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〜十月〜 No.1募る思いの夢

 環の夢。


  9月、迫る初秋だが蒸し暑いある日。

 無言の二人は川辺の散歩道にある東屋ベンチで腰かけた。

 環はじっと碧の顔を見つめた。

(言うんだ。言うんだ・・・今日こそ)

 そう思えば思うほど彼女の顔は真っ赤になり頭が垂れ下がる。

「どうした?環」

 覗き込む碧の眼差しがあめりにも真っすぐで思わず環は顔を背けてしまう。

「ああ、ごめん!あのごめん!」

「変なヤツだな」

「うん、そうだよね。ごめんごめん」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 環はそう言ったきり口をつぐみ黙り込む。

 その緊張は碧まで伝わり、身構えてしまう。

「聞いて欲しいことがあるんだ」

「わかっているよ、何か言いたいことがあるって、だからここにいるんだろ」

「そ、そ、そ、ね」

「・・・・・・」

  川面を見つめる碧に、環はゆっくりと顔をあげ、「どうしたんだよ。一体」

「き・・・聞いてくれる」

「だから、聞くって」

「うん、ありがと」

「ああ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「あのさ」

「うん」

「私・・・アオちゃんのことが好き」

「・・・う・・・うん」

「ずっと前から・・・幼稚園の頃からずっと」 「うん」 碧は静かに頷く。

「だから・・・」

「うん」

  彼は表情を強張らせながら何度も頷き続ける。 「私と付き合ってください!」

  環は立ち上がるなり、凄い勢いで一礼をして碧の前に右手を差し出した。

「・・・・・・」

  彼女は深く閉じた目を薄っすらとあける。

 碧は驚きのあまり固まり震えている。

「あの・・・」

「俺でいいの?」

「もちろん!アオちゃんがいい」

「・・・うん」

 彼は震える手を伸ばし彼女の手をとった。

 緊張で互いの手の平はじっくりと汗をかいていた。

 9月晴れの陽気が2人を茹で蛸にした。


 それから二人は付き合う事となった。

恋人同士・・・その言葉は環にとって甘美な響きだった。

 しかしながら、碧は気恥ずかしさから素直になれなかった。

 ことあるごとに、スキンシップを試みる彼女に彼は素っ気ない態度を取り続ける。

 そして、今日も・・・。

 下校時。

「だ~れだっ」

 背後から目隠しする環に碧は溜息をついた。 「やめろよ」

「・・・つまんないの」

「だから、人のいる所でそんなことするなよ。恥ずかしい」

「・・・私といると恥ずかしいの?」

「そういう意味じゃないよ」

「じゃあ、いいじゃん」

 彼女は彼の右腕にしがみついた。

「・・・だから」

「アオちゃん」

「なんだよ」

「好き」

「・・・・・・」

「アオちゃんは?」

「・・・好きだよ。だけど・・・時と場合が・・・」

  環はすっと碧と手を繋ぐ。

「いいじゃん」

「なんだよ。それ」

「あのね」

「なんだよ」

「ずっといっしょだよ」

「・・・・・・」

「ね」

「・・・・・・ああ」


 ゆっくりとゆっくりと思いを深めよう。

  ふたりの時間はこれからもずっとあるのだから。


・・・・・・。

・・・・・・。

・・・・・・。




「ふふふ」

  環は幸せそうに微笑む。

 朝陽が窓に差し込み、彼女は静かに目を開いた。 「・・・・・・」

「ふっ・・・はぁ」

 自嘲の笑いとため息がほぼ同時にでる。

「夢か・・・そうよね」

 環は静かに呟き肩をおとす。

 憧れと思い。

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