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10.知性の生命体

――ねえ、あなた。デブチンマキタったらぁ。


――なっ、何い? 誰だお前は。


 突然デブチンマキタの頭の中に声が響いた。


――ハンナよ。私。ハンナ。


――何だって? ハンナ! お前死んだんじゃ……。おい! どこから話しかけてる?


――フフ。きょろきょろしたって私いないわよ。私はあなたの心の中よ。


――どっ、どういうことだ。俺は頭が狂ってしまったのか?


――いいえ。大丈夫よ。あなたは。私ね。どうやら知性の生命体とやらに進化しちゃったみたいなの。だから、あなたの心に寄生してるのよ。


 デブチンマキタは部屋の隅にあった大き目の鏡の前でパンツを下げてお尻を向けてみた。

 そこには間違いなく一つの目があって瞬きをしていた。


――えええっ? おまえ。おまえが俺に寄生した? やっぱ俺。頭おかしいや。


――しつこいわね。大丈夫って言ってるでしょ! それより早くしないとニンゲンが滅亡するわ。


――早くしないとって……。何するんだ。


――もうすぐ母船が日本の上空に来るわ。副船長のボーダが侵略者の異性人に寄生して日本の上空に連れてくるのよ。母船以外は蜃気楼みたいなものよ。実体がないわ。相手にしなくてもいいの。母船がすべてなのよ。


 言ってることがデブチンマキタにはさっぱりわからない。しかし、侵略者の飛行物体の総本山というか、ボスみたいな奴がもうすぐ空に現れて、それを何とかするみたいな感じは伝わった。

 辺りが急に暗くなったので、デブチンマキタが戸外に出てみると、とてつもない巨大な飛行物体が上空に浮かんでいた。彼はこれを見て恐怖に震えた。


――何びびってるのよ。さあ、行くわよ。


――行くって? どうするんだ。


――簡単なことよ。スーパーマンみたいにジャンプして、飛行物体に近付いていって指差すだけよ。


――だけって。スーパーマンになるだけってことないだろう……。


――つべこべ言わずに言う通りなさい!


――はっ、はい。


 デブチンマキタはその場で飛び上がった。すると本当にスーパーマンのようにすうっと空中に浮遊した。そして意志の向くまま飛行物体に近付いていく。

 飛行物体は一瞬輝き、光の束を向けてきた。しかし、その光はデブチンマキタ、もとい、スーパーマンマキタの体を破壊することなくすり抜けていった。そして背後の地上では大爆発が起こり噴煙が巻き上がった。


――今よ! 指を差しなさい!


 スーパーマンマキタの指先が閃光を発し、火の玉のようなものが徐々に大きくなって突然光が飛行物体へ向けて発射された。

 ほんの一瞬の出来事だった。

 ちゅちゅちゅちゅっ、チュドーーン!!

 大音響とともに飛行物体はばらばらになり更に粉々になって塵の如く消えていった。


――やったあ! スーパーマンマキタの勝ちい!!


 スーパーマンマキタは目の前の光景が信じられない。だいいち自分が空中に浮いていること自体、現実として理解できなかった。


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