アナタの
「アティが好きそうなのはこっちだな」
パンフレットを見ながら楽しそうに歩いてくエリックに、私の右手は“ぎう”と握られている。
それも手首。
子供とは言いませんが、まだ大人とも言えないのに力強いですね。
何回か脱出を試みたのですが、無理でしたね。それどころか、握る力が増すばかりで、最終的に握りつぶすのが目的ではない事を願うばかりです。
「私はお店より資料室とかの見たいよ?」
「アティの行きたい所に行くと日が暮れる。自由に動けるのは今だけだろうから、時間が掛かる物は後回しだ」
「…ウチのクラスは?」
「ああ、私はあまり近づくなと言われた。セイテンの写本の販売や布教活動をしているらしいのだが女性以外は参加しなくていいと追い出された…」
あらまぁ、腐教活動ですか。流石に学園祭でやることじゃありませんけど、サイン会場みたいな部屋もあるからなんでもありかぬ?
久しぶりに顔くらいだしておきたいですね。クラス行きましょう。
オッサンのおかげで、そちらへの理解はありますが、オッサン共々中身にはあまり興味ありません。
売り子の美少女どもが、どんな面して売ってるのか見ておきたいだけです。
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クラスの扉を開けると腐ってた。
「アティア様お久しぶりです」
私に気づく前はグヘヘとでも笑いそうな顔をしていた美少女が出迎えてくれた。
エリックを外で待たせておいてよかったと思うよ。
「…クラスの出し物に趣味を持ち出すのはどうかと思いますよ?」
「布教活動ですので問題ないかと…」
メリッサ嬢は恥ずかしそうに俯いて見せたが、可憐な美少女は中身が完全に腐ってやがった。
以前はここまで酷くなかったんだけどねぇ。
「男子が参加できない出し物は意味ないでしょうに」
「大丈夫ですわ。エリック様以外の男子は布教済みですし、アティア様がエリック様を引きつけておいてくれれば問題無いですわ」
ごらぁぁっ!何かましとんじぁぁっ!!
「…そうゆう問題じゃないでしょう?」
「……チッ!コレだからリア充は」
リア充じゃねぇし。
「エリックに売り子を体験させなくてどうするのさ」
エリックの締め出しとか学園側の目的全否定してないかね?
「エリック様に売り子を任せたら客がきてくれませんわ」
そりゃ、美少年が売り子してたらBL本なんかさぞかし買いづらかろうよ。
男子は美女が店番してたらエロ本買えないしな。
「そもそも、布教活動の場にしたのが間違いだからな。
他の店にしなかったのは何でだよ」
「でも、売上は一番なんですの…」
薄い本一冊で銀貨五枚(共通貨幣単位=五千キョウカ)とか。ぼりすぎだろ。
普通は、コーヒー百キョウカくらいだからそら勝てるわ。
「昨日の勢いですと、今日中に用意した在庫もなくなりそうで困ってしまいましたわ~」
「クラスの出し物が同人紙即売会の方が困りもんだわ」
「…ウフフ即売会などと誤解されては嫌ですわ。祈りを捧げお布施に見合ったセイテンをお配りしてるだけですわ」
性なる書か?お布施とか意味分からんわ。
――――――――――
「おお神よ、我にセイテンの11節を与えたまえ」
「オーケー」
――――――――――――
そういやこの子、クラスのカーストトップだね。
クラスへの影響計り知れないわ。
手伝ってる男子は悟りを開いたみたいな達観した顔をしてるけど大丈夫かな…。
そもそも、あまり広めるような事じゃないでしょう。
腐教活動はほどほどにしないと結婚できなくなるぞ?
…駄目なら神殿入るとか、神殿の女性が腐敗するからやめてくれないか?
なに、新刊は神官長に手伝って貰った?
―手遅れだったか。
「…男性客には内緒にしてますから大丈夫ですわ」
「大丈夫ぢゃないよ?」
「男の秘密は漏れる物ですが、女同士の秘密は絶対外には漏れないものですわ」
ウフフと笑う美少女。
オッサン負けた。
今更出し物の変更はむりだから諦めるしかないよ。
「それより、エリックを好きな女の子の噂とか知らない?」
「………………………………………………………………………………………………………むしろ、エリック様が好きであろう方との話ならよく聞かされおりますが?」
なんだいまの“間”は。
しかし、エリックには好きなヲナゴがいるのか。
まぁ、そうだよねぇ。あの年頃なら心配する必要はないか。
兄弟なら余計な事すんなとか普通に怒るだろうね。
年上だから、女の子とのきっかけを作ってやろうだなんてのは、女であるが故に生まれた傲慢さが浮き彫りにされたか?
いやいや、年はとりたくないもんだ。
「なんだ。ちゃんと居たんだ?女っ気ないから心配してたんだけど気にする事なかったみたいな?」
「エリック様に女っ気ないからだなんて訳ないでしょう。単純に本人がそうした話を断られてるだけですわ。そもそも、入学以来アティア様と一緒に居てばかりではありませんか?!」
私はただ子供にいいように振り回されてるだけよ?
私おばさんだからその辺りわからないよ。しかも、年上への初恋って九割がた実らないって知ってるかい?
「仲良くはあるけど、せいぜい私は遊び友達じゃないかな?」
「……………………」
黙っちゃったけど、エリックと私の間に恋愛感情はないし多分違わないよ?
「このリア充め…」
「…なんでキミからそんな言葉が出てくるの?」
「リア充には、この気持ちはわかりませんわ!?」
キィッとか、言い足そうにしてるけど、私はリア充じゃない。
布教なんかするから、貴族の男が近寄れないんじゃないだろか。
でも、エリックに百メートルも引き回されれば分かり合えると思う。
手首を掴まれてたら振りほどく事も出来ん恐怖体験ぞ?
希望者を人力コースターに御優待してあげたいわ。
きっと、怖い物好きには流行るんじゃないかと思う。
【予告】腐敗した神殿の魔の手がアティアに迫る!?【次回】緑のアサシン




