上陸 一
七月二十一日、第五艦隊は月にある艦隊の母港プラトン基地に入港した。巨大なクレーターの中に造られたこの基地は、国連宇宙軍月方面艦隊の司令部が置かれている。
基地は上空から見れば地上五階建て程度の建築物や管制塔がクレーターの内側に散り散りに建っているようにしか見えない。それは基地の殆どの機能が地下に収められているからである。第五艦隊の艦艇は半地下型の艦艇収容施設に入れられた。
第五艦隊に所属している第六航空団の稼働可能な航空機は入港前に港とは別の場所にある基地内の飛行場に収容されていた。
コレー大尉の攻撃艇は損傷していたので、空母モハーヴェイと入港することになった。第五艦隊の殆どの艦艇はドック入りし直ちに修復作業が始まった。特に損傷の酷い戦艦アリアンは修復に半年はかかる予想となった。他のドック入りした艦艇も短いもので二週間を必要とした。
入港してから一週間後、第五艦隊の乗員達に六日間の上陸許可が下りた。地球に帰る者、基地に残る者、つかの間の休息の過ごし方は人それぞれだったが、コレー大尉は基地に残る側の人間だった。彼は基地内の廊下で荷物をまとめて地球行きの船に向かう途中のパイロット達にどうして地球に帰らないのかと何度も聞かれていた。
「地球の重力がキツいんでね。六日間で無駄な体力は使いたくないんだ」
コレー大尉はそう言って地球に帰る同僚を見送った。その後彼は周りに誰もいないことを確認するとこっそりとタバコに火をつけた。
プラトン基地内部の居住区は昼と夜が無いだけで、地球とそう変わらない生活を送ることができた。当然ながら医療も充実しており負傷者は艦内とは比べものにならない手厚い看護を受けていた。
コレー大尉は居住区に向かう途中で再びあの衛生員と遭遇した。
「またあんたか、看護婦さん」
「エレット伍長です!まだ基地に残ってたんですか?」
「地球の重力が嫌なんでね、リハビリも面倒くさいしな。あんたは帰らないのか?」
「あんなに負傷者がいるのに帰れるわけないじゃないですか。手が空いてるなら手伝ってもらえますか」
「俺は休暇で忙しいんでね、充実した六日間にしなきゃならないからな」
「喫煙は決められた場所でお願いしますよ」
「分かってるよ!」
彼はそう言うとそそくさとその場を後にした。
「生真面目な奴は軍隊に合わねえよなあ」
コレー大尉の充実した休暇は彼女の存在により危ぶまれる恐れが出てきた。この区画にはなるべく近づかないよう彼は心に決めた。