表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハッピーエンドの未来を目指して  作者: 池崎数也
第12章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

310/349

第309話:二年目の武闘祭 その4

 各部門の一回戦目が終わり、二回戦目が進んでいく。


 学年不問条件不問部門では予想通り『花コン』のメインキャラ達が勝ち残り、残っている全員が『花コン』のメインキャラという状況になっていた。


(二回戦の第一試合はコハク対カトレア先輩か……)


 そして今、闘技場ではコハクとカトレア先輩の戦いが始まろうとしている。


 片や学園の生徒の中で最強の呼び声も高い俺の弟であるコハク。


 片や三年連続で学年不問条件不問部門の本戦に出場する実力を持ち、生徒会副会長としても名前が知られるカトレア先輩。


 この二人の戦いは始まる前から注目を浴び、観客達は開始を今か今かと待ちわびているようだった。


(七対三……いや、八対二でカトレア先輩が有利かな)


 緊張した様子のコハクとリラックスした様子のカトレア先輩を遠目に見た俺は、コハクの不利を予想する。そもそも踏んだ場数が違うし、カトレア先輩は実戦経験もかなり積んでいる。俺からすればコハクは当たって砕けろ、胸を借りるぐらいの精神で立ち向かうしかないと思う。


(それでも、俺を真似るぐらいならその程度の逆境は乗り越えないとな)


 厳しいかもしれないが、コハクに対して俺はそう思う。格上の相手と戦う際、どのように立ち向かうか。折れずに立ち向かえるか、それとも折れてしまうのか。


(ん? 二人が何か話しているな……どれどれ)


 俺がコハクのことを心中で応援していると、遠目にコハクとカトレア先輩が言葉を交わしているのが見えた。そのため俺は目を細め、その唇の動きを読み取る。


『ミナト君の弟さんですか……戦うのを楽しみにしていました』

『僕もです。ラビアータ副会長の噂はよくお聞きしていますから』

『ふふっ、ご期待に沿えればいいのですが』


 大体そんな感じだろう。カトレア先輩らしいというか、穏やかに言葉を交わしているようだ。


「続いて学年不問! 条件不問! 二回戦第一試合! 一年貴族科のコハク=ラレーテ=サンデューク君対三年貴族科のカトレア=リンド=ラビアータ君の試合を行う!」


 審判の教師が両者の間に立ち、試合開始を告げようとする。それに合わせてコハクが剣を抜き、カトレア先輩は『召喚器』である『砕触剣尾さいしょくけんび』を発現した。


「それでは両者構えて――試合開始ッ!」


 観客席にも届くような大声での試合開始の合図。それに合わせてコハクが地を蹴り、カトレアもまた、地を蹴って距離を潰す。


 一回戦の試合でお互いにおおよその手の内がわかっているのだろう。無駄に魔法を撃つことはせず、距離を詰めて剣での斬り合いを開始する。


(コハク……)


 試合は俺の予想通り、カトレア先輩有利の展開となっていく。男女の筋力差が覆されるほどにカトレア先輩の技量が高く、コハクが徐々に押し込まれ始めた。受け太刀が多くなり、攻撃に回る余裕がなくなりつつあるのだ。


(防御は間に合うが、攻撃に転じる余裕はない……か)


 まさに防戦一方と言うべき展開になりつつある。それでもコハクは諦めず、懸命にカトレア先輩が繰り出す斬撃を防いでいくが――。


(それじゃあ勝てんぞ、コハク。別の手が打てる内にどうにかしないとそのまま押し切られるぞ)


 俺は伝わることがないとわかっていても、心中で声を上げてしまう。剣にこだわらず魔法か『召喚器』か、なんでもいいから相手のリズムを崩すような手を打てないとそのまま押し切られるだろう。もちろん、使い方によっては逆に追い込まれることになるが。


『このっ!』


 剣を交わし合い、追い込まれ、あと少しで負ける――その段階になってようやくコハクが動いた。鍔迫り合いに持ち込んでから強引にカトレアを弾き飛ばすと、『火球』を撃って目くらましにしながら後方に跳び、『召喚器』を発現する。


 『花コン』で知る通り、弓型の『召喚器』だ。金属製の洋弓で、コハクは剣を鞘に納めて即座に弓を引き絞る。


(あっ……)


 ――だが、それは下策だ。


 思わず心中で声を零してしまうぐらい、下策だった。なまじ距離を取れたから『召喚器』での攻撃を行おうとしたんだろうけど相手が、カトレア先輩の手に握られている『召喚器』が悪い。


『戦いの組み立て方を間違えたね』


 カトレア先輩の口元がそう動いたのが見えた。それと同時に『砕触剣尾』が蛇腹剣として振るわれる。


『ッ!?』


 コハクの目が驚愕に見開かれた。それまで一本の剣だった『砕触剣尾』が刃同士を連結した鞭のように伸び、弓を構えたコハクの元へと切っ先を届かせたのだ。


 コハクはギリギリのところで、弓で『砕触剣尾』の切っ先を受ける。しかしそれ以上の手は打てなかった。カトレアが瞬時に距離を詰めるのを見て、咄嗟に弓を手放し、再び剣を抜こうとしたところで動きを止める。


 伸びたはずの『砕触剣尾』が再び一本の剣に戻り、コハクの喉元へと突き付けられたからだ。


「そこまで! 勝者! カトレア=リンド=ラビアータ君!」


 審判もカトレアの勝利を宣言する。結果だけを見ればカトレア先輩の圧勝だった。コハクは防戦一方で、傷一つつけることもできなかった。


「…………」


 その光景を見ていた俺は、何も言わない。敗北によって悔しそうに俯くコハクを、ただじっと見ていた。






 二回戦第二試合はナズナとジェイド先輩の試合が行われ、盾役タンク同士の戦いとなった。ただし、実戦経験で勝るものの『召喚器』が盾のナズナと、『召喚器』が攻撃にも使える手甲のジェイド先輩では後者が試合では有利である。


 ナズナは剣も使えるが、その本質は盾を使って誰かを守ることだ。こうして本戦に出場できるぐらいには剣を使えるが、さすがに防御ほど攻撃が上手くない。実戦やモンスター相手の戦いなら得意だが、武闘祭での試合形式はナズナに向いていないのだ。


 ただ、ジェイド先輩も先輩で、ナズナが女性ということもあってか攻撃し辛そうである。以前モモカと決闘をした時も、女性を殴る拳は持たない、みたいなことを言っていたからだろう。


 そのため長期戦の末、ナズナの盾を殴って弾き飛ばしてジェイド先輩が勝利となった。


 二回戦第三試合はモモカとモリオンという、実力者同士の試合である。だが、ここはさすがにモリオンが勝った。モモカも強いが、モリオンの方が実戦経験も豊富で強敵相手の激戦も経験しているからだ。


 モモカが操る人形達は『土槍』や『風刃』だけで対処され、拳を握ったモモカも正面から魔法で対処されてしまった。拳で殴れる距離まで近づけたものの、カウンターで『雷撃槍』を撃ち込まれて負けとなったのである。

 モリオンは相手が女性だから、俺の妹だからと手加減するような性格でもなく、その実力を如何なく発揮しての勝利となった。


 そして二回戦の第四試合は透輝とエリカの試合になったのだが――。


(苦戦するかと思ったんだが……ずいぶんと『一の払い』が上手くなったな)


 エリカの戦い方は『天震嵐幡』を使った力押しである。去年の武闘祭以来自主訓練に顔を出して扱いに慣れてきたが、その点が大きく変わることはない。


 『天震嵐幡』は集団を薙ぎ払うという点では随一の力があるが、『一の払い』のように無効化できる手段を持つ相手だと一気に不利になってしまう。『召喚器』の扱い自体は上手くなってきたが、エリカ自身に『召喚器』以外での戦う力がないからだ。


 今の透輝には『天震嵐幡』で巻き起こされる風を両断できる技量が備わっている。そうなると透輝の勝利は揺らがず、事実、開始から一分程度で透輝が勝利を収めることとなった。


(他の試合もそうだけど、順当というか、相性の良し悪しが出たというか……)


 戦法がまずかったのもあるが力負けしたコハク、実力は高くても単純に試合に向いていないナズナ、実力差で負けたモモカ、『天震嵐幡』以外の攻撃手段がないエリカ。


 勝ち残ったメンバーはカトレア、ジェイド、モリオン、透輝と『花コン』のメインキャラでも戦いに向いた者達だ。


 そのため準決勝はどうなるか。器用万能なカトレア、防御特化で格闘戦が得意なジェイド、多彩な魔法を操るモリオン、剣術と光属性魔法を操る主人公の透輝。


 観客として戦いを見るのが楽しいメンバーである……が。


(うーん……やっぱり自分で戦えないのがなぁ……)


 見るのも良いが、それよりも戦いたい。戦闘狂のつもりはないし、見るのも本当に悪くないんだが、俺はスポーツを観戦するよりも自分でスポーツをしたい派なのだ。


 それでもうずうずしながら試合を観戦していると、学年不問条件不問部門の準決勝が始まる。


「学年不問! 条件不問! 準決勝第一試合! 貴族科三年のカトレア=リンド=ラビアータ君対貴族科三年のジェイド=ネフライト君の試合を開始する! 両者構えて――試合開始!」


 まずはカトレア先輩とジェイド先輩の試合だ。三年生同士の試合とあって観客達の期待も高い。

 だが、俺としては結果が読める試合でもある。その証拠に、というべきか、開始から三分程度でカトレア先輩が勝利を収めた。


 距離を詰めなければ戦いようがないジェイド先輩と、近距離は剣で、中距離は『砕触剣尾』で、遠距離は魔法で戦えるカトレア先輩では一方的な戦いになってしまうのだ。


 それでもジェイド先輩も攻撃に耐え、何度も接近し、拳が届く距離まで踏み込むことができた。しかし手甲を纏った拳も、当たらなければ意味がない。


 カトレア先輩は下級ながら援護魔法バフも使えるのだ。二回戦と同様に、相性の良し悪しがモロに出た試合となった。ジェイド先輩はカトレア先輩の攻撃に三分耐えた上で敗北したのだ。


(そして次が透輝とモリオンの試合か……)


 準決勝の第一試合はカトレアが勝ち上がった。だが、俺の見立てでは透輝にとってモリオンとの試合こそが()()()()()()()である。透輝とカトレア先輩が戦う場合、相性の関係から透輝の方がかなり有利だからだ。


 モリオンが相手でも、『一の払い』が使える透輝の方が有利――と、思いたいところだが、モリオンが相手となると微妙なところだ。


 透輝が『一の払い』で()()()()()()()()で有利不利が決まる。それだけで勝負が決まるわけではないが、かなり大きいだろう。


(さて、お手並み拝見といこうか……)


 俺はワクワクとした気持ちを抑えつつ、透輝とモリオンの試合に注目するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ