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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第1章 救世主と聖女

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試練の塔攻略1

 試練の塔の中へと入ると驚いた。あれだけ大勢入っていった冒険者達が一人も居ない。しかも、入ってきた後ろにあるはずの入り口が消えて壁になっている。


「先に入っていった冒険者達は?」


 俺の疑問にポーラが答えてくれた。


「ここは、異空間になっているの。今この場に居るのは私達だけよ」


 つまり、パーティとして登録したメンバー毎に別れて塔に挑むということか。


「そうなんだな。うん? 異空間? ちょっと待てよ。まさか、<空納>が使えないとか無いよな」


 慌てて<空納>を使ってみると問題無く使えた。


「大丈夫よ。心配しないで。それよりも早く進みましょう。この階層で終わりたくは無いでしょう?」

「分かった。進もう」


 ミコトも頷き、俺達は奥へと続く通路を進み始めた。


「ポーラは一度踏破しているんだよな?」

「ええ」

「それじゃあ……」

「楽にならないわよ。寧ろ、私のせいで難易度が上がっているはずだわ」


 試練の塔というくらいだ。確かに一度クリアした者が何度も挑戦して、神器を何度も貰うのは良くないよな。


「それと、二度目以降は神器は貰えないわよ」

「貰えないのか? それなのに二度目を挑戦する者がいるのか?」

「ええ。プリメラ様に会いたいという者、レベルアップしたい者、自分の力を試したい者。理由は様々でしょうけど……」


 ポーラが話の途中で立ち止まる。


「どうしましたか?」


 ミコトが質問すると、ポーラの表情が一際険しくなった。


「止まって!」


 ポーラが突然大きな声を上げる。突然の大声に驚いたミコトが立ち止まるが、その足はポーラの前を通り過ぎ、カチリッ。踏んだ床が凹む。


「あっ……」

「ごめんなさい」


 ゴゴゴゴゴゴ……


 大きな音が鳴り響く。


「アスカ! <アクセルブースト>! ミコト! <アドバンスギア>を! 走って!」


 ポーラが叫ぶと同時に、俺とミコトは言われた通り<アクセルブースト>、<アドバンスギア>を使い、走り出した。大きな音のする方を見てみれば天井がどんどん降りてきている。


「嘘だろ! 潰されるぞ」


 二人よりも素早い俺は一人天井の降りてくる通路から抜け出した。もう半分くらい天井が降りている。


「急げ!」


 二人は全力で走っているが、天井の降りてくるスピードの方が速い。このままだと二人が潰されてしまう。何とかしないと。周りに何か無いか探していると、壁の一部に色の違う部分があった。


「これは?」


 迷っている暇は無かった。二人の頭2メートルくらいの高さまで迫っている。色の違う部分を触る。すると、その部分が窪んだ。カチリッ。音がすると天井の降下が止まる。


「止まったぁ……」


 二人かか通路を抜けて来た。


「アスカ、止めてくれたのね」

「ありがとうございます」

「いや、止まって良かったよ。さぁ先に進もう」


 再び先へと進み始めると、今度は俺が何かのスイッチを踏んでしまった。


「あ、ごめん。何か踏んだ」

「何が来るか分からないわよ。気を付……け……て……」


 ガスが壁から噴出してきた。これは、睡眠ガスか。ヤバい眠たく……。


「<リカバリー>!」


 ミコトが眠ってしまう前に状態異常回復の魔術を使い、目が覚めた。


「ありがとう、ミコト」

「サンキュー、助かったよ」

「いえ。これ位の事なら大丈夫です」


 ミコトが少し照れくさそうに微笑んでいる。試練の塔攻略中で不謹慎だけど、可愛いな。ミコトが俺の視線に気が付いたのか、さらに照れくさそうに下を向いてしまった。


「よ、よし。先へ進もうぜ。それにしてもこの階は罠が多いな」

「そうよ。この第一階層は、罠だけなの。ここを突破する実力が無ければ、あの無傷で出てきた冒険者みたいにすぐ退場になってしまうわよ」

「プリメラ様、いたずら好きですからね」


 いたずら好きの女神って、尊厳とか感じないぞ。


「ここから先も罠が多くあるはずだわ。気を引き締めていくわよ」

「ああ」

「はい」


 俺達は慎重に先へ進んだが、巧妙に仕掛けられた罠が悉く発動し、その度になんとか切り抜けていく。壁から矢が飛んできたり、床にでっかい穴が空いたり、天井からナイフが降ってきたり。


 いたずらにも程があるというものだ。だけど、何だかんだでついに行き止まりに到達した。


「ここで行き止まりだな」

「そうですね」


 ポーラが不思議そうに考え込んでいる。


「ポーラ、どうしたんだ?」


 俺が質問すると、ポーラが話し始めた。


「おかしいのよ」

「何がおかしいのですか?」


 ミコトも質問をするとポーラは壁に手をつき答えた。


「次の階層へと続く転移陣が無いわ」


 そう言われると確かに行き止まりに着いたのに、次の階層へと続く階段等が見当たらない。ここに来るまでは分かれ道も無い、ただの一本道だった。いや、罠だらけの一本道か。


「ここが最終地点なら、この床に転移陣があっていいはずなのだけれど」

「それはつまり……」

「ここが最終地点じゃないということになるわね」

「でも、行き止まりですけど……」


 ポーラは触れた壁をコンコンと軽く叩いてみる。先が空洞になっているような軽い音じゃなかった。

 間違いなくこの奥は分厚い壁だ。


「ポーラ、前に来た時はどうだったんだい?」

「そうね。こんな感じの行き止まりに転移陣が光っていたわ」


 俺は床に触れてみる。特に仕掛けなんかは無さそうだ。だったら何故、行き止まりなんだ? ポーラが言っていた以前に踏破した者がいる場合は難易度が上がる。これが関係しているのかな? 俺達は暫く、この先に進むための仕掛けが無いかを行き止まりの壁や床をくまなく探してみたが、罠も無ければ、転移陣を発動する仕掛けも何も無い。本当にただの行き止まりだった。


「どういうこと? プリメラ様が私たちを先に進めたくないということかしら?」

「そんな事は無いと思いますけど」


 女神プリメラ。いたずら好き。難易度が上がる。難易度が上がるという割には、俺達でも何とかなるレベルの罠だった。何か引っかかる。それが何か分からない。こう、喉の辺りまで出て来てそうで、出て来ない。


「こうなったら、壁を壊してみようかしら」


 ポーラが剣を抜き、壁を斬りつけようとしている。それをミコトが止める。


「ポーラさん、待ってください。剣が折れてしまいますよ!」

「でも、このままじゃ進めないわ」


 進めない。道は一本。ん。まさか…。


「なあ、ポーラ」

「何?」


 ポーラはミコトの手を振りほどきながら俺に返事をする。


「この先は、戦闘があるんだよな?」

「ええ。次の階層からは戦闘しながらの試練になるわ」

「つまり、ここで体力を使うと、先に進むのは厳しくなるって事だ」

「そうね」

「分かった。そういう事か。プリメラさんよ。意地が悪いな」


 二人共俺の言葉に首を傾げている。でも、分かった。何故ここに転移陣が無いのか。


「どうしたの? 何か分かったの?」

「ああ。難易度が高くなった割には、罠をそれなりに切り抜けられただろ」

「そうね。確かに、前より罠の数は増えていたけれど、最初の天井と睡眠ガス以外はそんなに大した罠じゃなかったわね。それがどうかしたのかしら?」


 ミコトがポーラの言葉で俺が何を言おうとしているのかを察したようだ。


「そういう事ですか」

「どういう事? 二人共、何が分かったの?」


 ポーラが俺達に質問してくる。俺はポーラの質問に答える。


「普通、罠は奥に向かう程、過酷な物になる筈なのに、ここは逆だった。つまり……」


 俺がここまで話すと、ポーラも気が付いたようだ。


「まさか、ここからまた戻れと言う事なの……」


 俺は静かに頷く。


「私もそう思います」


 ミコトも同意すると、壁からゴゴゴゴゴゴゴと音が聞こえてきた。


「まさか、答えに気が付いたら罠が作動した! 急げ、スタート地点がゴールだ。戻るぞ」


 俺達が駆け出したのと同時に行き止まりだった壁が崩れ、そこから水が押し寄せてきた。


「ここに来て水攻めか。あの大穴まで急ぐぞ!」


 元来た道を戻り、同じ罠が作動。背後からは水が押し寄せてくる。明らかに行きより難易度が上がっている。大穴を飛び越え、押し寄せて来た水が全て穴に飲み込まれていく。


 そして、何とかスタート地点まで戻ると、俺の予想通り床に次の階層への転移陣が光っていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

「き、きつかったわ。流石に……」

「でも、これで次へ進めますね……」


 俺達は息を切らしながらも転移陣の上に立つと、白く輝き、次の階層へと転移していった。

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