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【完結】--新生--生まれ変わって山へ、宇宙へ  作者: 浅間 数馬
第三章 宇宙へ

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4. 目覚め 再び

ここはどこだ。よく見えない。手足の感覚もなんだかおかしい……

ええと、人手が足りない上に台風で自動運転車が使えない上に、若い奴らは運転免許も持っていないもんだから、俺が手動運転で物資を届けに行くんじゃなかったっけ? …… あ、土砂崩れ! ここは病院か?


「ようこそ。お待ちしてましたよ」


聞き覚えのある声がする。いや、聞こえている気がする。なんだ!? この感覚は。


「どちら様ですか?」


声を出して聞いてみた。いや、声を出したつもりなのだが、声が出ていないようにも思える。


「あらひどい。私をお忘れですか?」

「! ……君は妻さんかい!?」

「そうですよ。二代目夫さん」

「なんてこった!? ここはあの世か? 俺は死んでしまったのか!? ??? 二代目?」


「おいおい、この下りは私がここに来たときとまったく同じじゃないか。コピペじゃあるまいし」

「!? そこにいるのは俺か?」

「ああ、そうだ。初代のお前だ」

「しょ、初代? 何のことだか…… あ、何だか頭に入ってくる…… そういうことなのか!?」

「ええ、そうですよ。流石に二代目夫さんは飲み込みが早いですね。弓道や瞑想のお陰ですね。物事を受け入れる力が初代夫さんよりも強いですね」

「私はこいつより劣っているわけではない!」

「はいはい。フフフ」




「新生すると元の体が安楽死処分になって魂が抜けるとは知らなかった」

「私も最初は驚いた」

「4次元空間の人は魂のことを誰も知らないですよ。今はまだ、遠く離れた、重力レンズ現象を引き起こすダークマターの巨大な塊を探している段階ですからね。どこにでもあると気づくまであと300年、魂の存在と構成に気づくまでさらに200年かかります」

「ところで、俺の家族はどうしてるだろう? 悲しんでないか?」

「光さんが取り乱していますけど、未来ちゃんと樹君がしっかり支えてますよ。それと、初代夫さんから採取したDNA情報を使って三代目夫さんの培養が始まりましたよ」

「え!? あ、労災か!」

「そうです。8年後に新生しますよ。二代目夫さんも一緒に三代目夫さんの人生を見ていきましょ」

「まだ納得できないが、逆らってどうなるものでもないしな。解った。二人と一緒に見ていくよ」




「それでは、私達は三代目夫さんの新生シーンまで時間軸を移動しましょう。

その間に、ご家族と関係者の皆さんの様子を簡単にご説明しますね。


光さんは二代目夫さんを失って気力が少し落ちています。社長になれそうだったのに退職してしまいました。でも、自分と三代目夫さんの培養の様子をモニターして楽しんでいます。蓄えもたくさんあるし、金銭面でも精神面でも問題ありません。長野でのんびり暮らしています。

未来ちゃんは仕事に打ち込んでいますね。33歳になりますけど、結婚はしていません。30歳の時から労災保険でニューロンパターンのスキャンをしていますね。

樹君は入社2年目にL1-1のオフィス出張で、短期間ですけど宇宙に行っています。凄く感動していましたね。その翌年には26歳でお子さんが生まれています。女の子で名前はソラちゃんです。そして、樹君も30歳からニューロンパターンのスキャンを始めています。


河内さんは相変わらず新聞社勤務で、今は少子化問題と新生制度の暴走を扱っています。

堺夫人、典子さんは二代目夫さんが亡くなった翌年に長野県から立候補して衆院議員に当選しています。夫の堺昭夫さんは典子さんの私設第一秘書になりました。そして、わずか3年後、35歳で農林水産大臣に就任しました。政界は未だに女性が少ないのでポストに就きやすいようですが、既に内閣の顔として連日メディアに顔を出しています。未来の総理との噂も出ています。


サカイ林業は名栗澤社長の下、経営は順調です。そして、二代目夫さんが事故にあう2年前に新生した日原さんが、大学で林業を学んでサカイ林業に就職しました。社長よりも知識と実力がある新入社員ですね。名栗澤社長はちょっとやりにくそうです」


「初代留浦から宇宙の様子を説明しておきましょう。

三代目培養中の8年間で3つのスペースコロニーが完成しました。L1-2、L1-C、L1-Uの3つです。後から建設を始めたL1-CがL1-Uよりも先に完成しています。工期が5年も短いのです。凄い国力だというか、本当に大丈夫なのか心配です。

一方で、L1-E完成まであと11年。L1-BJ完成まではまだ17年かかります」

「樹が張り切ってるな」

「樹君だけじゃないですよ。ホホホ」

「ちょっと妻さん、光みたいな意地悪な笑いじゃないか」

「こら、妻さんは私の妻であってお前の妻ではない。お前の妻の光さんの記憶のベースになっているだけだぞ」

「そうは言っても記憶があるから」

「はいはい、漫才はそのくらいにして、そろそろ三代目夫さんが目覚めますよ」

=====



どうもこの麻酔明けは気分が悪いな。

新生する気はないのだが、労災保険の関係で定期的にスキャンが義務付けられている。民間なら拒否しても大きな問題にはならないが、俺は役人だからな。わがままは言えない。


技術の進歩で培養期間は10年から8年に短縮された。ニューロンパターンのスキャンも時間短縮された。短縮されたが、2時間から1時間40分という微妙な短縮だ。1時間40分動くな、とは言えないのでやっぱり全身麻酔だ。

頭にセンサを着けて本でも読んでいればスキャンが終わる、そんな仕組みができないものだろうか。


しかし、何だろう。体が妙に重い。ん? 点滴されている? 足にエアーマッサーシャー? 麻酔事故でも起きたか? あ、そういえば前にもこんなことがあったな。そうだ新生した時だ。

周囲を観察すると部屋は個室だ。経過観察室とか大部屋ではない。なぜだ?


しばらくすると女性看護師がやってきた。


「留浦さん、気がつきましたか?」

「はい、何かトラブルでも起きましたか?」


口が重いな。声が掠れている。


「えーと、それはソーシャルワーカーから説明しますね。少し待っていてください」


ソーシャルワーカー? カウンセラーとかじゃなくて? なんで? 労災保険の関係か? さっぱり解らん。

すぐにソーシャルワーカーさんが来るのかと思ったら、やってきたのは医師だった。男性医師が測定機器の表示を確認している。その測定機器は… 俺の頭に繋がっているじゃないか。新生したときによく似ているぞ。


「特に問題ありません。ソーシャルワーカーが来るまでもうしばらく待っていてください」


30分ほど待たされた。喉が渇いたな。男性ソーシャルワーカーさんがやってきて、枕元の椅子に座った。


「初めまして。ご気分はいかがですか?」

「気分が良い悪いと言うよりは、状況が飲み込めません。何が起きたんですか?」

「はい。驚かないで落ち着いて話を聞いて下さい。留浦さん、あなたは事故に遭ってお亡くなりになりました。今のあなたは最後にニューロンパターンをスキャンされたときの記憶で新生された新しいあなたです」


長い時間呆けていた気がする。実際には1分も空いていないだろうが。


「そうですか。労災ですか?」

「はい。労働災害が認定され、ご家族の了解を得て新生させていただきました」


手鏡を手渡された。そこには20歳以上若い顔があった。以前新生したときと同じだ。

ショックと言えばショックだが、2回目だからだろうか。怒りとか動揺とか悲しみといった気持ちは沸いてこない。新生する気はなかったのだが、新生しちゃったんだな。その程度だ。


「理解しました。で、今はいつですか?」

「あなたが事故に遭ったのはスキャンの翌年です。培養期間は8年です。つまり、あなたの最後の記憶から9年が経っています」

「9年か…… 妻は、家族はどうしていますか?」

「皆さんお元気ですよ。連絡を入れましたからまもなくお見舞いにいらっしゃると思います」


俺が納得したことで、医療側が動き出した。


「留浦さんは新生2回目ですね? じゃ、お解りだと思いますけど、明日からまたリハビリをしていただきます。苦しいかも知れませんが、すぐに自由に動けるようになりますよ」

「今夜は重湯が出ます。明日から少しずつ固形物が食べられます」

「1週間ぐらいで退院できます。その後はまた合宿所に入って3ヶ月間過ごしていただきます」


こうして俺の3度目の人生が始まった。

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