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第25話 おっぱいから生えてくるバナナ

「バ、バナナが無いうきーっ!」

「えっ? バナナ?」


 焔ちゃんが食べるために持って来たくだものの箱をあさりながら、デンパ―モンキーは叫ぶ。


「バナナが無いと洗脳ダンスが踊れないうきーっ! 無くならないように、ホムラの食事として大量に持ってきたのにーっ!」


 なるほど。くだものの中でバナナだけやたら大量にあったのは、焔ちゃんの好物だからというだけではなく、技を使うためでもあったのか。


「うききーっ! バナナが食べたい―っ! バナナ食べないと落ち着かないうきーっ! バナナっ! バナナっ! バナナーっ!!!」


 ……あとバナナ中毒でもあるようだ。

 焔ちゃんがバナナを食べる姿に生唾を飲み込んでいたのもエロい目で見ていたのではなく、単に自分もバナナを食べたかっただけか。


「あれだけたくさん持って来たのに無くなるなんてうきーっ! お、お前が食い過ぎなんだうきーっ!」

「えーわたし? そんなに食べてないよ」


 いや、3房くらいは食べていたような気がする……。



 ――シルバーライトちゃん、人のバナナ勝手に食べたの?


 ――お猿さんのバナナを勝手に食べちゃダメよ


 ――シルバーライトちゃん「わたしが全部食べちゃいました」


 ――食べた? この中の中でバナナを?


 ――俺のバナナも食べてええで(ゲス顔)


 ――おっさんのバナナも食べてそう



 下品なコメント欄だなぁ。

 しかし俺も同じようなことを考えていたので人のことは言えないけど。


「バ、バナナが無いと洗脳ビームを撃てないうきーっ! こ、こうなったら洗脳した連中で総攻撃してやるうきーっ!」


 洗脳ビームを撃てなくなったのはいいが、洗脳された人たちを使っての攻撃もまずい。殺すわけにはいかないし、戦いが難しくなりそうだ。


「バナナならここに1本だ余ってるけど?」


 そう言った焔ちゃんは胸の谷間からバナナを生えさせる。



 ――親方っ! おっぱいからバナナがっ!


 ――普通のバナナが世界一高級なバナナになってるやんっ!


 ――俺のバナナもそこに収めたい……


 ――バナナ(意味深)


 ――バナナっておっぱいから生えてくるんやな(すっとぼけ)



 俺のバナナも……って、イカンイカン。俺もコメントと同じことを考えてしまっている。けどエロい。エロ過ぎる。焔ちゃんエッチだよ……。


 俺は状況も忘れて「今日のおかずはこれやな」とか考えていた。


「バ、バナナっ! それを寄こすうきーっ!」

「い、いやそのバナナは俺が……」


 言いかけた俺に焔ちゃんが目配せをする。


 察した俺は口を閉じ、デンパーモンキーの動向を見張った。


「ほしければあげるよ。そーれっ!」


 焔ちゃんは上空にバナナを投げる。


「うきーっ! バナナバナナーっ!!」


 それを目掛けてデンパ―モンキーが跳ぶ。


「ドラゴンブラックさんっ!」

「ああっ!」


 焔ちゃんの声を受けて俺は上空のデンパ―モンキーに向かって顔を向ける。


「うきっ! バナナゲットっ! これでドラゴンブラックを洗脳……はっ!?」

「気付いても遅いぞっ!」


 デンパ―モンキー目掛けて俺の口から炎が……。


「ジャスティスドラゴンファイヤーっ!」

「ふぇっ? ごあああっ!!」


 焔ちゃんの叫びと同時に俺の口から業火が吐かれ、


「し、しまっ……うききききーっ!!!」


 上空でバナナを掴んだデンパ―モンキーを焼き尽くした。



 ――モンキー怪人終了


 ――ジャスティスドラゴンファイヤーw


 ――ダサい。ダサくない?


 ――シルバーライトちゃんが考えたならダサくない


 ――命名がダサくてかわいい



「なんやねんジャスティスドラゴンファイヤーって。ダッサいなぁ」

「ははは……」


 ウロコ飛ばしのドリルウロコパンチに続いて、口から吐き出す炎にも変な名前が付けられてしまった。今度から口から炎を吐くときは俺があの技名を叫ばなければいけないのかな? そう考えると少し嫌だが、焔ちゃんが喜んでくれるならいいかと思う。


 デンパ―モンキーが倒されたことで、操られていた人たちはその場に倒れる。息はしているようなので、洗脳が解けてそのまま気を失ったのだと思う。


「やったねドラゴンブラックさんっ!」

「ひゃあっ!?」


 こちらへ駆けて来た焔ちゃんが勢いのまま俺へと飛びつく

 ふんわりした感触に押された俺は歓喜の声を上げた。



 ――またおっさんに抱きついてるー!


 ――おっぱいぎゅうぎゅう押し付けてるやん!


 ――うらやましいいいい! おっさん死ねー!!!


 ――おっさんが来たらこうなるのはわかってたことだろ


 ――もうあのおっぱいはおっさんのものなのか……


 ――けど今回もお疲れ様【赤スパ2万円】



「シ、シルバーライトちゃん、そんな簡単に抱きついちゃダメだよ。恋人同士とかじゃないんだし」

「わたしが抱きつきたいからいいの。ぎゅー」

「わ、わあっ」


 バナナを挟んでいた大きなおっぱいが、今は俺の身体へと押し付けられている。

 こんなのもう耐えられないよと、俺はもう頭がクラクラであった。


「はーい。それじゃあ今日の配信はここまでねー。緊急のライブ配信だったけど、見てくれてありがとー。次の配信も見てねー。それじゃあおつかれー」

「お、おつかれー」



 ――おつかれさま【赤スパ1万円】


 ――今日はエロい回だったなぁ【赤スパ3万円】


 ――今日もおっさんは生存か


 ――シルバーライトちゃんはエッチな子【赤スパ2万円】


 ――ぐやじいでず!



 そして配信は終了する。

 結構なピンチだったが、焔ちゃんと大阪1号のおかげでなんとかなった。今日も無事に帰れそうでよかったと安堵する。……と、


「ホ、ホムラさん……」

「えっ?」


 声が聞こえてそちらを向くと、岩陰から九条直哉が姿を現した。


「あら? 隠れてたの?」

「い、いやその、怪人とは戦ったことがなくてね。つい」

「そう。まあ、他の上級探索者が簡単に洗脳されちゃったし、しかたないよね」

「はは。恥ずかしいよ。しかしまさかホムラさんがシルバーライトだったとはね」


 九条直哉にシルバーライトの正体がバレてしまった。

 これは困ったことになりそうだが……。


「戦う姿や言動からは、とてもホムラさんとは思え……」

「ブレインクラッシュっ!」

「えっ? う……」


 シルバーライトの仮面の額がピカッと光る。

 それを浴びた九条はポカンとしていた。


「な、なにをしたの?」

「説明しよう! シルバーライトは額から発射するブレインクラッシュを食らわすことで、わたしがシルバーライトだという記憶だけを相手の頭から都合良く消せるのであるっ!」

「説明どうも……」


 腰に両手を当て、あり過ぎる胸を張って説明してくれた焔ちゃんであった。


「あ、あれ? なんでシルバーライトがここに……?」

「ここに怪人が現れて皆さんを洗脳していたんです。けどもう大丈夫。仮面ドラゴンブラックさんとわたし、あと大阪1号君で倒しましたので」

「あ、そうなんですか……。それはありがとうございます」


 腑に落ちないという表情ではあるが、九条は納得して礼を言っていた。


 ……それから俺たちはこっそりと元の姿へ戻り、スタッフや出演者を起こして撮影を再開する。撮影は順調に進み、やがて終わって俺たちは帰路についた。


「けどまさかマネージャーの木島さんが怪人だったなんてね」


 信頼しているマネージャーさんが怪人だったのだ。

 焔ちゃんは傷ついているんじゃないか? そう思ったが、


「うん。ビックリだったね。前のマネージャーさんが急にやめちゃって、あの人に変わったから変だなーとは思ってたんだけど」

「それじゃあ前のマネージャーさんはデッツに……」

「かもしれないね」


 奴は俺を洗脳してゼラムスのもとへと言っていた。俺を倒したいのではなく、俺を捕らえたいのだろう。そして他の怪人のように洗脳する気なのだと思った。


「ゼラムスってのはたぶんデッツの幹部だね。デッツはドラゴンブラックさんを怪人にして利用するつもりだよ。世界征服にね。だから気をつけないと」

「うん」


 これからも俺を狙ってデッツは怪人を差し向けてくるだろう。

 油断はできないなと、俺は気合を入れた。


「けど、焔ちゃん、記憶を消せるならこのあいだ君がシルバーライトに変身したとき、俺の記憶も消せたんじゃないか? どうしてそうしなかったの?」


 ドラゴンブラックになったあとならわかる。

 しかしアジトで気付いたときはまだ、ドラゴンブラックに変身できるなんてわからなかったのに……。


「甚助さんは命を省みないでわたしを助けようとしてくれた人だし、信用できるって思ったの。命を助けてくれた人を疑って記憶を消すなんて失礼だしね」

「ああ、そういうことだったんだね」

「うん。それに……」

「えっ? あっ」


 寄り添って来た焔ちゃんが俺の腕を抱く。


「なんか長い付き合いになるような、そんな気もしたの」

「な、長い付き合いって……」

「長い付き合いは長い付き合いだよ。ほら早く帰ろ。わたしお腹すいちゃったし」

「あ、うん」


 焔ちゃんにそのまま腕を引かれて俺は急ぎ足になる。


 長い付き合いになる。

 焔ちゃんがどういう意味でいったかはわからないが、この関係がいつまでも続くのは嬉しいなと思った。

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