No.5ビバっ!沖縄〜後編〜
ビバっ!
ジージー。
夜中、環は虫の音で目が覚めた。
月明かりと満天の星が煌めく。
ぼんやり眼で外へでて、なんとなくプールサイドを歩く。
「うわあ、綺麗」 思わず彼女は呟く。
それは蛍のような小さな光が、あたりを舞っていた。
楽しかった今日の熱気が身体に残っている。 「泳ごうかしら・・・いいよね」
環は服を脱ぐと水着姿になって、プールへ入った。
そこへじりじりと忍びにじり寄る影が二つ。
「はっ・・・発見でござるよ」
そのひとつは凪やのマスター合田ヒロシであった。
あのライブ以降すっかり、ちぇんじまいらいふにハマってしまった彼は、イタ系のヲタへと染まってしまったのだった。
それは言葉遣いまで変わってしまう豹変ぶりである。
「ま、まさかっ!」
と相棒のモブヲタが驚く。
「その、まさかでござるっ!メジャーでびゅーを控えた、正真正銘の真性アイドル、柳川が生んだスター、我らが育てあげた!ちぇんじまいらいふのリーダー兼、モエモエきゅんきゅんパラダイスの環たそですぞ」
「おおおおっ!噂を嗅ぎつけ沖縄くんだりまで来た甲斐がありましたぞ」
「それな、それなでござる~」
「歓喜昇天ですな」
「この高性能ナイトスコープで、環たそのナイスバディをご照覧~」
「拙者も負けじと、この超精密望遠カメラで激写熱写感謝でござる」
「しかし、この背徳感・・・拙者のジャスティスが・・・」
「氏よ。人は天使でも悪魔にならざるを得ない時があるでござる」
「それが今と!」
「然り!」
「今、環たそのご尊顔及び拝謁及び美しき女神の肉体を見ずにして三途の川は渡れないでござる」 「そうきますか」
「そうきますとも」
「あの五月蠅いジャーマネがいない今が好機」 「あやつには何度orzさせられたことか」
「倉野マネorzしろい」
環はひとしきり夢中でクロールで泳ぎ、ゆっくりと、プールからあがる。
「キタコレであります!」
「美肉体ぼでぃ激写、拙者、接写」
「待ちに待ったキボンヌ到来」
「夏到来、女神降臨」
「感謝、陳謝、激写」
「わっしょい!わっしょい!もえもえ祭り、おいしくなーれ」
「いざっ!」
「ん?」
振り返った環の姿は・・・。
青白く、肉が溶けかけていたゾンビィの姿だった。
「ぎぃぃぃぃぃぃやゃややややぁぁぁぁぁぁぁ!」
腰砕けとなって這って逃げまどうヲタ達。
「?」
音のするほうを振り向く環。
ゾンビィナイトは更けていく。
環はプールの水面に映る自分の姿を見た。
「いけない」
彼女は心で念じる、すると元通りの姿へと戻った。
環はプールサイドのデッキに腰掛け、しばらく満月を眺めていた。
やがて少し離れたところに人影が見えた。
彼女はすぐにそれが誰か分った。
「アオちゃん」
「おう」
碧も彼女が分かっていたかのように片手をあげた。
「寝れないのか」
「うん」
「そっか」
「うん」
それからふたりは、月あかりと星の光が輝く砂浜方を歩き並んで座った。
「アオちゃん」
「ん?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沈黙続いたが、
「私、これから友達じゃなくて・・・えっ」
碧は環の意を決した言葉に、そっと口づけをして返した。
朝日が島の朝を告げる。
コテージ横、花壇のひまわりが大輪の花を咲かせている。
環と碧は手を繋ぎ、ビーチの白い桟橋を歩いた。
桟橋の行き止まりには、鐘があった。
それは幸せの鐘。
「アオちゃん」
「ああ」
一緒に紐を引き、幸せの鐘を鳴らす。
青空に海に幸せの音が響き渡った。
9月編は完了でございます。




