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個体ノ武器  作者: 雅木レキ
【”僕”は、”誰”だ?:雅木『レキ』】
75/82

【違う訳が無い、否定出来ない】047【葉矛】

【個体の武器】

【雅木葉矛】-0-47----違う訳が無い、否定出来ない



 −−−−−−思考だけがはっきりしている。

またか。体の感覚がない。空中でもなく、かといって水の中という訳でもない。

ここはそもそも”空間”でさえ無い場所だ。

今の僕は、思考だけの存在としてそこにただ漂っている。

強いて表現するなら、まるでここは暗い海の様だ。


 この場所に息苦しさは無い。ただ、周りが良く見通せない。

ノイズが僕の認識力を下げ、時折押し寄せる波が僕の集中を乱して思考を止める。

周りの様子は”なんとなく”判る。なのに、それをちゃんと”理解する”ところまで運べない。

……ただ、1つ言えるコトがある。

今度は前回の様な乱暴な”押しつけ”とは違う。



 ---すぐ近くに彼が居る。

僕は悟った。

これは”対話”だ。

ノイズ混じりの思考の海の中、僕はただ乱れた波長に体を委ねていた。


 ココがどういう場所なのか?

そんなコトを気にする前に、僕はただこの場所を認めていた。

そして、近くに居る”彼”の思いを汲んでいた。


 ……僕は耳を傾ける。

精神に作用する暗く、無色透明の波はその動きを止めた。

いや、単に僕が”感じられなくなった”だけか。

海を霧の様に覆い、先を見えなくしていたノイズが消えた。

いや、単に僕が”認識出来なくなった”だけか。

どちらでもいい。事実として有る無しに関わらず、それはどの道僕には干渉しない。


 ……僕は暗がりの海の中、深く耳を傾ける。

僕自身の思考と彼の思考が混ざり合う。

僕は、僕でさえ自覚していない言葉を並べる。

彼の思考はそれに応える。

言葉こそ発していない。

ただそこには、”意識同士の共有”が確かにあった。




 ---……さっき、”彼”が言ってたことは全て正しい。

悔しいけど、否定なんて出来ない。


 ---僕は聖樹と凪を裏切ろうとした。

だって、他に出来なかった。

助かるかも、逃げれるかもしれないのなら、それを取るのは間違ったことじゃない。

……それは今でもそう思う。


 ただし、凪も聖樹も僕が原因で戦っている。

僕が学校を出たから、それで彼と会ってしまったから交戦状態になったんだ。

そして、傷ついている。


 ……僕は、逃げていた。

いつだって逃げ道を探していた。

このあり得ない状況で発生する、とんでもない不安を紛らわす為の逃げ道。

実のところ逃げ場は沢山あった。

例えばナギ達と喋っているときもそう。

敵の本拠地みたいなトコロに向かったのも、今思えば動いて不安を紛らわすためだったのではないだろうか。

それも1つの逃げ道。僕は逃げる為に立ち向かったんだ。


 ……だけどそれでも不安は拭いきれなくて。

逃げ道を探し続けた結果、”彼”を見つけた。

日常ではあり得ない存在を探していた。

そういうヤツがいたら。全部知ってる様な不思議なヤツがいたらって。

都合のいい妄想を現実にあるものとして、探していた。


 要するに、全部を誰かに説明して欲しかっただけだ。

この、個体ノ武器の危険性を。

この、非日常から逃げる術を。

”誰か”に縋りたかった。そうすることで孤独を避けたかった。

結局、行動も安堵も、何もかも逃げてるだけだったんだ。



 その上で、結局僕に出来ることは……。


『あるさ。』


……無い。



 僕に、そんなチカラが……。


『無かったのは、今までだ。』


今まで……?


『もう、あるだろ?』

 アレのこと?、アレは僕のチカラじゃ……。

いや、アレじゃない。

君が戦ったんだろう、あの時は。

君のチカラだったんだろう?

僕にはチカラなんて無い。



『お前には、お前の力が。』

無い。

『無い、なんて言わせない。』


君に僕の何が分かる……?

僕は力を使えない。

君は強いかもしれないけれど、僕は君に頼る術を知らない。


『恐れるんじゃない。怖がってばかりだから、既に見えている活路さえ見失っているんだ。』

……僕が、恐れてる?

そりゃ怖いに決まってるだろ。

敵も怖い。君も怖い。だって、君は僕を”消す”かもしれない。


『飲み込まれやしないさ。お前になら、託せるのだから。』

託せる……?


『全ては志だ。恐れるな。お前は無力じゃない。お前にはチカラが備わっている。後は、お前がそれを”使いたいかどうか”だ。』

 志?使いたいかどうか?

そんなの関係ないよ……。そんなの、良くわからないよ。

使いたくても、使いこなせないんだ。

結局、自発的に僕は戦えない。


『チカラを持つことと、それを使って他人に見せることはまた別の話しだ。今のお前は恐れている。意識的にも無意識的にも。チカラを恐れて、使うことから逃げて、オマエ自体が自分がチカラを持っていることを認めようとしていない。』


 チカラを認めてない……。



 ---僕は、また逃げようとしていた……?





 ------”目の前の景色は既に無い”

辺りは真っ暗で、僕と彼の会話を妨げる障害は無かった。

故に、彼とは心の底から互いに響き合う会話が出来た。

彼の言葉はどことなく清々しい。

僕は深く考えた。


 ”現実から逃げて。恐いから逃げて”

彼の言う通り、僕は今まで逃げてばっかりだ。

言葉じゃなくて、今日のことで良く分かった。

”彼”を見つけて、それを追いかけたことも1つの逃げだ。


 ”自分がチカラを持っていないから戦えないって、言い繕って逃げて”

戦い以外のことで役立てば良い。

そう言い続けてた。そう思い続けてた。

それで僕は努力したか?

……いいや、何もしてなかった。


 ”チカラを手に入れたら、今度は使うのが恐いって逃げて戦わない。”

だから一人で帰らなかった。

既にチカラはあったのに、昨日は一人で帰るのは躊躇った。

僕のチカラはリスクがあるって、そう言って言い訳してまた逃げた。


『逃げることが全部悪いことだと言うことは出来ない。逃げることが必要な時もあるし人物も居る。だが……。』



 ------それが、これら全てがチカラを認めないってことなのかな。

出来ることがあるのに何もしない。それが認めていないってことなのかな。

認めれば、使えるのか。

そのチカラって。

それが”活路”……?

……だったら。




”怖がってる場合じゃないよ……なぁ!!”






 ……------無意識に手が前に差し出される。

視界と間隔は戻った。

先程までに感じていた不快感は無い。

ノイズも雑音も、嫌な程研ぎ澄まされた敏感さも無い。

むしろ全てがクリアだ。

ただし思考はぼんやりとしていたが。


「……、なに?」

 あまり働かない頭は、瞬間的に最善の防御策をはじき出した。

先程に差し出された手には”赤い、霧状に散布している剣”が握られていた。

城ヶ崎の槍は僕の握る”剣”によって防がれた。

赤みがかった光が形成する剣。

輪郭だけは把握出来るが、カタチ自体ははっきりと発現してない。


「……、せ。」

 剣を振り抜き槍を弾く。

宙に赤みがかった軌跡が残る。

前回よりははっきりしたその剣にはやはり実体がある。


「い、け・・・・・・!」

「っ、まさか__!」

 僕は剣を翻し、真っ直ぐにエモノに切り掛かった。

無意識に言葉が出る。


”行け……。”



「行けッ……!」

 剣を大きく振り上げた。

体はやはりこの剣の特性を理解しきっている。

リーチも取り回し方も完全に把握している。

城ヶ崎の持つ槍を砕いた。


「痛ッ!何しやが……」

 意識が薄れる。

それでも僕は剣を振り回した。

縦に。横に。斜めに。一閃。


「なッ!?」

 城ヶ崎はなんとか避けきる。

その上でポケットからネジを握り込み、新しく剣を作り迎撃を行う。


 構わず刃を振るう。

一撃目で剣にヒビが入る。二撃目で刀身が砕け散る。

三撃目を入れる直前、彼は柄だけになった剣を投げつけ、身を引いた。

目の前がかすむのを感じながらも僕は飛んで来た剣の柄を砕いた。

更に意識に霧がかかる。

全部が霧に撒かれてしまう直前に、僕は叫ぶ。



「殺レッ!!潰せッッ!!!」




 ---その瞬間、”俺”の視界は一気に開けた。

敵の存在は把握している。

気持ちの高ぶりは引き継いでいる。

高ぶった感情の影響か、身体の状態は以前よりも優れている。


 ---行ける。

この敵達は倒せる。

俺の戦う理由は決まっている。

”僕”がそれを望むからだ。


「邪魔だッ!!壊れろォォォ!!!」

 ”俺”ではなく、”雅木葉矛”がそう叫んだ。

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