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ハッピーエンドの未来を目指して  作者: 池崎数也
第9章

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第238話:素材集めの依頼 その2

 二月に入り、準備が整ったら先日の依頼通りダンジョンへと出発する。


 今回の参加メンバーは俺、透輝、ナズナ、アレク、スグリ、メリアの六人だ。


 予定通りではあるがメリアが参加するため、火力は十分ということでモリオンは留守番である。年度末も近いし、学園に残って派閥の統制に努めるらしい。


 そして戦闘の補佐役としてアレクにも同行してもらう。無理を承知で頼み込んだ結果、思ったよりもあっさりと承諾してくれたのだ。以前は断られたが、アレクも色々と思うところがあったのかもしれない。


 あとは普段通り、戦闘用の人員として俺と透輝、ナズナというメンバーだ。透輝も以前と比べれば育ってきているし、頼りになるだろう。ただ、ドラゴンの卵を背負ったままのため、外見はちょっと情けないが。


(この面子ならたとえもう一度バリスシアと遭遇しても勝ち目がある……はず……)


 アレクに補助をしてもらって俺が前衛、メリアが後衛から魔法を撃ち、透輝が遊撃でナズナは味方の防御とバランスが良い。まあ、今回はこちらの弱点としてスグリを連れているが、メリアがいるから後方に下げておけば滅多なことにはならないだろう。


 たとえバリスシア以外の『魔王の影』と遭遇しても十分に勝負になるはずだ。さすがに複数現れたら逃げの一手を打つしかないが。


「こうして素材を探しにダンジョンに行く機会があるなんてねぇ……これはこれで楽しみだわぁ」

「同行してもらってすまないな、アレク」

「別に構わないわよ。なにせ友人の頼みだもの」


 馬車の客車でガタゴトと揺られていたらアレクが感慨深そうに呟いたため、俺はすぐに声をかける。


 御者はナズナと透輝が務め、客車では俺とアレクが隣り合って座り、その向かい側にはスグリとメリアが座っていた。メリアは持ち込んだ本を読んでおり、スグリはそんなメリアにどうにか話しかけようとしては失敗している。


「しかし学生に素材の採集を頼むなんてねぇ。()()()()()()()()()()だけど……」


 そう言いつつ、アレクの視線がメリアへと向けられた。アレクならメリアの正体にも気付いているだろうが、その実力や同行する理由までは気付いていない……いや、普通に気付いてそうだな。気付いているけど何も言わないでいてくれるんだろう。


「……ま、アタシが口を出す領分でもないわね。むしろミナトくん? 貴方の方が大丈夫なのかしら? 日に日に雰囲気が険しくなっているし、友人として心配しちゃうわ」

「ははは、少しばかり眠りが浅いだけだよ。心配をかけてすまないね」

「そう……あまり無理はしちゃ駄目よ?」


 笑って誤魔化すが、アレクが相手では通じないだろう。それでもアレクはそれ以上は何も言わず、肩を竦めるだけだ。


 そんなアレクに甘えてしまっているな、なんて思いつつ、俺は意識を切り替える。


 今回の依頼で向かうのは『獣と豊穣の森林』という中規模ダンジョンだ。王都から北東に五十キロ程度と比較的近い場所にあるダンジョンで、下級から中級の素材が入手しやすいらしい。


 名前に獣とつくように、出現するモンスターは主に獣系となる。それでいて木々が生い茂る森林地帯で、見通しが悪いダンジョンになるようだ。


 ダンジョンの広さは十キロ程度。今は崩壊してしまった『飛竜の塒』と似たような規模だが、あちらは山岳地帯でこちらは平地の森林のため、中規模ダンジョンとしてはやや小さめといったところか。


 入手できる素材は種類が多く、本当に色々と入手できるらしい。その分、特定の素材を狙って大量に集めることが難しいようで、定期的にモンスターの間引きを行ってダンジョンが拡大しすぎない程度に管理がされているようだ。


 今回の依頼は国王陛下の認可こそあれど、その下――王城の上層部は通していない。そのためダンジョン傍に作られているであろう兵舎は利用せず、ダンジョンに一番近い場所にある町を利用する予定だった。


 一応、野営のための準備もしてあるが、冬に好んで野外で寝泊りはしたくない。俺一人なら修行の一環と思うんだが。


 とりあえず日曜日の朝に出発し、夕方には町に到着。一晩明かして翌日の朝から素材の収集に励む予定である。


 素材の集まり次第だが最短でも二、三日はかかるだろうか。時間の短縮を狙うなら複数に別れて素材を集めても良いが……その場合、何かあっても対応できるよう二手に別れるぐらいが精々か。


 スグリがいない方は採集の効率も悪いだろうが、なんでもできることで評判のアレクがいるし、現状の実力ではスグリに劣るが錬金術に関しても才能がある透輝もいる。俺? 採集する仲間を守る係だ。


「あ、あの、ミナト様……こ、今回のダンジョン、獣系モンスターが多いって聞きましたけど、その、き、危険だったりは……」


 メリアに話しかけることを諦めたのか、スグリが俺に話を振ってくる。


「危険か危険じゃないかでいえば、ダンジョンはみんな危険さ。でもまあ、出てくるモンスターは中級までだろうし、それならこのメンバーなら余裕を持って対処できるよ」


 スグリは錬金術師だから別として、中級モンスターが相手で厳しいのは透輝ぐらいか。それでも相手によっては普通に勝てるだろう。あとはアレクが補佐役だから厳しいかもしれないが、平気な顔をしながら勝ちそうでもある。


「そ、そうなんですね……あの、その、危なかったら、守って……くださいます、か?」

「……ああ。もちろんさ」


 上目遣いで不安そうに尋ねてくるスグリに対し、俺は薄く微笑んで頷く。ちゃんと笑えているかはわからないが、隣に座るアレクの視線が痛く感じるのは俺の錯覚だろうか。


「…………」


 そして不意に、メリアが無言で本を閉じて立ち上がった。


 一体何をするのかと首を傾げていると、メリアは無言のままで後ろを向く――つまり俺に背中を向け、そのまま俺の膝の上に腰を下ろしてくる。


「……え?」


 俺の膝の上に座るメリアを見て、スグリが目を見開いた。俺を見て、メリアを見て、再度俺を見てくる。


「あらまあ……」


 アレクは口元に手を当てながら小さく声を漏らす。その声にどことなく楽しそうな響きがあったのは気のせいだろうか


「あー……メリア? どうした?」

「…………?」


 俺が声をかけると、肩越しに振り返って不思議そうな顔をされた。『何か問題でも?』と言わんばかりである。いや、大問題だよ。


「座り心地も悪いだろうに……っと、ほら、自分の席に座りなさい」


 俺はメリアの背中と膝裏に手を差し込んで持ち上げると、元々座っていた座席へと下ろす。メリアの行動が謎なのは今に始まったわけではないが、こうして衆目のある場所では初めてかもしれない。


「……むぅ」


 俺が椅子に座らせると、メリアはどことなく不満そうな声を漏らす。そんな顔をしても駄目だからな?


「あ……わわ……え、えっと、その、じゃ、じゃあ、わたしも?」

「落ち着いてくれ、スグリ。異性の膝の上は気軽に座る場所じゃない」


 メリアを見ていたスグリが椅子から立ち上がろうとしたため、すぐにそれを制した。いやもう、本当に勘弁してほしい。平静を装っているけど、キュッと胃が絞られた感じがしたよ。


「あらあら……それじゃあアタシが膝の上に座ろうかしら?」

「……勘弁してくれ、友よ」


 場の空気を壊すためか、からかうようにして俺の膝に手を置いてくるアレクに対し、俺は疲れたように言葉を返すのだった。






 そうやって時折ゴタゴタとしつつ、馬車を進めて目的地へと到着する。


 予定通り近くの町で一泊すると、翌朝には『獣と豊穣の森林』へ足を踏み入れることができた。


(これは……なるほど、たしかに()()だな)


 そしてダンジョンに入ってすぐ、『獣と豊穣の森林』という名前の由来を理解する。


 獣系モンスターが出るのは良いとして、これまでに足を踏み入れたことがあるダンジョンと比べ、木々の生い茂り方がとんでもないのだ。


 通れないほど木々が生えているわけではない。場所によってはまばらだし、穴が開くようにぽっかりと空き地みたいなスペースが存在する場所もある。


 だが、基本的に木が多い。長物どころか剣でさえ振りにくいほど、木が密集している場所がある。気を付けないと刃先が食い込むか、腕をぶつけるか、柄頭をぶつけるか。


 その割に視界が暗いというわけではなく、夕方や悪天候でない限り視界の確保に困るということはなさそうだった。


(ゲームのメタ的な読みだと、これだけ木々が密集しているってことは火属性の魔法を使うモンスターは出ないかな? 出てくる獣系モンスターも小型が主で、デカブツは移動できないから出てこないんじゃないか?)


 思わずそんなことを考えてしまう。


 他に問題があるとすれば、ダンジョンの奥に足を踏み入れると方角が分からなくなる危険性があるってところか。太陽の位置からおおよその方角を割り出すことができるが、周囲を木々に囲まれると自分がどこから来たかわからなくなりそうだ。


「こんなに木がたくさん生えたダンジョンもあるんだな……あれ? なあ、ミナト。こういう時って剣が振りにくいと思うんだけど、どうやって対処するんだ?」


 どうやら透輝も剣士としての意識が根付いてきたらしい。地形から剣の扱いに支障が出るのでは、という疑問をぶつけてくる。


「周りの状況によるが、振り下ろしか突きの二択だな。できるのなら強引に木ごと斬るってのもアリだが……」


 俺は『二の太刀』を使えば木と一緒にモンスターを斬れるが、透輝の場合は難しいだろう。『鋭業廻器』の切れ味があれば技がなくとも不可能ではないのだろうが。


「いや……モンスターを木と一緒に斬るのは無理だろ……」


 俺はそう思ったが、透輝は無理だと判断したらしい。真顔になって首を横に振っている。


「無理だと思った瞬間に無理になるんだぞ?」

「そりゃそうだけどさ……見てくれよ、この木。めっちゃ太いぞ。剣で斬れるか?」

「斬れる。なんなら数本まとめて斬れる」


 『二の太刀』で無理でも『閃刃』なら斬れる。実際に斬ったわけではないが、それが可能だと俺は確信している。


「剣士として成長していけばいつか斬れるようになるさ。ま、今のところはこういう場所での戦い方をしっかり学ぶんだな」


 足場が悪い場所で剣を振らせたり、悪天候の中で剣を振らせたり、視界が利かない夜間に剣を振らせたりと、様々な状況でも問題なく剣を振れるよう透輝を鍛えてきた。

 だが、今回のように木々が生い茂る場所で戦うというのは初めての経験である。俺は大規模ダンジョンで似たような経験こそあるが、ここまで木々が密集した場所はさすがに初めてだ。良い訓練になるだろう。


「俺と透輝が前に立つ。真ん中にアレクとスグリ、後ろはナズナとメリアだ。普段より視界が遮られるからモンスターの不意打ちに注意しろ。聞き耳はしっかりと立てて聞き漏らすな。スグリは素材を見つけても駆け出すなよ? まずは周囲との情報共有だ。いいな?」


 そう指示を出し、宣言通り俺は前に立って歩き出す。とりあえず素材の採集が目的のため、方向を見失わない程度に歩き回れば良いだろう。そうすればスグリが素材を見つけてくれるはずだ。


 こうして、『獣と豊穣の森林』での素材採集が始まったのだった。

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― 新着の感想 ―
自分も、ミナトがハーレム形成しないとヒロイン達が救われないんじゃ無いかと思うなぁ… そうしないと、激重感情抱えたヤンデレヒロインが増産されていく未来が幻視出来る気ガガガ(汗 うん、やっぱりハーレムだ。…
やはりこの作品の本当のタイトルは「ハーレムエンドの未来を目指して」なのではないだろうか? ボブは訝しんだ
もうカリンとナズナとメリアとスグリ娶ろうぜ
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