文明 五
オルグレン二等軍曹達が市街地を出発してからおよそ二時間、列車は目的地である鉱区に到着した。列車が停車したターミナルからは採掘現場を見ることができた。既に日は沈み、あたりは暗くなっていたが採掘現場はいくつもの巨大な照明に照らされ、やや黄色ががった白い光を放っていた。
現在オルグレン班がいる四番鉱区はヘタマイトを主に産出していた。しかし掘り出されていたのはそれだけではなかった。
「奴の話は本当だったか」
採掘現場を見たオルグレン二等軍曹は言った。ヒューリーやモンテ伍長はこっそりとその風景を撮影していた。
「なんだお前らあれを見るのは初めてだったか?まあ無理もねえな、あんなのが見つかったのはほんの数年前からだからな」
運転手の言う「あれ」は露天掘りの穴の底に埋まっていた。その巨大な金属の塊は火星上空に浮いてるものと同じ物体、つまり宇宙戦闘艦である。ここ最近で掘り起こされたばかりのものであると思われるが、何年もの時が経過しているとは思えない不気味な光沢を出していた。
「数年前ここいらがまだ平らだった時、強烈な金属反応が出たんだ。最初はでかい鉱脈が見つかったってみんな大喜びだったが強力な反応の割には出てくる鉱物は少なかった。諦めず下へ下へと掘り進めて言ったらああいうモンが大量に見つかったってワケさ」
モリソン船長の証言の通り、反乱軍の宇宙船や国連軍を凌駕する先進技術は地中から産まれていた。これらの発掘物は全て反乱軍によって接収され、レストア若しくはリバースエンジニアリングによって反乱軍艦隊の戦力として使用されていた。
「しかも見つかったのはここだけじゃねえ、あちこちの鉱区で大量の船が見つかってる。驚きだよなあ、こんなところにこんなでかい船を埋めたのは一体何者なんだろうな。本当なら世紀の大発見なんだろうが、軍は戦争の方が大事らしい」
「そうらしいな、近くへは行けるのか?」
「ムリだな、現場周辺は軍の監視下に置かれてて労働者の他に武装した兵隊がわんさかいる。特にお前達みたいな海賊野郎は門前払いだろうな」
「やはりか・・・」
「命が惜しけりゃあの近くへは寄るなよ、商売相手ならあそこ以外にもこの鉱区にはいると思うぜ」
「忠告ありがとう。ところで帰りの列車にも乗せてもらいたいのだが」
「お安い御用だ、ただし帰りはシティに持っていく積荷と相席になってもらうがな。四時間後に出る、忘れるな!四時間後だぞ!」
彼女達はターミナルを出ると偵察活動を開始した。
第四鉱区には露天掘りの穴が十キロ四方に渡って点在しておりその穴の周りには労働者の居住施設や軍事施設が立ち並んでいた。
特に彼女達は発掘現場と軍事施設を重点に偵察を行った。
「反乱軍は陸上戦力も充実してるようですね軍曹」
遠く離れた反乱軍キャンプを見ながらモンテ伍長が言った。
「予想以上だ。ここからでは確認できることは限られているが恐らく一個連隊規模だ。反乱軍は艦艇戦力だけでなく陸上部隊も高度に組織化されている。それも正規軍並みにな、恐らく他の鉱区にも同等の規模の部隊が駐屯している」
「反乱軍はなんだってこんなに陸上戦力を揃えたんですかね?」
「国連軍の植民地上陸に備えての戦力なのだろうが、国連軍にそこまで大規模な行動を行える力は今は無い。反乱軍もそのことはわかっているハズなのに・・・」
その時オルグレン二等軍曹の話を遮るように甲高いエンジン音が夜空に響きはじめた。ヒューリーは真っ先に音の正体を発見し空へ向けて指をさした。
彼が指差した先には反乱軍のものと思われる飛行中の輸送艇があった。
「揚陸艇だ!まさか完成させていたとは」
「軍曹!ありゃ一体!?」
モンテ伍長が驚きを露わにした。
「植民地時代に国連軍が開発中だった兵員輸送艇だ。実用化に後十年はかかると言われていたのに!」
計八機の揚陸艇が彼女達の上空を通過し反乱軍の四番鉱区キャンプへ真っ直ぐ向かっていた。
「あんな低速で安定した飛行ができるとはな」
「あれにも穴から掘り起こした技術が・・」
「恐らく使用されているだろう」
この揚陸艇は四基の推進基で飛行し約一個小隊の人員を乗せて大気圏外からの地上への侵入が可能で、さらに機関砲とロケット弾発射器を装備しある程度の戦闘もこなす高性能輸送艇である。
技術的問題で開発は難航していたが反乱軍は発掘兵器の技術を応用して実用化を達成していた。
反乱軍の本格的な陸上戦力と実戦配備された揚陸艇を見てオルグレン二等軍曹はある結論に辿り着いた。
「上陸するつもりだ」
「上陸?」
「そうだモンテ、いずれ起こるやもしれないと言われていた反乱軍の上陸作戦だ。反乱軍は地球へ侵攻を始めるぞ」
「一体それはいつ・・?」
「わからない。が、そんな先の話ではないと思う。軌道上にもあれだけの艦艇が揃っているんだ。数はもう揃っているだろう。しかし確証に至る情報はまだ少ない!引き続きこの鉱区で情報収集を行うぞ」
オルグレン班は更に情報を収集するために、労働者居住区へ進入することにした




