?ははは。」


そんな会話で振り向くと、確かに少し伸びていた。半年前の目線は頭のてっぺんがまだ見えてたのに、今は目線が合う…。


「慧斗!元気だった?全然連絡くれないな!」


「あ、そういうつもりじゃ――」


全部言う前に、潤と抱き合ってしまう。


「じゅーん!」

「えいとー!」


「そろそろ入ろうぜー。」


誰かそう言うと、店に入って行った。


意識しないよう務める慧斗。


(なんだこれ…。栄斗をカッコイイ。って思ってる。俺…俺は………。)


慧斗の意識はプツリと途絶えた。


「つっ……頭いた…。」


目を覚ますと、暗い知らない部屋。


(どこだここ?)


辺りを見回すと…隣に栄斗が寝ていた。


「っ!?」


「…あ、けぃと〜。おぃた〜?」


ろれつの回らない栄斗。


「ここどこ?」


「オレんち〜。オマエでかいかりゃ、運ぶのたいへんらった。」


「ごめん。」


どんどん頭は冴えていく慧斗。

この状況がまだ飲み込めていない。


「オマエ、ちょっと見ないあいらに、かっこよくなっらら!」


グイっと栄斗が顔を近づける。


「お、お前だって…。」


動揺する慧斗。


「かのじょ、いんの?」


栄斗が真顔になる。


「高3からいない。」


二人の顔が近づく。


「…一緒だ。」


栄斗の手が、慧斗の頬に触れる。


そして、唇が触れる。


「……バカ、悪ふざけ――」


栄斗は慧斗の肩を強く掴むと、自分の唇を重ねた。触れるだけのキスとは違う。

深く、水音だけが響いた。



つづく。

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