第7話:ちょっと部屋に来てくれるか
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第7話では、教授の不気味なほどの「優しさ」と、今後ミナと深く関わることになる外国人研究員パベズとの出会いが描かれます。
12月中旬のある夕方、教授が重い静寂を破って私を呼んだ。
「ちょっと私の部屋に来てくれるか? 話があるんだ」
教授室のドアが重々しく閉まった。
「ミナ、最近どうだ?」
「大丈夫です」
「表情が良くないな。辛いことがあったらいつでも言いなさい。私たちは家族じゃないか」
教授が私を見つめる眼差しは、限りなく慈愛に満ちていた。心から教え子を心配する立派な恩師の顔。だからこそ、この男が余計におぞましく恐ろしかった。
いっそ平面的で分かりやすい悪党なら対処しやすいのに、こんな風に憎たらしいほど優しい瞬間を演じられると、私の頭の中の論理が何度もこんがらがってしまう。
「パベズは知っているな? あの外国人研究員だ。ビザの更新書類は私が直接責任を持って処理してやるつもりだ」
「はい」
「彼の研究結果はなかなか良くてね。長く手元に置いておきたいんだ」
極めて平凡で温情的な言葉だ。しかし、なぜこのタイミングであえて私にそんな話をこぼすのか、その隠された意図が全く掴めなかった。
教授室を出ると、廊下で背の高い外国人と出くわした。濃い褐色の肌に黒い髪、分厚い眼鏡をかけた男が、たどたどしい韓国語で丁寧にお辞儀をした。
「こんにちは」
「はい。こんにちは」
名前はパベズ。パキスタンから来たポスドク(博士研究員)だ。
その時までは、彼は私の人生において、ただ通り過ぎていく無数の他人の一人に過ぎなかった。
第7話をお読みいただき、ありがとうございます!
突然ミナを呼び出し、外国人研究員パベズのビザの話をこぼす教授。彼の「慈愛に満ちた」言葉の裏には、一体どんな意図が隠されているのでしょうか。そしてミナの人生にパベズがどう関わっていくのか……。
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