夕方はお化けハザード
「それじゃ、ちょっと行ってきます」
「ワシもこのままでは辛いし頼むよ」
本格的に暗くなり始めたので、教頭先生の服の調達とエリック探しの旅に出ることにしました。
まずは、確実に服を手配出来そうなのは同じ一階にある学園ロビーの事務室と職員室ですかね。
てか、こんなに近くにあってどうして誰も様子を見にきてくれないのか?
もしかしたら、見捨てられたと言うのも強ち間違いではないのかも知れない。
「…うわぁ、混沌」
事務室真っ暗。
暗いだけならまだしも蠢くような闇が事務室に漂っている。
いや、ロビーから外にでてみたがやはり事務室と職員室は窓の中が真っ黒け。
私が気を失っている間に何かしら事故があったようです。
玄関に防災用グッズが置かれていたから銀色のコートみたいな耐火服を拝借。
教頭先生が使うんだから別に構わないでしょ。
「教頭先生、誰もいないから防災用グッズ借りてきました」
一式借りてきましたから、多分下着なんかも入ってます。
「…トランクスは好きではないのだがの」
つべこべ言わない。
着ている間に、職員室の様子を伝える。
幸い、真っ暗になっていたのは事務室周りだけで、教室の方は騒がしく歩いている人が見えていた。
ただ、ガラスが割られるような音が聞こえたりしたりするのが気になる。
外来は1日だけで、一般客が居なくなった時間から、上級生の協同作業による学園内部の一時的なダンジョン化。
「…不幸が重なった結果じゃの」
「ダンジョン化って出来るもんなんですか?」
「魔法袋の拡張と同じじゃよ。作るだけならいくらでも出来る」
モンスターはいないから、謎解きと宝探しがメインらしいんだけど、攻撃魔法使ってるみたいな音してませんか?
▼
生徒用玄関に無言で佇む一つの陰。
足元には倒れた女生徒らしき足。
(おもっクソ、グールが居るじゃねぇかあぁぁっ!?)
いや、グールじゃないみたいなんだけど噛まれたら眠らされるみたいです。
廊下には多数の被害者が引きずられた跡。
状況的には私が一番嫌いな奴ですた。
窓は、魔法で締め切られて外に出られない。
ちょっとしたパニック映画ばりの恐怖体験。
「無理無理無理無理無理無理…」
階段の隅で膝を抱えて座り込む。
カツーン…カツーン…と、足音はやたら響く。
いや、フラグなのわわかってるけどこの状況は止められぬ。
何度か撃退した所で腰が抜けちまったんだよぉっ!?
リアルお化けハザード怖すぎんだろがぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ナンマンダブナンマンダブナンマンダブナンマンダブー?!
『ハァァァァ…』
湿っぽい足音を立てて階段を降りてきたのは顔一部が崩れた美人さん…
ぎょへぇぇぇっ!クッソ恐えぇぇっ!
でも、歩くルートが決まってるらしくて階段下に向かってこないのは判明している。
魔法無効で一定時間たつと異形化が進んで沸いてくるゲーム使用。
もう、漏らす前に気絶していいですか?
体液が睡眠効果のある薬みたいで、斬りつけて青い体液を浴びた人も倒れてた。
そして、しばらくすると倒れた人と同じ顔の異形が湧く、作り物だとわかっててもコレはヤバい。
てか、ヤバそうな姿で放置されてる女生徒が多いんですよ。
美少女から被害に会うのはなんかの決まり事なんですか?
『はぁぁぁぁ…タマランネェゲヘヘヘ』
だらしなく顎まで涎を垂らし、両脇に裸に剥かれたグールを抱えたナニかが通過。
いや、確かにあれはグールじゃない。あれもっと邪悪な存在に過ぎない。
頭が腐れた列記とした生者。
腐女子暗躍中。
「あら、アティア様ではありませんか?」
涎を拭い大の男をポイポイと投げ飛ばし話しかけてきた。
「…おこんばんわ」
何故平気で(腐って)いられるのか彼女の正気を疑う。
「そうでしたか、残念ですがエリック様なら早々にグールの餌食に成りましたわ」
お嬢さん、誰も聞いては居ませんが?
「発生したグールには魔法が通じませんの。エリック様は身体強化は不得意でしたし仕方のない事かと…」
14才能子供の身体能力じゃグールの餌食って事ですか。
「私は聖なる加護がありまして、ちょっとした麻酔や睡眠薬なら効かないのです」
「…それがちょっとですか?」
「ちょっとですわ?」
彼女の手や首なんか、噛まれまくった跡だらけで無惨な姿なんですけどどどど?
「それより、今は私達は手分けして無事な人を体育館と講堂に集めてますの」
セオリーですけども、グールが大挙して押しかけて来るフラグじゃありませんか?
「階段下で震えてる人に言われたくありませんわよ」
「すいません、ホラー系は無理なんです」
「ホラーが何かはわかりませんが、その様な体たらくではとてもダンジョンなど行けませんわよ?」
「一生入りたくないです」
「…ま、アティア様ならそれでも構わないのでしょうね」
階段下にいた私を抱き上げて彼女は歩き出した。
「では、行きますわよ。しっかり私に捕まりなさい」
腰が抜けた私は彼女にされるがままです。
投げた二人はマジでグールだったらしく、いつのまにか居なくなってました。
…彼女が、リアルに男を剥いてなくて良かったとでも言うべきだろうか?
「オホホホホッ!紛い物などへいちゃらですわよーっ!!」
悪役令嬢めいた口調で、グールを文字通り足で蹴散らしながら彼女が走り出す。
やべ、素晴らしく勇ましさに、吊り橋効果で惚れてしまいそうだわ。
「つきましたわっ!」
グール徘徊するようになっていたグランドを駆け抜け、数分も立たないうちに体育館にたどり着いたが入口は大混雑。
「滅茶苦茶群がってるぅぅっ!?」
入口が見えないくらいグールだらけ。
「他の入口は無いんですっ!?」
「ありません強行突破しかありませんわっ!!」
「いやいやいやいや?!」
「行きますわよー!」
「いやいやいやいやマジでいやぁぁぁっ!?」
―ママさんが子供かかえたまま、バーゲンワゴンにドーン。
オホホホホオホホホホホホホホオホホホホッオホホホホッオホホホホッオホホホホッオホホホホッオホホホホッオホホホホッオホホホホッ
ちょっとした悪夢。
お化け屋敷がなかった理由ですな




