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最終回 最強の人間(俺)と最弱の神様(私)が手を組んだら……

最強の人間(俺)と最弱の神様(私)が手を組んだら……


ここまで何人の死体を作っただろう。

五千辺りで数えるのをやめた俺には知る由もない質問を俺は自問していた。

「……京子」

俺はポツリと呟いた。

俺の目の前でゼウスを守ろうとして心臓を突かれ死んでしまった女の子。

俺は何もできなかった。

あいつは守った。俺が守れなかったものを。

「お前はホントは強かったんだな」

その声は強くなった雨の音にかき消されよく聞こえない。

体が冷え切っている。

雨のせいか、それとも殺害をしてきたからか分からない。

心が悲鳴を上げる。

殺害をしてきたからか、目の前で大切なものを亡くしたからか分からない。

ただ分かるのは

「オーディン、貴様だけは許さねぇ」

俺の中にどす黒い思いが満ちていくのが分かる。

俺はオーディンがいるであろう城の門を蹴り破り中に入る。

中は暖かった。

だが、俺の体は冷えたままだった。一向に暖かくならない。

俺は何も話さずただ目的のために歩いた。

「どこだ。オーディン」

誰の返事もない。

エリーの返事も。

京子の返事も……。

俺が歩いているとドアを通り過ぎたあたりで槍が俺の目の前を通過した。

「ここじゃよ。最強の人間とやら」

オーディンの顔がニヤついている。俺を驚かせられたのが嬉しかったのだろう。

「……」

それを俺は静かに見た。

次の瞬間怒りが俺を操作する。

オーディンの部屋に入ると体が重く感じる。

「この部屋は我以外通常の重力の十倍の重力を感じるようになっておる。どうじゃ? 体が重いだろう?」

そういうことか。だから体が重くなったわけか。

「……られるかよ」

「ん? なんじゃ?」

「こんなもので俺が止められるかよ!」

俺は止めていた歩みを再び進めた。

一歩歩くごとに木の床に足型の穴ができる。

だが、俺はそんなのお構いなしに歩く。

「う、嘘じゃ! こんな状態で歩けるわけが――」

「お前の呪縛に俺は負けねぇ。重力がなんだ! 神様がなんだ! 俺を止めたいなら自力でやってみろ!」

俺の歩みは歩きから走りへと変わる。

「じゃが、この状況で本当にお主は我に勝てると思っておったのか?」

オーディンは何かを唱える。

思い出したぞ。オーディンは死と戦争の神だが知識のために自分を犠牲にしたりする『魔術師』だった。

「飛べ、我のために」

光の槍みたいのがオーディンの背に数本出来上がる。

オーディンが人差し指で俺を指すと背にある槍が俺に向かって飛んでくる。

「グハッ」

槍は俺に全弾命中した。

「なぜ避けなかった?」

「避ける必要がない。こんな攻撃は俺にとっちゃなんでもない」

オーディンは笑う。

「そうか! ならもっと喰らうがいい!」

オーディンの背中からさっきはと比べ物にならない量の槍が飛んでくる。

俺はそれを避けようともせず全弾を受ける。

「クッ……」

俺は一瞬立ち止まるが再び歩き出す。

「まだか。じゃが、これでおしまいじゃ。グングニル!」

オーディンの手に見覚えのある槍が収まる。

「狙うはあの少女と同じ心臓じゃ」

こいつ、あの現場を知っているのか? いや待て、あの時の槍はこの槍じゃなかったか?

ってことは、こいつは元々京子を殺すためにあの人間をゼウスの城にこさせたのか!

「オーディン! 貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

俺が叫ぶと同時にオーディンはグングニルを投げていた。

もう俺に槍を避ける力は残っていない。

オーディンはニヤつく。勝ち誇っているのだろう。

クソッ! なんで俺は何もできないんだよ! なんで、なんでだよ!

そこで俺の体は立っていることができなくなりグングニルが当たる寸前で倒れグングニルは俺の心臓ではなく右の胸に貫通した。

「ふん、外したか。じゃが、お主はもうダメじゃな。あとは番犬にでもやらせるか」

そう言ってオーディンが振り返ると部屋の重力は元に戻り体が軽くなる。

だが、俺にもう立つ力、戦う力は残ってない。

床が赤く染まる。

その赤は京子の血によく似て俺は京子の死に際の言葉が脳裏を横切った。

「行きなさい。神谷信五。これは神様の命令です」

京子、俺はここまで来たよ。だけど、あとちょっとで手が届かなかった。

俺は最強なんかじゃなかったんだ。

「信五? まさかそんなところで寝ているわけないわよね?」

壁から破壊音と共にエリーの声が聞こえた。

「お、前。なんで」

俺は首だけを動かしてエリーを見る。

「私だけじゃないわ」

破壊音が複数聞こえる。

俺は最後の力を振り絞り起き上がる。

そこには見覚えのある人たちがいた。

「ランスロット、レリアール。サミラ。サタン。ジークフリートまで。なんでお前らこんなところにいるんだよ」

俺は息を荒くしながらも問う。

「私たちは信五さんがピンチになったら助けると約束しました。それが今だということですよ」

レリアールが言う。

「ライバルが死ぬのは私のしょうに合わないからなぁ」

サミラが顔を赤くして言う。

「お前は俺に勝ったんだ。こんなところで負けられては困るんだよ。助けに来たんじゃねぇ。隙を狙ってお前を殺しにきたんだ」

ニヤつきながら言うサタン。

「私は元々お前がこうなることを知っていたんだ。結末を変えられるだけの力があるのかどうか見に来ただけだ」

腕を組みながら胸を張るジークフリート。

な、なんだよ。お前ら。勝手なことばかりしやがって。

「俺はいつからこんな過保護な家族ができたんだ?」

俺は冗談じみたことを言って自分を元気に見せる。

「それだけじゃないわ」

エリーは天井を指差す。

俺はそれに釣られ天井を見上げるとガラスの天井に何かが近づいていた。

「あ、れは?」

パリンっとガラスを割り何か現れた。

「信五さん!」

それは翼が生えた京子だった。

京子は両手を広げ俺の元に落ちてくる。

俺も両手を広げいつの間にか京子を受け取る準備をしていた。

「なんでお前こんなところにいるんだよ」

京子を俺の方に抱き寄せて聞く。

「ゼウスさんが自分が生きるよりお前が生きろって自害したんです。そうしたら私の体に力が戻って記憶もほとんど思い出したんです」

京子は俺の体を優しく抱きしめ泣いていた。

「こんなになるまで相手の攻撃を受けていたんですか。ダメですよ。死ぬなって言ったのは信五さんじゃないですか。言った本人が死んでしまってはダメですよぉ」

俺は京子の頭をなでた。

そして何度もゴメンなと言って謝った。

「さあ、やるか! こっからが俺たちの本気だぜ!」

俺は京子に支えてもらいながらも立ち上がる。

「あんたはいつもそうなんだから」

「おっしゃぁ! やってやるよぉ!」

「わ、私もやりますよぉ!」

「いや、アーサーは下がっていたほうがいいぞ? 私がやる」

「犬狩りだ!」

「ふん、少しは遊んでやるか」

エリー、サミラ、レリアール、ランスロット、サタン、ジークフリートはそれぞれ武器を抜きやる気満々だ。

「信五さん」

「ん? なんだ?」

俺が京子の方を見ると京子は背伸びし俺にキスをした。

瞬間俺の体に力が沸く。傷も消えていた。

これはリンクなのか? だが、前のとは力の強さが違いすぎるぞ。

「私だって信五さんの役に立ちたいです。だから、存分に戦ってください。勝ってください。あなたが後悔しないように全力で」

京子は俺に抱きつきながら言ってくる。

「ああ、わかった。全力で倒してくるぜ」

京子は俺から離れそれを合図に俺たちは走り出す。俺はオーディンを倒しに。他は犬を倒しに。

「オーディン!」

目の前に見えたオーディンに俺は叫んだ。

「ほう、あそこから生き返ったか。流石最強と言っておこうかのぉ」

オーディンはヒゲを摩りながら言っている。

「じゃが、我はどこでも重力を変えられるじゃぞ? お主の負けは決まっているようなものじゃ」

俺はニヤつきながらオーディンに歩み寄る。

「やりたきゃやればいい。だが、さっきの俺とはかなり違うぜ?」

俺は受けの態勢に入った。

「ふん、今度こそ死ぬがいい」

オーディンは重力を重くしたらしい。だが、俺にはなんにも感じない。

「何か、したのか?」

俺は普通に歩き始める。それを見てオーディンは驚きを隠せないらしい。

「な、何故じゃ! なぜ、動ける!」

「軽い。軽いぜ! 貴様の攻撃は軽すぎるよ」

俺は走り始める。

オーディンは素早く槍を呼び出し俺に向けて投げた。

「そんなの効くかよ!」

俺はその槍を片手で掴み投げ返した。

「グハッ!」

槍はオーディンに見事命中し肩を抉った。

「クッ、なら複数でどうじゃ!」

複数の光の槍を作り全て放った。

俺は瞬時に槍に順番を付けジャンプした。

そして、俺は四肢を使って全ての槍を跳ね返した。足で槍を蹴り、手で槍を掴み、飛んできた槍を全て跳ね返したのだ。

「グハッ、ウグッ、ハアッ」

跳ね返った槍はオーディンの体を削っていく。

「どうやら、魔術で作った体はそんなに頑丈では無いようだな」

俺は地面に足がつくと歩き出しオーディンに近づいていく。

「なっ、なんじゃと!?」

俺は倒れ込んでいるオーディンの元にたどり着き手に持った最後の槍を見せつける。

「お前も京子と同じ運命をたどれるかな?」

そして、俺はオーディンに槍を振り下ろした。

だが、それはオーディンの顔を僅かに掠った程度で地面に刺さった。オーディンは刺されたと思い込んだらしく気絶している。

「まあ、命までは取りはしないがな」

俺はポケットに手を入れ来た道を戻る。


「はぁ、こ、これで全部よね?」

「だと思いたいがなぁ」

「や、やりましたか?」

「ああ、アーサーよ。もう出てきていいぞ」

「なんだなんだ? お前らもう疲れたのか? だらしねぇなぁ」

「全くだ。こんなことで疲れるなど有り得ない」

エリー、サミラ、レリアール、ランスロット、サタン、ジークフリートたちは多種多様の答えを出していた。

「おう、お前ら。終わったみたいだな」

そこに俺が登場し、場の空気が一変した。

「ふん、その様子ではそちらも終わったみたいだな」

「なんだ。せっかく俺がお前の泣き顔を見てやろうと思ったのによ」

ジークフリートは消え、サタンはニヤつきながら何処かへ歩いて行ってしまった。

「どうやら、私たちも役目は終わったらしいな。帰ろうか。アーサーよ」

ランスロットはレリアールの手を取り歩いて行く。

「え? ちょ、待ってよランスロット! あ、信五さん、で、では~」

レリアールも慌てて挨拶をして帰って行った。

「じゃ、ちょっと里帰りにでも行ってくるわ。じゃあね、信五」

エリーも次元の裂け目を作り帰って行った。

「なあ、京子」

俺は京子の方を見ずに聞いた。

「なんですか?」

京子も俺の方を見ずに聞き返した。

「お前は帰らないのか?」

俺は自分で何を言っているのかわからず言っていた。

「なーに言ってるんですか。私の帰るべき家は信五さんがいる家ですよ」

京子は俺の手を握ってきた。俺は京子の方を見ると京子も俺の方を向いており見つめ合う形になってしまった。

「じ、じゃあ、帰るか。俺たちの家に」

京子は笑顔になり頷いた。

「はい。帰りましょう。私たちの家に」

俺たちは歩き出した。握った手を離すことなく。ずっと。

「あの、信五さん」

「ん? なんだ?」

俺が京子の方に向き直り話を聞く。

「最強の人間と最弱の神様が手を組んだらどうなると思いますか?」

そんな質問をして京子は顔を赤くして顔を伏せてしまった。

「んー、そうだなぁ。きっと、誰も、そいつらを倒すことはできないんじゃないか?」

俺は前を向きそう言った。

「そう、ですか」

京子はちょっと嬉しそうな声で答える。

「なあ」

「はい?」

「明日から、またお前の記憶探しに行こうな」

俺は顔が熱くなりながらも言った。

となりで泣き声が聞こえるが俺はそっちを見なかった。

「はい。はい、行きましょう。一緒に。私の記憶を取り戻すために」


もしもこの世に誰にも負けたことのない人間がいると仮定しよう。

たぶんその人間はその力を悪用して世界征服だって一人でこなしてしまうだろうか?

またはその力を誰かのために使うだろうか?

正解はどっちもノーだ。

だってそんなのつまらないだろう?

神にも匹敵すると謳われた人間が世界征服?

小さいな。

誰でも守れると期待されてきた人間がヒーロー?

ありきたりすぎる。

どうせそんなつまらない力なら全てに使うのが道理ってもんだろう?

だから、俺、神谷信五は神様こと鏡野京子と共に修羅神仏を倒すことに決めたんだ。

それが、どんな結末を送ることなんて関係ない。

ラストは自分で作るものなんだから……。

こ、これまでありがとうございましたぁ(涙)


皆様のおかげでこの作品のラストを飾ることができました。


次回作は考えていますが要望があればこの作品の続きも書かせてもらいます。

なければ、また、新しいものを書かせてもらいます。


次回作もどうか見てくださることを願っています

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