第31話:砂上の楼閣 (The House of Cards)
いつもお読みいただきありがとうございます。
第31話、ついにユジンが敵の心臓部で「決定的な物証」を掴みます。手に汗握る潜入の瞬間です。
ユジンがその致命的なパンドラの箱を発見した場所は、皮肉なことに、研究室で最も危険な区域である教授の机の一番下の引き出しの裏側だった。
深夜、ユジンは誰もいなくなった空っぽの研究室で一人備品を整理していた時、偶然床に落ちていた古いリングノートを拾い上げた。
最初のページをめくるなり、ハッと息を呑むしかなかった。表紙にラベルすら貼られていないその秘密のノートには、華麗な成功グラフで包装された外部用の論文とは異なり、赤いペンで神経質に書き殴られた「失敗の素顔」がびっしりと詰まっていた。
[2004. 11. 15. マウス腫瘍モデル実験]
N=200、腫瘍縮小:18/200 (8.7%)
結論:生体内効果は微々たるもの。臨床への進入は絶対不可。
そしてその下には、世界を欺く悪魔のレシピが、赤い矢印と共に書き込まれていた。
→ 投資家への発表時:In vitro(細胞実験)データに偽装すること。
→ 「がん細胞死滅率87%」に修正。
→ 絶対に実験条件を明記しないこと。
8.7%を87%に。小数点を一つ消して、200億という蜃気楼を作り出したのだ。
ユジンは震える手で鞄からコンパクトデジタルカメラを取り出した。去年の冬に両親からプレゼントされた小さなカメラ。ユジンはフラッシュを切り、息の音すら殺したまま一枚、二枚とシャッターを切った。シャッターを押す指の関節が真っ白になっていた。
その時だった。廊下の突き当たりから、革靴の足音が不気味に響いた。
ユジンが慌ててノートを元の場所に足で押し込み、カメラを鞄の奥底に突っ込んだ瞬間、教授室のドアが勢いよく開いた。
「まだ帰らないで、ここで何をしているんだ」
彼の声は氷のように冷たかった。
ユジンは心臓が破裂しそうだったが、無理にA4用紙の箱を抱きかかえながら、馬鹿のように間の抜けた表情を作ってみせた。
「あっ……コピー用紙が切れてしまったので、箱を探していました。申し訳ありません」
彼の蛇のような視線が、ユジンのガタガタと震える肩と、机の下をゆっくりと這うように見渡した。教授が特に疑うこともなく無頓着に自分の机へと歩いて行く刹那、ユジンは鞄の中のカメラをきつく握りしめながら、安堵の涙を飲み込んだ。
翌日の明け方。私の携帯電話に、ユジンから送信された画質の粗い写真ファイルが立て続けに届いた。
[ユジン]先輩。見つけましたよ。教授の本当のデータ。
8.7%。そして87%。私は震える手で、キム・ジェヒョク捜査官の番号をダイヤルした。
「捜査官。証拠を……確保しました」
第31話をお読みいただきありがとうございます。
8.7%という失敗作を87%の奇跡の薬に仕立て上げる――あまりに大胆で悪質な捏造の実態が明らかになりました。教授が現れた瞬間の緊張感には、書いている私も息が止まりそうでした。
ついに「銃弾(証拠)」を手に入れたミナ。いよいよ反撃の時が迫ります!
物語がいよいよクライマックスへ向かいます。ぜひ応援のほど、よろしくお願いいたします!




