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[第8話]勇者、仲間に見捨てられる[勇者視点]

 さかのぼること1日前。

 勇者ライは土魔法術師エアルトを追放して上機嫌だった。


「ふっふっふ。これで邪魔者は消えた。これから勇者パーティーは僕のハーレムパーティーになるんだあああ!」


 あまりにも欲望に忠実な雄叫びをあげる。

 ギルド内の他の人の迷惑など微塵も考えていない。

 そんな勇者ライに近づく人影。


「今日はずいぶん早いな、勇者」


 声の主は朝のお祈りから戻ってきた聖魔法術師のクリスタだった。

 すらっと伸びた長い手足。170cm弱の高身長。

 三つ編みにした腰まである長い金髪。

 奥ゆかしさを感じさせる厚手の白い法衣のようなローブがボディラインを隠そうとするも、その胸はしっかりと自分の存在を主張していた。


「ん? クリスタじゃないか。ぐへへ、今日も相変わらずおっぱいでっかいなあ……。じゃなかった、今日も元気そうで何より。げふんげふん」


 咳払いをして誤魔化そうとする勇者だったが、セクハラ発言は完全に聞かれていた。

 胸を庇うように腕を組むクリスタ。眉をひそめ蔑んだ冷たい目で勇者を見下ろす。

 彼女は勇者のことが嫌いだった。


「ところで、エアルトは遅刻か? あいつが遅れるなんて珍しいこともあるものだな」

「ああ、そのことなんだけど、エアルトはもういないよ」

「は? いないだって!? おい、それはどういう……っ!」

「ふっふっふ、ついさっき出て行ったのさ!」

「そんなっ。ありえないっ。あいつが出ていく理由なんてないじゃないか!」


「なによ、クリスタ。そんな大声出して」


 クリスタと勇者ライが言い争いをしているところに勇者パーティー最後のひとりが現れた。

 毛先がくるんとカールした赤い髪の毛。頭に被くのは、その小さな体には似つかわしくない大きなトンガリ帽子。

 眠そうに目をこすりながら現れたのは炎魔法術師のフレアだった。


「ふぁあ。おはよ、ふたりとも。……エアルトはまだ来てないの?」

「フレア! ちょうどいい、ふたりに話しておきたい事があるんだ。まあ、まずは座るんだ」


 そう言って勇者ライは自らの太ももをポンポンと叩く。

 しかし呆れたように顔を見合わせたふたりは勇者の対面の席についた。

 そのことにあからさまに不機嫌そうな顔するも、勇者ライは得意げに話し始めた。


「ふっふっふ。なにを隠そう、エアルトは僕が追放した!」

「はああああ!? なんですって!?」

「はああああ!? なんだって!?」


 フレアとクリスタは同時に叫んだ。


「信じられん。まさか勇者、お前がこれほどに愚かだったとは……っ」

「んなっ、この僕が愚かだって!? エアルトは勇者パーティーにふさわしくなかった! だから追放したんだ!」

「……もう、ほんとバカっ。戦闘に一番貢献していたのはエアルトなのよ? お金の管理だってしてくれていたし、他の雑用だって……っ」

「バ、バカ!? ふん、戦闘なら僕だっていっぱい活躍してるんだっ」

「エアルトの支援のおかげでな」

「ぐうっ。か、金の管理なら僕だってできる! ほら、この革袋。エアルトから奪ったんだ! ついでにあいつの金も没収したから、しばらく遊んで暮らせるんだ!」

「……ほんと、サイテー」

「ぐぬぬっ。それに雑用なら全部あのメイドのターリスにやらせればいいんだ!」

「エアルトがいないのになんでターリスがいると思うのよ。ターリスはエアルトが土魔法で作ったゴーレムなのよ?」

「そ、そうだったのか!?」


 いとも簡単に論破される勇者ライ。

 彼が思い描いていた夢のハーレム生活は音を立てて崩れ去った。


「もうお前のパーティーにいるわけにはいかない。私は抜けさせてもらう」

「あたしもよ。じゃあね、勇者さま」


 そう言ってギルドから出て行ったふたり。

 残されたのは泣き崩れる勇者。そばに寄ろうとするものは誰もいなかった。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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