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20話 《これからが始まり》


為事デビューを見事に成功させたのにねぎらいの言葉が一言もなくてシュヴァルツ様への恨みが募るばかりの元女子高校生の私、鳴神薫はその後の展開にワクワクしていた。


「アーサー、お前から王位継承権を剥奪する」


「そんな!父上!」


結局卒業パーティはアーサー王子の王位継承権の剥奪で幕を閉じた。


その後のパーティは当事者側からすれば散々なものだった。まあ傍観者から見れば面白いものだったけどね。


まず私がフェードアウトしてから宰相がアーサー王子とリリィちゃんの拘束を命じてそれに王子が反発すると宰相の長ーいお説教が始まった。


「あなたは王にふさわしくありません!勿論そこの小娘も王妃にふさわしくない!あなた方はこの国の恥です!」


そこから王とは何か、王妃となる女性の器について、いかに公爵令嬢が身を粉にして王子とリリィちゃんのために尽力したのか、そしてそれを無碍にした二人の愚かさについて延々と正論をぶつける宰相だった。アーサー王子とリリィちゃんは顔面蒼白で聞いていたけど。


「アーサー、今日ほど貴方を生んだことを恥じた日はありません」


「もう貴様にこの国は任せられん!」


そして王様と王妃も正気に戻り二人を叱咤、特に王様は大激怒でその場でアーサー王子の皇太子を剥奪し、弟を次の王とすると宣言してしまった。アーサー王子にとってはまさに絶頂からの転落だった。


「アーサー、お前は今後自室謹慎とする。そこの小娘は牢獄へと放り投げておけ!」


「父上!」


「衛兵よ!とっとと連れていけ!これ以上この国に恥をかかせるでない!」


その宣言に取り乱すアーサー王子とリリィちゃんは王の命により兵士に捕らえられパーティ会場から追放された。特にリリィちゃんの取り乱し方が印象に残った。


「こんなのゲームのイベントになかった!どういうことなの!?私は王妃になって贅沢三昧出来るはずだったのにぃ!」


リリィちゃんの発言から私はやっぱりと確信した。この世界は乙女ゲームの舞台となった世界のようで、リリィちゃんはこの世界を乙女ゲームの世界そのものだと思っていたんだろう。そして乙女ゲームの通りになると勘違いして色々としていたのだろう。実際私たちがいなければ本当に彼女が王妃となってゲームクリアしたはずだし。


「帰るぞ」


「はい…ん?」


シュヴァルツ様の声に返事をし、上に空いた大穴に向かって吸い込まれる途中で私はすっかり忘れていた疑問を思い出した。


「どうした?」


「いや、王子と公爵令嬢の結婚させるのが私たちの為事の目的ですよね?それなのにアーサー王子は王子じゃなくなって婚約も破棄されちゃったんですけどいいんですか?」


婚約破棄を阻止しに来たのに逆に婚約破棄をする流れに持って行っちゃったけど大丈夫なんですかこれ。


「別に公爵令嬢と結婚するのはアーサー王子でなくてもいい」


シュヴァルツ様の返答に私は納得した。ああ、アーサー王子じゃない王子に公爵令嬢を婚約させればいいのか。


「確かに弟と公爵令嬢が結婚すれば王子と公爵令嬢が結婚するという世界の流れになりますね」


「ああ、そしてこの場所で起きた出来事で及ぼされる結果を理解してようやく及第点だ」


「及ぼされる結果?王子が馬鹿やらかしたことが周知される以外にですか?」


他の結果…私という隣国の公爵令嬢が出しゃばったことに対する反応とか?いや、私たち直接的行動で世界の流れが変わるようなミスをシュヴァルツ様がするはずない。


「公爵令嬢の器が周知されたことだ。これで彼女がこれからの国を背負っていく際に生じる女性への偏見という課題がクリアされた。元々の世界の流れでも不甲斐ない王子を支える王妃となったのだが王妃が政治介入するのを良しとしない派閥が大多数だった。しかし今回の出来事でそんな派閥は超少数派になり足を引っ張るための存在でしかなくなる。王妃となる期間が延長されたことを踏まえると世界の流れへの影響はプラスマイナスゼロだ」


シュヴァルツ様の説明に世界の流れってそんな細かく考えないといけないのかとちょっと感心する。


「はへ~、そこまで考えてるんですね」


「この世界は簡単だ。お前が失敗してもフォローが聞く程度にはな。もっと難解な世界がありそんな世界では神の間接介入では流れの修正が滞っている」


「そのための私、ってことですよね!」


私は自信満々に胸を張る。だってこれで晴れて私は為事代行者ってことですもんね!


「ああ、だがそんな難解な世界に飛び込むのはもう少し先だ」


だがシュヴァルツ様の返答は私の想像の下だった。


「私がまだまだ未熟だからとかですか!?」


「いや、それもあるが最大の理由は別にある」


「それもあるって結局私の事をけなしてるじゃないですか!」


まあシュヴァルツ様がいないとほとんど何もできないとは自覚してますけど口にはしてほしくない私だった。


「落ち着け、理由はお前たちをため事代行者にする計画を長期化したためだ。そのため数年間ほど為事代行は簡単なものにして、修行を重点にしていくことにした」


「え、なんで…あーあの子たちですか」


私は上の世界に置いてきた4人の元気な子供たちを思い出す。確かにあの子たちを為事代行者にするには私以上に手間がかかりますね。それなら私も納得です。


「そうだ、お前以外長期化せざるを得ないのだったらいっそお前も長期化計画に組み込むことにした」


「でも長期化なんて大丈夫なんですか?成果を早く上げないといけないとかはないんですか?」


「10年単位で長期化することくらい織り込み済みだ。それに成果を早く上げる為事代行者育成計画をする神々もいる」


ああ、10年単位で長期化しても問題ないって言葉で神様に時間の概念が通じないって理解した。


てかやっぱりシュヴァルツ様以外にもそういうことをする神様がいるんですね。


「さてと、そろそろ子どもたちの元へ帰るぞ」


ここでタイミングよく大穴から神の世界に到着した。私は早速自分の部屋の扉を出現させて扉を開けた。


「はい、ただい…」


「「おかえりー!」」


「おかえりなさい」


「…お、おかえり」


「ほぎゃー!?」


私がただいまの言葉を言う前に4人の子供たちが私に向かってタックルしてきた。腹部に襲ってきたあまりの衝撃に私はぶっ倒れてしまう。


「なんだこれは?」


「4人で鳴神さんが帰ってきた時に一斉に抱き着こうと企てていたみたいです」


「だいじょーぶか?」


「はやくあそんで!」


「りょうり、てつだいます」


「ぎゅっと、してください」


私の腹の上に乗りながらそれぞれの主張をしてくる子供達。ああ、ここが私の新しく帰ってくる場所なんだと実感する。


「鳴神、生きてるか?」


「…生きてまーす」


シュヴァルツ様の心配しているのかしていないのか分からない無粋な言葉に手を振りながら返事をする私だった。


こんな感じで私は元女子高校生から為事代行者となる道を歩み始めたのだった。


第一章 完

活動報告にも書きましたが一旦これで神様と学ぶ! 異世界を守るお為事講座は完結とさせていただきます。


また執筆意欲が戻れば書きたいと考えております。

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