第27話 見てしまった焔ちゃんの……
さて今日はなにをしようかな?
朝風呂に浸かりながら俺は天井を見上げて考える。
焔ちゃんはアイドルの仕事があってシルバーライトの配信は無し。そうなると無職の俺は暇で、することと言ったら家事くらいになる。
「雄太郎さんはいいって言うけど、いつまでもプー太郎じゃなぁ……」
ちょっとくらいは働いたほうが……。
まあ、シルバーライトの配信を手伝っているので働いているとも言えなくない。しかし焔ちゃんはアイドルの仕事で忙しく、配信は多くないので俺は大半をこうしてのんびり過ごしている。
30歳の男がこれじゃダメかなぁとぼんやり思う。
「そろそろ出るか」
湯船から立ち上がる。と、
ガララ
「えっ?」
そのとき風呂場の扉が開く。
雄太郎さんかなと一瞬思ったが……。
「あ……」
「あ……」
そこにいたのは裸の焔ちゃん。
美の女神が降臨したのかと間違えるような美しい裸体がそこに……。
「あ、ご、ごめんなさいっ!」
「ごめんっ!」
焔ちゃんは扉を閉めて脱衣所へと戻り、俺は慌てて湯船へとしゃがみ込む。
俺の目は扉に釘付けだ。
下半身には貧血を起こしそうなほど血が集まり、痛いほど伸び上がっていた。
「ツ、ツルツルだった……」
言葉では表せないほど、美しくて綺麗な身体だった。
そしてなんと言ってもエロい。あんなエロい身体を見てしまっては、もう他の女の子じゃ反応しなくなってしまうよ……。
それほどに焔ちゃんの裸体はエロかった。
「い、いやそれよりも……」
言い訳ができないほど、がっつり焔ちゃんの裸を見てしまった。世界で一番かわいい女の子であるスーパーアイドルホムラちゃんの裸を……。
これはちゃんとお礼を……じゃなくて、謝らないと。
俺なんかに裸を見られてひどく傷ついているだろう。それにせっかく良い感じの関係になれていたのに、この件でギクシャクしてしまうかも。
それもかなり不安であった。
……
風呂から上がると、居間のソファーには焔ちゃんが座っていた。
「焔ちゃんごめんっ!」
俺は速攻で土下座する。
もうそうするしかない。
このまま殴られても蹴られてもしかたない。最悪、警察に通報されてもしかたがないという覚悟であった。
「えっ? あ……うん。お互い様だし、別に謝らなくてもいいよ」
「お、お互い様って……」
「わたしも甚助さんの裸見ちゃったし、お互い様でしょ?」
「いや、俺の裸なんて、むしろ見せちゃって申し訳ないし……。焔ちゃんの裸を見ちゃった俺のほうが絶対に悪いよ。焔ちゃん、俺なんかに裸を見られてすごく嫌な気分になっただろうしさ」
「うーん……」
焔ちゃんは首を捻る。
想像していた反応と違うので、俺はただただ戸惑っていた。
「別に嫌じゃないけど?」
「えっ?」
「むしろびっくりしたっていうほうが大きいかな? だって、わたしの裸を見た瞬間、甚助さんの甚助さんが一気に大きく……」
「ちょ、ちょっと焔ちゃんっ」
「あ、これセクハラだね。ごめん」
「いや、そういうことじゃなくて」
美少女高校生アイドルが、普通のおっさんにセクハラってどういう状況だよ。普通、逆だろ。いやセクハラが普通ってのもおかしいけど。
「甚助さん、わたしの裸を見て興奮したんだ?」
「そ、それはまあ……その」
「今日の夜はわたしの裸を想像して、ひとりでしちゃうんだ?」
「いやあの……」
すいません。昨晩も焔ちゃんを想像してひとりでしました。
「わたしも甚助さんの裸を想像してひとりでしちゃうかも」
「ほ、焔ちゃんっ」
「冗談。ちょっと甚助さんをからかっただけだよ」
「はあ……」
冗談と聞いて少しホッとする。
「そういう冗談はあんまり言わないほうがいいよ。焔ちゃんかわいいんだし、勘違いして変なことしてくる男だっているかもしれないしさ」
「大丈夫。こんなこと言うのは甚助さんにだけだから」
「えっ? お、俺にだけ?」
「うん。あっちこっち誰にでも言ってたらわたし変態じゃん」
「はは……」
美少女の変態。
悪くないけど、焔ちゃんの安全を考えたらよくもない。
「それに裸見られたのだって、相手が甚助さんだから嫌な気分にならなかったんだよ。他の人だったら、すごい傷ついて泣いてたかもしれないし」
「そ、そうなの?」
「うん」
それって俺になら裸を見られてもいいってこと?
なんで? どうしてだろう……?
理由を聞こうと思ったら、
「おはよう」
雄太郎さんが居間へと入って来て言葉を飲み込んだ。
「あ、おはようございます」
「おはよう、おじいちゃん」
「うむ。焔、最近はよくうちに泊まっておるが、学校のほうにはちゃんと行っておるのか? ここからでは通えんじゃろう?」
「学校のほうはもともとそんなに行ってないよ。アイドルと配信で忙しいしね。シルバーライトの配信でも忙しいってことをパパとママは知らないから、家にいると学校行けってうるさいし、こっちのほうが居心地いいの」
「学校は行ったほうがいいと思うけどのう」
「わたしにはシルバーライトになって、ダンジョンや地下東京の平和を守るほうが大事なの。ね、甚助さん?」
「えっ? いや、俺に聞かれても……」
「甚助君もいることじゃし、平和を守る活動は少し甚助君に任せてお前は学校に行ったらどうじゃ?」
「甚助さんに?」
雄太郎さんの言葉を聞いて焔ちゃんはうーんと唸る。
「学校へ行くかはともかく、それは良い考えかも。ねえ甚助さん、甚助さんも正義の味方系配信者としてダンジョンで活動してみたら?」
「えっ? 俺もシルバーライトみたいにってこと?」
「そう」
焔ちゃんを手伝って一緒に活動はしてたけど、俺個人として配信者をやるなんて考えてもいなかったことだ。
「うむ。大の男が平日に家でゴロゴロしているのもみっともないじゃろう。配信なら金も少しは稼げるじゃろうし、よいと思うがの」
「確かに……そうですね」
死んだことになっているので、普通の仕事につくのは難しい。
配信で稼ぐというのは良いアイデアではあった。
「けど俺にできますかね? 配信とかそういうのあんまり詳しくなくて……」
「このあいだ機材を貸して代わりに配信やったでしょ? あれと同じだから大丈夫だよ。機材はわたしのお古をあげるから、それを使ってやってみて。わからないことがあったらわたしが教えてあげるから」
「う、うん」
とりあえずやるだけやってみるか。
そう考え、俺は配信活動をしようと決めた。




