[第13話]土魔法術師、王に謁見する。
通常の馬車では王都まで数日は要するだろうが、自動馬車のおかげで昼までに到着できた。
高くそびえ立つ石の城壁を抜け、王城まで直行した。
王女エレノアを無事送り届け、しばし休憩を取った後、俺と勇者ライは王の待つ謁見の間へと案内された。
王城の中でも一際豪華な造りの謁見の間。
部屋に入ると大勢の人間に出迎えられた。貴族や大臣たちだろう。中にはエレノアと使者の男もいた。
床には赤い絨毯が敷かれ、その先には金の装飾があしらわれた玉座。
そこに腰掛けるのは国王だった。
「おお、そなたが我が娘を野盗から救ってくれたという土魔法術師のエアルトか」
「はい。当然のことをしたまでですが」
「なんと謙虚で慎ましい青年だ! 我が娘の夫に相応しい者はそなたしかおらん」
王の突然の話題に会場がざわめく。
顔を真っ赤にさせたエレノアが飛び出して来た。
「お、お待ちくださいまし、お父様っ。私たち当事者に相談も無く、急に結婚の話だなんて……。確かに私はエアルトさまのことを愛していますが……、あっ!」
ハッとして自分の口を押さえるエレノア。
そんな娘の姿を見て王は笑う。
「ほっほっほ。我が娘の意思は決まっておるようじゃの。もちろん、王女の夫となる者には相応の爵位と領地を与えよう。どうじゃ、エアルト。娘をもらってはくれぬか」
「ありがたき幸せ。ですが王女はいわばこの国の至宝。私のような者には恐れ多きことでございます。爵位と領地だけいただいておきましょう」
「なんとこれほどまでに遠慮深いとは立派な若者だ。そなたのような強く誇り高い男を婿に迎えられぬのは惜しいが仕方ない、諦めよう。さて、次にドラゴン退治の報酬だが……」
王が配下に目配せをする。
すると大きな宝箱が4人がかりで運ばれてきた。
「ドラゴンの復活という前代未聞の事態にそなたが果たしてくれた功績は大きい。その働きに報いるには金60kg分の贈り物が妥当であろう」
王の言葉とともに宝箱のふたが開かれる。
中にはぎっしり詰まった金銀財宝がまばゆく輝いていた。
再び会場にざわめきが起きる。
それもそのはず。
都市に住む平民の日収が銀貨1枚だと言えば、この報酬がいかに莫大なものかわかるだろう。
例え貴族でも、これほどの財産を持っている方が珍しい。
「遠慮はしてくれるな。そなたがドラゴンを倒していなければ、城下は炎に包まれ、財宝は奴の寝藁と成り下がっていたのだ。むしろこれでも足りないくらいだ」
「そういうことなら遠慮なく頂いておきましょう」
俺は胸に手を当てる貴族式のお辞儀をした。
そして話題は勇者ライに移った。
王が鋭い視線を向けると、ただでさえ縮こまっていた勇者ライがさらに萎縮する。
「して、勇者ライよ……」
「ひぃっ」
「王女によれば、そなたは勇者でありながらドラゴンに恐れをなして隠れていたそうだな。さらに手柄を捏造し、真の英雄を貶めようとした。……何か申し開きはあるか?」
「ち、ちがうっ。ドラゴンは僕が戦って倒したんだ! 王女が間違っている! 王女は嘘つきだ!」
あろうことか、開き直ってエレノアを罵倒し始めた勇者ライ。
これにはその場にいた全員が凍りつく。
この国において公然と王族を侮辱することは斬首刑に値する。
すぐに衛兵らが押し入ってきて、勇者ライは抵抗するも取り押さえられた。
「もはや疑う余地もないか……。聞け、皆の者! この者は勇者として品格に欠ける行いをした。勇者の称号は剥奪とする!」
「うわあああああああああ! 嘘だああああああ!」
「ええい、やかましい! 王女を侮辱した罪については本来であれば死刑だが、まがりなりにも勇者を務めていたことに免じて国外追放とする。衛兵、連れていけ!」
「やめろおおおおおお! 君たちは間違っているううううう! 後悔させてやる、ここにいる全員、後悔させてやるううううう!」
兵士に両腕を抱えられ退場させられるその間際まで喚き散らした元勇者ライ。
そんな彼に同情する者は誰ひとりとしていなかった。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
面白いと思っていただけたら、高評価・ブックマークをお願いします。




