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恋敵は前世の孫  作者: 霧聖羅
2.5章 アスタールと祖父の夢
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蘭の見る夢 ~三人の子供達~

 四霊のいとし子として生まれた三人目の子――ラヴィーナと名付けた――は、結局、管理者から只人になった。

少し、魔力が只人達から逸脱してはいるし、四霊との繋がりが完全に断たれたわけではないのだが、管理者でも代行者でもないという、なんとも中途半端な存在だ。


 そして三人目を失敗した時点で、私は後継者を自分の子供に求めるのを諦めた。

また、第二のラヴィーナを作りたくはない。

……と、思えるだけの理性がその時はまだ残っていたのかな。

死ぬ直前には、全部滅んでしまえばいいなんて思ってたんだから。


 ラヴィーナは、生まれた瞬間から既に後継者になりえない事が分かっていたから、最初の子(フーガ)二番目の子(ソル)とは扱いが違くなる。

……回りくどい言い方だと通じないか。

ラヴィーナの事は他の二人の子と違って普通に接していたから、上の子達の表情からはそれに対する不満が見え隠れしていた。

何せ、フーガは当時11歳でソルは6歳だ。

フーガはもとより、ソルにだって扱いに差があるなんてことはもうきちんと分かる年齢になっていた。


 その頃、フーガは思春期に入ろうとしていたし、もう手元から離して6年も経っている。

おそらく手元に戻したいと言ったところで無駄だろうと思いながらも、念のため養い親にも尋ねてみたが、彼等のところに産まれた娘をとても可愛がっており、娘の方も彼になついているから、今更手元に戻すのも良くなさそうだと言う結果になり諦めた。


 ソルの方はまだ預けてから日が浅いこともあり、私の手元に戻すのは問題がなさそうだったが、養い親達が彼を手放したがらない。

最終的に、ソルとラヴィーナの二人を育てる手助けをしてもらう事にする。

実際、私の精神が不安定な時に子供たちを守ってくれる人間は必要だったから、彼らが手伝ってくれるというのは有難かった。


 彼らの協力のお陰で、下の子二人にとっての私は『それなりに良い父親』として認識されていたらしい。

取り敢えずは、上の子のもとに双子が授かるまでの間は。


 上の子(フーガ)が30になる頃。

養い親の娘と結婚した。

その20年後には末娘(ラヴィーナ)が、南の果てからやってきたなんだか大言壮語を撒き散らす迷惑な小僧と婚姻を結び、更にその50年後に真ん中の子(ソル)がフーガと同様に養い親の娘と結ばれる。


 結婚自体はフーガが最初だったが、子を生したのはラヴィーナの方が早かったのは、相手が魔力に乏しい丸耳族だったからだろうか?

彼女が嫁いだのは遠く離れた地で、出産したのを知ったのは子供がある程度大きくなってからの事だった。

その子を連れて娘が帰郷してきたのは、孫が10を数えた頃。

幸いなことにその孫には適性がなく、私は胸をなでおろす。

適性があったとしても、10にもなってしまっているのでは、教育が間に合わない。


 フーガの結婚100年記念で、また、孫が出来る事を知らされた。

その頃、彼との間には親子と言うのには遠いものの、上司と部下と言う関係性は築けていたからその事を教えてくれたのだろう。

私は、彼の妻が子を産む時を指折り数えて待ち望んだ。



――子で無理なら、孫に可能性があるかもしれない。



 実際、ラヴィーナの子は、伴侶が魔力に乏しかったのにも関わらず、その魔力は人としての域を大きく超えていた。

フーガは、私の血を引いているのにも関わらず、その魔力は人並みだ。

その伴侶も然り。

だからこそ、逆に隔世遺伝として私の魔力を継いだ子が産まれるのではないかと――そう期待した。


 そして私は、産まれたばかりの双子をその両親から引き離す。

息子達が双子の姿を見たのは、3年後の事だった。

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