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デビルアカデミア~ 悪魔学園の禁断の封印を解くのは俺だけでいい ~  作者: 雪沢 凛
第七章

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暴露 (5)

 ノックスはサンドイッチをテーブルに置き、視線をカイルへと向ける。

  「……どうした? 気分転換か?」


 隣に立つタロスがノックスの皿を覗き込み、呟くように言った。

  「それだけ? 質素すぎないか? 俺たちのところでちゃんと食った方がいいぞ。」


「特異科の食堂って美味しいんじゃないの? なんでわざわざこっちまで?」

  アリアンが不思議そうに尋ねる。


 カイルが笑顔で答える。

  「たまには違う空気も吸いたいってことで。……タロスがいつも言ってるんだよ、俺たちの飯は飽きたって。」


「何年ここで食ってると思ってんだ。お前らなんてまだ新入りだろ。」

  タロスが鼻を鳴らすように言った。


「好きでここ来たわけじゃないくせに。」

  カイルはからかうように言い返し、今度はアリアンに向き直る。

  「まあ、冗談はさておき──俺たち、学院の外に出るのはけっこう面倒なんだよ。見た目のせいで、どこに行っても目立つし。」


「……目立つ、って?」

  アリアンが戸惑ったように聞き返す。


「見た目って大事だよ。俺たちみたいな見た目だと、どこに行っても指差されたり、ひそひそ話されたりするんだ。」

  カイルは軽い口調ながら、目の奥に陰りがあった。

  「学院はそういう意味じゃ、静かで過ごしやすい場所だよ。……少なくとも、他人の目を気にしなくて済む。」


「俺なんか、牛頭族だからな。人間の街じゃまず魔物扱いだ。」

  タロスが淡々と続けた。


「嘘でしょ、それはあんまりじゃない?」

  アリアンは思わず笑ってしまったが、その笑いには驚きと申し訳なさが混じっていた。


「笑ってくれていいよ。もう慣れた。」

  タロスは肩をすくめた。


 カイルが補足するように言う。

  「特異科のほとんどの奴らが、似たような理由で寄宿を選んでる。ここは俺たちにとっての避難所みたいなもんさ。」


「タロス、いつからここにいるの?」

  アリアンの声が少し柔らかくなった。


「学院設立の初期からだ。」

  タロスは誇らしげに答える。

  「下手したら、ここにいる教師より古株だぞ。」


「すごいじゃん、まさに大先輩ってやつだね!」

  アリアンは感嘆の声を上げた。


「まあな。」

  タロスの口元がほんの少し緩む。


「俺が来たのは三年前だけど、その頃にはもう彼は特異科の中心だったよ。」

  カイルが続けた。


「三年前って……どうしてそんなに遅く来たの?」

  アリアンが不思議そうに尋ねた。


「当時は実家で、翼のコントロールを完全にできるまで出るなって言われてた。」

  カイルはため息をつく。

  「でも結局、外の世界は息苦しくてね。だからここに来た。それで今はもう、長期寄宿生みたいなもんさ。」


「でも、この学院って普通は高校までだよね? そんなに長くいられるの?」

  ノックスが口を挟んだ。


「特異科は普通の学年制度がない。進度も内容も、個人に合わせてるから。」

  カイルが応じる。


「戦闘訓練もあるし、俺たちみたいな身体特性を持ってるやつは、それを制御しつつ社会と関わる訓練が必要なんだ。」

  タロスが静かに付け加えた。


 アリアンは真剣な顔で頷いた。

  「なるほど……普通科より自由に見えるけど、やっぱりそれなりの理由があるんだね。」


「“自由”って言っても、制限された自由さ。」

  カイルは少し寂しげに笑った。


 食堂の雰囲気は多少和らいでいたが、カイルとタロスが現れたことで周囲の生徒たちは相変わらず一定の距離を保っていた。テーブルを囲む会話も、いつしか軽い話題から徐々に踏み込んだものへと変わっていく。


 カイルは椅子の背にもたれかかり、気軽な口調で言った。

「実はさ、ノックスが特異科じゃない理由、なんとなくわかる気がするんだよね」


「え?どうして?」と、アリアンが不思議そうに首をかしげる。


 カイルは肩をすくめて、笑顔で続ける。

「俺たちみたいな外見をしてると、どこに行っても面倒がついて回る。学院はそういう俺たちにとっての避難所なんだ。でもノックスは違う。見た目は普通だし、行動も制限されない。そもそも俺たちほど“囲われる理由”がないんだよ」


 すると、タロスが重い声でぽつりとつぶやいた。

「それに、カルマ様の息子だ。どこに行こうと自由さ。俺たちとは違って、縛られることもない」


 ノックスはその言葉に少し驚いたように目を向ける。

「……母を知っているのか?」


 タロスは姿勢を正し、敬意を含んだ声で答えた。

「カルマ様は、ただの魔族ではない。彼女の家系は魔界でも高い地位を持っている。今でこそ制度に対するこだわりは薄れているが、それでも影響力は絶大だ。多くの魔族が彼女を敬い、時には忠誠を誓うほどに」


 ノックスは眉をひそめた。明らかにそれらの話には聞き覚えがないようだった。

「そんなこと、一度も聞いたことがない」


 そのときまで黙って話を聞いていたカスパが、メガネを押し上げて驚きの声を漏らす。

「まさか……ノックス、お前、特異だったのか?」


 ノックスは答えず、ただタロスに視線を向ける。続きを促すように。


 カスパはさらに戸惑いながら言った。

「なんとなく違和感はあったけど……本当にそうだったなんて……」


 タロスは口を滑らせたことに気づき、少し困ったような顔をした。

「すまない。カスパがいるのを忘れていた。今のは……つい口が滑った」


 ノックスはカスパの方を向き、静かな目で見つめる。


 カスパはすぐに両手を挙げ、真剣な口調で言った。

「安心してくれ。俺は誰にも言わない。秘密は守るよ」


 ノックスは低く一言返す。

「……頼むよ。でも、うちの両親が本当に隠したいのは、たぶんこれじゃない」


 再びタロスの方を向き、落ち着いた声で続けた。

「話の続きを聞かせてくれ。せっかくだから、もっと知っておきたい」


 タロスは少し考え込んだ後、静かに話し始めた。


「俺が知っている限りでは、カルマ様が人界に来たのは、失踪したアレス様──彼女の父親を探すためだった。アレス様は魔界では伝説的な存在だ。その失踪の理由はいまだに謎とされている」


 ノックスは少し身を乗り出し、目を細めた。

「それで?」


「その後の詳細はあまり知らないが……カルマ様は人界に残ることを選び、父の行方を追う一方で、人界で困窮している魔族たちを助ける活動を始めたと聞いている。そして七年前──子を授かった時点で、すべての行動から身を引かれた」


 ノックスは静かにうなずき、淡々とした口調で呟いた。

「なるほど、そういうことか……」


 すると、アリアンが眉をひそめて少し前のめりになった。

「七年前に子供を産んだって……じゃあ、ノックス、あなたに弟か妹がいるってこと?」


 ノックスはちらりと彼女を見て、淡々と答えた。

「いや。そのとき産まれたのが、俺だ」


 アリアンの目が大きく見開かれ、口がぽかんと開く。

「えっ、ってことは……」


 隣のカスパも手にしていた本をそっと置き、困惑した様子で言った。

「つまり……君、見た目より年上ってことか?」


 カイルが楽しげに笑いながら椅子の背を叩いた。

「ははっ、それがどうした? 魔族と人間の成長スピードは全然違うからな。特にハーフなら、なおさらだ」


 アリアンは驚いた様子でノックスをじっと見つめ、何やら頭の中で必死に整理している。

「……ってことは、私より八つ下?」


 ノックスは少し眉を動かしただけで、特に否定もしない。


 アリアンは指を折りながら真剣な顔で考え始めた。

「まさかとは思うけど……この成長の早さって、見た目だけじゃなくて中身も? いやでも私の方が年上って、もしかして気にしてる? えっ、それとも逆に──」


 その様子を見たカスパは、メガネを軽く直しながら内心でため息をついた。


(……また妄想始まったな)

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