[第1話]土魔法術師、パーティーを追放される。
「エアルト、君はもうクビだ!」
いつものようにギルドに出向いたある朝。
ギルドに入るなり突然、パーティーリーダーで『勇者』のライにそう宣言された。
「……ん? いったい何を言っているんだ? どうかしてるのか?」
「正常だ、バカ! 君はもうパーティーに必要ないと言っているんだ。分かったら、回れ右して早く帰るんだ!」
「はあ、待て待て。どうして俺が追放されなきゃいけないんだ。せめて理由を聞かせてくれ」
俺、エアルトは得意の土魔法で前衛でも後衛でもパーティーに貢献してきたつもりだ。
それに戦闘以外でも料理や夜営時の見張り、会計など雑用もこなしてきた。
追放されるいわれなんてないはずだ。
「理、理由だって? そ、そんなの決まってるだろ……。そうだッ。君の使う魔法、土魔法が悪いんだ! 土魔法なんて地味でダサい魔法を使われたら、勇者パーティーの名が廃る! だから、さあ早く出て行くんだ」
恥ずかしげもなく堂々と言い放つ勇者に、俺は開いた口が塞がらなくなった。
まさか、そんなふわっとした理由で追放されるなんて思いもしなかった。
やれやれ、こっちまで頭が悪くなりそうだ。
俺は頭を押さえながら勇者にたずねた。
「はあ……。なあ、ライ。このことはフレアやクリスタも了承したのか? ふたりはまだ来てないようだが……」
勇者パーティーにはあとふたりのメンバーがいる。
炎魔法術師のフレアと聖魔法術師のクリスタだ。
早朝も早朝なせいで、ギルド内の人影はまばら。ふたりの姿もない。
いつものように、クリスタは朝のお祈り、フレアは寝坊だろう。
「え? あ、ああ! 当然だろう。ふたりには昨日の晩、伝えたよ。ふたりとも君がいなくなって清々するってさ!」
「……」
はっきり言って、意外だった。
ライはともかく、フレアやクリスタとは良い信頼関係を築けていたと思っていたんだがな……。
「はあ、そうか。ならお望みどおり、俺は回れ右するとしよう。今まで世話になったな。……一応な」
俺はきびすを返して、ついさっき入ってきたばかりの扉に手をかけた。
その時――。
「待て、エアルトッ! パーティーの金は置いていくんだ」
「ああ、そうだったな」
そういや、パーティーの金は俺が持っていたんだったな。
ライは計算が出来ないし、フレアはめんどくさがり屋、クリスタは信仰心から大金を持ちたがらない。だからパーティー結成からずっと俺が金の管理をしていたのだ。
俺はおもむろに懐から、パーティーのサイフ兼俺のサイフを取り出した。
「今分けるから、少し待ってくれ」
「うるさいっ! 全部渡すんだッ!」
ライは有無も言わさず、俺から革袋をひったくった。
「お、おい。それには俺の金だって入ってるんだぞ」
「黙れ! 君が今までパーティーの金を私物化してたんだ。これはその埋め合わせだ!」
「やれやれ。私物化も何も、金の管理は俺がしてたんだから当然だろう」
「と、とにかく没収だ! これはフレアたちも同意しているんだからな!」
「……はあ。もう勝手にしろ」
俺はそう吐き捨てて立ち去ることにした。
こうして俺、エアルトはパーティーを追放され、無一文となった。
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