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汚泥(10)

アケとウグイスの永遠の友情


そしてツキに掛けられた契約とは!?

「ウグイス・・ごめんね」

 アケは、肩を小さく萎め、正座をして謝る。

 ウグイスは、何を謝られているのか分からず眉を顰める。

 アケ達は、黒狼に変化したツキの背中に乗って屋敷に戻るために森の中を進んでいた。ウグイスは、王の背中に乗るなんて畏れ多いと辞退しようとしたが「怪我人は甘えろ」と口で摘まれて無理やり背中に乗せられた。確かにアズキの癒しの炎で骨自体はくっ付いたし、動きも支障はないが痛みの残渣は残っていた。

 しかし、どうにもお尻の置き場に困ってモゾモゾしていた時にアケが謝ってきたのだ。

「なんで謝るの?さっきの件はお互いもう一杯話したじゃん」

 話したと言っても一方的にウグイスが訴えただけだけど、と胸中で付け足す。

「だって私、ウグイスに酷いこと一杯言った・・」

「酷いこと言ったのは私。アケの気持ちも考えずに思いつくままに振り回したんだから」

 今、思い出してもあの時の自分を殴って水の双剣で切り刻んでやりたい。

 青猿は、ツキの首元に寝そべって何かを話してるが聞こえない。

 アズキは、アケの膝の上で安心したように小さく鼾をかいている。

「私ね・・・嬉しかったんだ」

「嬉しかった?」

 ウグイスは、首を傾げる。

 今回の件にどこに嬉しい要素があったのだ?

「ウグイスや青猿様とね・・」

「お母さんだ!」

 青猿の叱責が飛んでくる。

 アケとウグイスは、思わず肩を竦める。

「ウグイスとお母さんと女だけでお話しするなんて初めてだったから・・・凄く凄く楽しかったの。でも、あの話しに頭が混乱しちゃって・・それに・・」

 アケは、再び泣きそうに唇を強く紡ぐ。

 ウグイスは、小さく笑みを浮かべてアケの頭に手を置いて撫でる。

「大丈夫、大丈夫」

 ウグイスは、優しくアケに言う。

 唇から力が抜け、アケも笑みを浮かべる。

「ウグイス・・」

「なあに?」

 ウグイスが聞き返すとアケは、少し躊躇いがちに、恥ずかしそうに軽く握った拳を口に当てて、上目遣いでウグイスを見る。

「ずっと私と一緒にいてくれる?」

 ウグイスは、黄緑色の瞳を大きく見開く。

「私の友達でいてくれる?」

 ウグイスは、微笑を浮かべる。

 そして折れていた右腕でどんっと胸を叩く。

「当然、アケが嫌がっても一緒にいるわ。だって・・」

 黄緑色の羽に包まれた手がアケの手を握る。

「私、アケのこと大好きだから」

 アケは、驚いて蛇の目を大きく開く。そして歓喜の笑みを浮かべてウグイスの手にもう一つの手を重ねる。

「うんっ私も大好きだよ。ウグイス」

 2人は、お互いの存在を確かめ合うようなぎゅっとぎゅっと握りしめ合った。

 そんな2人を青猿は、ツキの首筋に寝そべったまま嬉しそうに笑う。

「愛情も友情も元通りになったな」

 青猿は、尖ったツキの耳に直接話しかける。

「・・・うるさい」

 ツキは、ぼそりっと言う。

「おっ何だ?照れてるのか?人前であんなに大胆にキスしたからな。孤高の王も台無しだ」

 青猿は、楽しそうに笑う。

「なあ・・・青猿」

「なんだ?」

「お前、こうなることを予測して俺を焚き付けたのか?」

 そう言って黄金の双眸を持ち上げて青猿を見る。

 青猿は、小さく頬を掻く。

「そんな意図したわけじゃねえよ。長く母親やってると子どもに対する感が冴え渡るだけさ」

「・・・そうか」

 ツキは、それ以上何も言わなかった。

 青猿は、口元に小さく笑みを浮かべて楽しそうに話すアケとウグイスを見ていた。

「幾つになっても子は子だな」


 屋敷に戻ると玄関からオモチとカワセミが雪崩のように駆け出してくる。

「アケ様!」

 オモチは、表情こそ変わらないが赤い瞳を輝かせる。

「ご無事で何よりです。奥方様」

 カワセミは、冷静に右手を左肩に当てて頭を下げる。

 しかし、水色の尾羽はパタパタと嬉しそうに小刻みに震えている。

「2人とも心配かけてごめんね」

 アケは、身を小さくして恐縮する。

「奥様・・・ご無事で・・」

 玄関の中でアヤメが綺麗な顔に両手を当てて涙ぐんでいる。家精(シルキー)でなければ外に飛び出して抱きついている勢いだ。

「もう・・みんな大袈裟だよ・・・」

 アケは、顔を真っ赤にする。

「いや、結構なものだったと思うよ」

 ウグイスがアケの隣で苦笑する。

 アケも引き攣るように笑う。

 そんな2人を見てカワセミは、水色の瞳を細める。

「間に合ったようだな。ウグイス」

 カワセミは、笑みを浮かべて妹を労う。

「兄様の風の鎧のおかげだよ、ありがとう」

 ウグイスも笑顔で返す。

「仲直り出来たようだな」

 オモチは、鼻をヒクヒク動かしながら言う。

「はいっ元通りです」

 ウグイスは、そう言ってはにかみ、アケの背中に回ると背伸びして両手をアケの首に回す。

「私たち、1番の友達ですから。ねっアケ」

 ウグイスは、にっこりと微笑む。

 アケも頬をほんのりと赤く染めて頷く。

 そのあまりに微笑ましい光景にオモチもカワセミもアヤメもほんのりとする。

「みんな、心配かけたお詫びに今日はみんなの大好きな物作るよ。何がいい!」

 アケの言葉に全員が目を輝かす。

「私、唐揚げと親子丼!それとうどん!」

「僕は、野菜の天ぷらと果実を絞った飲み物を」

「俺は、あんみつとお汁粉を」

「私は、クッキーとお紅茶で」

 本当に好き勝手に頼んでくる。

 しかし、アケはそんな好き勝手な注文をされることが堪らなく嬉しかった。

 ここが自分の居場所だと感じられるから。

「了解!すぐに作るよ」

 アケは、にっこりと微笑み、力瘤を作る真似をする。

「主人はコーヒーと何が・・」

 アケは、後ろにいるはずのツキを見る。

 しかし、そこにはツキの姿も青猿の姿も、そしてアズキの姿もなかった。

「王ならさっき、青猿様とアズキを連れて屋敷の裏に行きましたよ」

 カワセミが教えてくれる。

「お母さんと?」

 お母さんと言う言葉にカワセミは、首を傾げる。

「アズキも一緒に?」

 アケは、蛇の目を顰める。

「きっと王同士の内緒話しでもあるんじゃない?」

 ウグイスは、アケの首から手を離す。

「すぐ戻ってくるよ。それより早く入ろ」

「うっうん」

 アケは、釈然としないまでも頷き、ウグイスに促されるままに屋敷の中に入った。


 人の姿になったツキは、屋敷の壁に寄りかかり、そのまま崩れ落ちる。

 全身から夥しい血が流れ、緑の草を赤く染める。

 アズキが心配そうにツキを見上げ、その隣で青猿が深緑の双眸を揺らす。

 ツキは、黄金の双眸をアズキに向ける。

「すまないが傷を癒してもらえないか?血を止めるだけでも構わない」

 アズキは、ツキに近寄ると全身を燃え上がらせ、ツキの手に触れる。

 炎がツキの身体に移り、赤く燃え上がる。

 血がゆっくりと乾いていき、裂傷とも爛れとも取れない傷が塞がっていく。

 炎が消える。

 ツキの身体から傷が完全に消える。

 しかし、ツキの表情は晴れない。

 身体中に走る痛みに顔を歪める。

「厄介だな」

 青猿は、ぼそりと呟く。

「表面だけ癒えてもダメージはまるで消えてない。白蛇の奴も面倒なことをしてくれる」

 そう言って唇を歪める。

「そう言う契約だからな」

 ツキは、ゆっくりと身体を起こす。

「王」

 高い子どものような声が飛んでくる。

 オモチだ。

 オモチは、ツキの様子を赤い瞳で見て、鼻を動かす。

「猫の額を出たのですか?」

「やも得ない事態だった」

 壁を掴みながらゆっくりと立ち上がる。

「何かあったのか?」

「急に姿が見えなくなったのでアケ様が心配されてます」

「そうか。すぐ戻る」

 そう言って黒い長衣の乱れを正す。

 指一本動かすだけで身体中が軋むも表情には出さない。

「それと・・・」

 今度は、青猿の方を向いて手に握った2枚の葉っぱを重ねた蝶を見せる。

「これが飛んで参りました」

 2枚葉の蝶は、オモチの手を離れると青猿の肩に止まる。

 青猿は、深緑の双眸を細める。

「朗報と不報だ」

 青猿は、短く答える。

「朗報は、子供たちの監禁されてる神殿の場所が幾つか絞れたらしい」

 ツキは、黄金の双眸を細める。

「不報は?」

 青猿が深緑の目を閉じる。

「青猿の国に大量のガーゴイルが迫ってきている。それを率いてるのは白蛇の国の近衛大将、朱のナギだ」


しばらく更新ストップです。

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