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Martians to Invade  作者: シュンキチ
転属
22/54

転属 一

 二一三〇年二月一日、ヒューリーは地球にある下士官教導隊での下士官候補生過程を無事修了して伍長へと昇進し、職業軍人となった。

 退院後すぐに教導隊に入隊したヒューリーだったが無重力に慣れ、しかもついこの間までベッドの上にいた彼にとって重力下での訓練を受けるのは地獄のような苦しみだった。しかし無重力の生活に慣れてしまったのはヒューリーに限らずほぼ全ての訓練生が同じだった。

 訓練の最初の一ヶ月間は身体が忘れた重力に慣れるためにランニング、筋力トレーニングなどの体力調整。その一ヶ月が終わると、下士官として必要な技能を習得するための本格的な訓練が始まる。砲雷術、通信、観測、船務など様々な知識が約二ヶ月間で訓練生達の頭に叩き込まれた。そのどれもがヒューリーが入隊時に受けた訓練よりもレベルが高いもので、頭と身体両方を消耗する厳しいものだった。

 本来であればこの訓練は四ヶ月かけて行われるものだったが。反乱軍との戦闘が始まって以来、即急に兵員を補充するために訓練期間が短縮されていた。

 彼ら訓練生計二五〇名は三ヶ月間の教育を無事修了し、二月一日付で全員が伍長へと昇進した。部隊は違えど三ヶ月苦労を共にした同期との別れを惜しむ間も無く翌日には全員が原隊へ復帰する事になる。ヒューリーも明日には第五艦隊勤務へと復帰するのだ。

 訓練修了式を終え内務班の部屋へと戻ったヒューリーは荷物をまとめていた。


「ヒューリー、原隊に戻ったら頼むぜ」


 彼に話しかけたのは同じ内務で同期のレアンドロ・デル・モンテ伍長だ。年齢は二十三歳でヒューリーよりも歳は下であったが彼はヒューリーに対してやけに馴れ馴れしかった。ヒューリーは最初こそモンテ伍長を煙たがっていたが、歳下ばかりの訓練生同期の中で唯一まともに話しかけてくれる彼に少しづつ心を開いていた。

 モンテ伍長の原隊はヒューリーと同じ第五艦隊で巡洋艦インテグラルで勤務していたが、インテグラルは七月の戦闘で大破し廃艦となってしまったので急遽ヒューリーと同じ空母バイコヌールへ配属予定となっていた。


「いやあ夢みたいだな俺が下士官だなんて!新兵の時は班長に『お前みたいなヤツには下士官など無理だ』なんて言われてたけど、とうとうなってやったぜ」


 モンテ伍長も同じく昇進試験免除の強制入隊だった。しかし彼の場合は元々下士官への道を考えていたらしく、除隊したかったヒューリーとは違い強制入隊は彼にとっては幸運だったのだ。


「なあヒューリー、せっかく同じ艦での勤務になることだしお前の艦での生活について俺に教えてくれよ」


 下士官候補生の技能訓練では常にモンテ伍長に負けていたヒューリー伍長もこの時だけは得意げにバイコヌールについての話をモンテ伍長にしてやった。最初は普段の艦上勤務についての真面目な話だったが、やがて嫌いな上官の話になりヒューリーが面白おかしく上官の話をするので二人とも荷物をまとめる手が止まり笑いながら話に夢中になっていた。


「モンテ伍長とヒューリー伍長はいるか!」


 その時部屋に内務班長の軍曹がやってきた。訓練生にとっては一番身近な教導隊の教官だった。地球での勤務が長いためその身体は鍛え抜かれた大きな筋肉で覆われていた。

 談笑していたのを怒られるかと思っていたがそうではなかった。


「貴様ら二人は今すぐ隊長室へ前進しろ。教導隊長がお呼びだ」


 そう言うと軍曹は部屋を出ていった。


「俺たちが上官の悪口いったのがばれたのかな」


 モンテ伍長は冗談を言いながら制服を着直し、ヒューリー伍長も自分が何をやらかしたのかを思い出そうとしながら服装を整えた。廊下が騒がしいので二人が様子を見ると他にも何人かの訓練生が廊下に出ていた。


「どうやらお呼びがかかったのは俺たちだけじゃないようだなヒューリー」


 二人は他の訓練生と共に教導隊長のいる営舎へ向かった

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