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ハロウィンといたずら

時系列は付き合っている状態で高校生の二人です。

短め、オチとかないです。

 副会長の家に遊びに行った。まず人型ペンネが一番にお出迎えしてくれた。

 最近は私にペンネのサブマスターの権限を与えてもらい、私の許可があればペンネの記憶や人型への変化が自由になった。ペンネが勝手に、私の家へ遊びに来ることが多くなったからだ。

 ペンネは主に屋根を伝って窓からやってくるので、私と部屋で過ごしてる様子や、たまに遭遇する着替えシーンを副会長が見ることのないように、私の権限でペンネが消せるようになったのだ。ペンネは自由に人型になる許可をくれる私の部屋に入り浸って遊ぶのが好きらしい。

 帰ってきたら自分の部屋で、副会長似の猫耳少年が私のベッドを占領して寝ていた時の私の衝撃は計り知れなかった。とりあえず写メとった。

 リビングに上げてもらいお茶を出してもらったところで私が口を開こうとしたのだが、先に言葉を出したのは副会長だった。


「トリック・オア・トリート」

「あれ?斎先輩が先に言っちゃうんですか!?」

「美耶子がそんな顔で何か切り出そうとしてるんだ。時期的にハロウィンしか考えられない」

「斎先輩がそれを言ってくれるなら、ぜひクローゼットの奥に眠っている神父服を着てお願いします!」

「お前が一緒に小悪魔着るなら着てもいい」

「あれは演劇部のものなので、私はもってないですよ」

「じゃあだめだな」


 私が期待に満ちた眼差しを向けるも、副会長にさくっと却下された。

 そんな私を眺めつつ、副会長がもう一度トリック・オア・トリートを繰り返す。


「じゃあせっかくなので、これ被って言ってください」


 そのまま流れるような行動でささっと被せてしまおうと思ったのだが、被せる直前で両手をがしっと掴まれた。

 私の手には副会長にかぶせようとしたニットの黒い帽子が握られている。三角二つがとても印象的な可愛い帽子だ。


「……猫耳の帽子?」

「はい。人型ペンネとお揃いな感じで!見たいです!!」


 ペンネがとなりで「にゃー」の口で耳をぴこぴこさせている。


「この為だけに買ったのか、これ」

「そうですけど、普通に私が普段使いにするつもりですよ。可愛いですし」


 私が帽子を目の前でふりふりすると、私から帽子を受け取った副会長が、そのまま帽子を被ってくれた。


 猫耳が!!猫耳副会長と猫耳人型ペンネがいる!!しかもうまい具合に白と黒になってる!私今、大小の猫耳副会長に囲まれてるっ!!至福!


「……さすがに『にゃー』とかは言わないからな」


 ほぼ言ったようなものです。


「ありがとうございますハロウィン―――っ!!」

「もうこの流れでいたずらしてやろうか」


 副会長がちょっと意地悪そうな表情で、私の方に身を乗り出すように寄せた。

 どうしよう、ちょっとときめいてしまった。けれど素直にもってきていたお菓子を差し出す。


「はい、どうぞ。かぼちゃ型のかぼちゃクッキーです」


 昨日から準備して作ってきたクッキーを取り出して渡す。

 目の前にずいっと差し出されたクッキーを見て、副会長が残念と言わんばかりの表情をした。


「いたずらしそこなったな」

「ちなみにいたずらは何を考えていたのですか?」

「一緒に写メとろうかと思ってたな」


 どこからともなく取り出した携帯を目の前で振られて、私は真っ青になる。


「私が写真写り悪いのよくわかってるのにあえて写メろうと!?以前送ったやつですら消していただきたいくらいなのに!!」

「まぁいたずらだからな。それに俺も美耶子の可愛い写真の一枚くらい欲しいんだが……。それについてどう思う、美耶子?」


 ちょっと残念そうな顔で言われた。申し訳ない気持ちと照れくさい気持ちと恥ずかしい気持ちとで、体温が上昇するのがわかる。


「に、にゃぁー……」


 コメントに困ったので、とりあえずそんなことを言って返事を濁しながら俯いた。

 いや、だって私だって一緒に写真とか撮りたいけど、だってただでさえ写真写り悪いのに、写真写りがすごくいい副会長と一緒に写真なんて、絶対私の残念さが際立つだけだ。

 私がうぅーと唸っていると、副会長が私をつんつんとつついて呼んだ。


「なんですか?」

「いや、本命のいたずらが終了したから」


 そう言ってくるりと手に持ったままだった携帯を私に見せると、動画が再生された。

 動画の中で「にゃー」と言いながら猫耳帽子をかぶって真っ赤になっている私がいた。


「いやあぁ!!消して!お願いですから消してくださいっ!!」

「絶対に嫌だ。かなりいい感じにとれてるぞ。とりあえず動画ならそんなに映り悪くないことが分かった」

「お願いですからほんとに消して―――!」


 その後副会長の携帯を奪い合う攻防が始まった。


 その様子をテーブルの上においていた私の携帯で、ペンネが撮影して待ち受けに設定されていた。

 子供の様な表情で携帯を上に持ち上げる副会長と、副会長にしがみついて携帯を奪おうとしているなかなか必死な私が映っていて、恋人らしさは欠片もないが、とても仲の良さが伝わる楽しそうな一枚だった。


 ペンネの仕込んだいたずらが、本日一番のインパクトだった。


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