第3話「テンプレすぎる展開」
翌日、僕らはアスターズ本社へと向かった。
社員さんに御影リリアとのアポを取ってもらったので、さっそく今日会うことになったのだ。
「リリアちゃんに会えるんだね!楽しみ!」
彼女の大ファンであるサクラは、希望に満ち溢れた顔をしている。
「かわいいんだろうけど、生で会ったとしても絶対私のほうがかわいいに決まってるよね」
ナギサの奴、いったいどこからそんな自信がわいてくるのか不思議でしょうがない。
自信家なのはアイドルとして別に悪いことではないけどさ。
そんな吞気なこと考えながら本社への道のりを進む。
SNS部からアスターズ本社までは徒歩10分もかからないほど近い。
ついた後のことを考えていたら、誰かにぶつかった。
ドンっ!!
「ヒカル社長!?」
「だ、大丈夫!?」
ナギサとサクラが僕のもとへ駆け寄る。
「ぼ、僕は大丈夫だよ」
僕よりもぶつかった相手のほうが心配だ。
ケガしてたら大変だ。
起き上がると僕は自分とぶつかった相手のほうへ向かった。
帽子とマスクで顔は見えないけど、身長的に中学生くらいだろう。
「すみません、僕余所見してて…。大丈夫ですか?」
「うるさい!!!!」
「え?」
手を差し伸べたら、僕はいきなり怒鳴られた。
その中学生は立ち上がり、僕を指さして大声で怒鳴りだす。
「よくもこの私を突き飛ばしてくれたわね!!あんた覚えてなさいよ!!」
そいつは僕を突き飛ばして去っていった。
「な、なんだあのガキ!」
ぶつかった僕が悪いのは理解できるけど、あんなにキレてくる必要もないだろう!
故意でぶつかったわけじゃないんだから!
「うわぁ、今の子やばくなかった?逆ギレこっわ~」
ナギサが僕の後ろからそう言ってきた。
「いきなり大声出してきたからびっくりしたよ」
サクラもあの中学生のことヤバい奴だと思っているようだ。
年齢性別問わず、頭のおかしい人はどこにでもいるんだな。
とはいえ、僕が気弱な高校生だから何も言い返さず穏便に済むことができたけど、相手がDQNだった場合、さっきみたいに大声でキレてたら逆に痛い目に遭っていたかもしれないぞ。
いや、もしかして僕が反撃してこなさそうだからあんな態度とってきたのかな。
「ヒカル社長~、早く行こうぜ」
ナギサが僕をせかしてくる。
「そうだね。ごめん、変なことに時間取らせて」
そして僕らもその場を去った。
もうこのことは忘れるか。
ーーー
アスターズ本社についた後、僕らは誰もいない小さな会議室に通された。
「今、御影さんのマネージャーから連絡があったよ、もうすぐここに来るってさ」
僕は二人にそう伝えた。
「ついにリリアちゃんと会えるんだね!!」
相変わらずうれしそうだな、サクラは。
すると、部屋がノックされドアが開いた。
そこには長髪の女性と、小柄な中学生くらいの女の子が立っていた。
小柄な女の子、この子が御影リリアなのだろう。
思った以上に幼く見え…。
「ん……?」
僕はここであることに気づく。
あれ、こいつ確か…。
僕に気づいた御影が先に声を上げた。
「あ!!あんた!!さっき私を突き飛ばしてきたアホ毛野郎!!」
「き、君はさっき僕に逆ギレしてきた中学生じゃないか!!」
ぶつかった相手と再会、しかもその相手が人気アイドル…。
こんな漫画みたいなことが自分に降りかかるなんて思いもしなかった。
それに、あんな逆ギレかましてきた奴と再会なんて…嬉しくも何ともない。
むしろ最悪だ、僕は二度と会いたくなかったのに。
「めっちゃテンプレすぎる展開じゃんこれwww」
ナギサが僕の横でゲラゲラ笑ってる。
お前はいいよな、他人事なんだから。
「リリアさん、いきなりどうしたの?」
御影の横にいた女性が不思議そうに僕らを見ながらそう言った。
御影はその女性に泣きついた。
「聞いてよ~!!アーヤ!!私、さっきここに来る途中こいつにぶつかられたのよ!!」
こいつはいつまで僕がぶつかってきたことにしているんだ。
話を誇張しているだけと信じたいけど、もし本気でそう思っているならかなり被害妄想が激しいんだな。
「そういえばリリアさん、星崎社長のことご存知だったのね」
さっき御影にアーヤと呼ばれた女性がそう言う。
「え、アーヤ…今こいつのこと社長って言わなかった?」
「えぇ、彼は星崎ヒカルさん。2週間前からアスターズの新しい社長に就任したの」
それを聞いて、リリアが「信じられない」といった顔で僕を見る。
「な、なんですって!?こいつが社長?!若いし頼りなさすぎるわ!!」
「頼りなさそうで悪かったな!!」
僕と彼女は今日、初めて会ったばかりだ。
お互いのことを知らなかったとはいえ、いきなり怒鳴りつけてきて、お互いの素性が分かった後もこうして面と向かって罵ってくるなんて…。
いくら何でも失礼にもほどがある!!
親の顔が見てみたいよ。
「え~!!嫌よ嫌!!こんなアホ毛野郎が社長なんてありえないわ!」
御影はまだ僕に対しての文句を言う。
「君さ、いくら何でもそんなこと人に言うのは失礼だよ。もう中学生なんだから、言葉遣いには気を付けないと」
僕が御影を優しく諭すと、御影は頬をプクーっと膨らませた。
「私が中学生!?あんたのほうが失礼じゃない!!」
「え?」
どう見ても中学生くらいにしか見えない。
「私はもう17よ!!」
僕は思わず御影を二度見する。
僕の一個下なの!?
五個くらいは年下に見えた。
最近の子供は大人っぽいって聞くんだけどな…。
「え!?まさか私よりも年上なのかよ……」
僕だけじゃなくてナギサも同じように驚いていた。
「え~ん!!アーヤ!!」
御影はまたアーヤという女性に抱きつく。。
「私中学生って言われたぁぁ!!もう大人のお姉さんなのにぃぃぃ!!!!」
年齢17で大人のお姉さんって単語使うのはまだ早いだろ。
「最低よ!!こんなやつクビよ!クビ!!アーヤ、こいつをやめさせてよ!!」
「私に言われても無理よ、リリアさん」
「なんでよぉぉ!!」
御影はまだ駄々をこねる。
こいつ、見た目だけじゃなくて中身も子供じゃないか。
ナギサとサクラのほうがまだ精神的に大人なのかもしれない。
「リリアさんって思ってたより子供なんだね」
ナギサは滅茶苦茶ドン引きしていた。
「テレビで見るのと全然違う……」
サクラだって少し引いてるぞ、会う前はすごく楽しみにしてたのに。
初めて会う人気アイドルの何とも言えない姿に、僕たち3人は言葉を失う。
「アイドルって……芸能人って実際はこんなもんなのかな」
―To Be Continued…




