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輪廻創世 アルヴァーナ  作者: ひやニキ
Chapter4 伊忌島からの凱歌 後編
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第67話 Fallaces sunt rerum species

 「3番艦、4番艦撃沈!」

「西部山岳を制圧との入電!東部戦線は半壊の模様!」

「オールアイ副隊長!島中よりあと一歩で軍部制圧です!

ですが、これではそれまで保つか分かりません!」


「我々も前線を押し上げる!

トライトーン前進!主砲目標、カンナギ!

あの、錆刀(カンナギ)とあの島を落とさねば……!」


互いに戦力を削り、刻一刻とどちらかが力尽きようとしている。

手を尽くし、もはや時の運が、勝利の女神がどちらかに嘲笑うか。



 ヒヅルとラインハルト。

互いに牽制し合い、動けぬ2人。

討ち取られた両軍の残骸が大地に転がり、血と硝煙の臭いが鼻に焼きつく。



どうする、ヒヅル。

落としたセイバーは、僕とラインハルトの間に転がっている。

いち早く動いて、回収するか?

いや、そんな行動はすでに読まれているはず。


ではアマテラスの右腕は。

未だ握りしめられたビームカービンで、遠距離から撃つ。

……ダメだ。おそらく、拾う→狙う間に機関砲で蜂の巣だ。


では雷震を即座に……これも撃たれる方が早い。

この3択以外に手立てがないのかッッ!!




かたやラインハルトは当然、ヒヅルの出方は予測済みだ。


アイツはその辺に落ちた武器で向かって来るしかできねえハズだ。

さっきは大見得切ってたが、大したことはねえ。

剣なら拾う前に斧を投げて真っ二つに。

銃ならこっちが先に撃つまで……手の内なんざバレバレなんだよなァ、ガキのお遊びなんざ。


ま、アイツのお得意戦法は、目眩しから切り掛かり。

視界を遮られたら一歩飛び退きゃあ、こっちのモンよ!!



両者が、睨み合う。

どっちだ……剣か、銃か。剣か、銃か!

僕が取るべきは……。

"助けの手を離して無駄にすんじゃあねぇぞ!"

ウォルノの言葉を不意に思い出す。

助けの手。手………そうか!



ハッと顔を上げるとともに、2人の間で撃墜されたゴブが墜落・爆発する。

今だッッッ!!

アマテラスは、左前に転がる自らの右腕へ一直線に走る!


「予想済みだろうがあ!!」

ラインハルトも機関砲をぶちかます。

が、予測を上回るアマテラスのスピードに数発しか当てられない。


「ウィングの分さっきより!

だがなぁぁ、その加速じゃあ銃はもぎ取れねぇだろうがよ!!!」

撃ち続けるものの、ヒヅルに致命傷は与えられない。


「…………」

不思議だ。すべてがゆっくりと、遅く見える。

向かってくる弾も、音も。光さえも。

まるで僕だけが世界から加速しているようだ。



無心で飛び込み、アマテラスの左手がとうとうカービンの銃身を掴む!

「ゲームセットだ、羽虫野郎がァーーーッ!」

「違うな、アンタの方だよッッッ!」

掴んだ銃身を、腕ごとアンダースローでラインハルトめがけてぶん投げる。



「読めてんだよ!」

怯まず、一直線に飛んでくるそれを撃ち抜く。

爆煙がラインハルトの眼前に広がる。

アイツは今のうちにセイバーを拾い、斬ってくるはずだ!

あとは一歩、後ろに飛んで後退すれば……ッ!?



ラインハルトの予想は大きく裏切られた。

煙の向こうには雷震をまっすぐこちらに向けるアマテラスがいたのだ。

「そうさ。お前は。

セイバーを拾うと思ったんだ。僕が確実に」


前方に飛びながら、スライディングをするように。

しかし、その眼はしっかりと後方へ跳んだハリヴォロスを捉えている。


「だから僕は、そうしなかった。

僕は!お前を!今ッッッ!超えたんだああァッッッ!!」

「ちくしょうがよおおォォォォ!」



雷震からの一閃が、見事ハリヴォロスの胸を貫く。

その一撃に、それは吹っ飛びながら墜ちていく。



激しい衝撃がラインハルトに駆け抜ける。

「あの絶望的な、状況から……!」

「僕には向かっていく心が、"逃げない意思"があったッッッ!!

それを支える仲間の気持ちも!!

それが!お前には無くて、僕にはあるものだぁーーーッ!!」



吹っ飛ばされたハリヴォロスが、海へと落ちる。

相剋の終わりを告げ火照った身体を冷ますかのように、ひたひたと海水がしみていく。

その時ラインハルト……クニヒトは思い出した。



あぁ、あの時拾った左腕のない娘。

それとメアリーとかいう女。

アイツら、そうだ。


ーーステラに、似て……。


ハリヴォロスがセンサー上からロストした。

アマテラスが受け身を取り、立ち上がる。

海からは天に向かい、黒煙が立ち上っていた。

【ライナーノーツ】

1.タイトル元ネタ:ルキウス・アンナエウス・セネカの格言。

「事物のうわべは欺きやすい」という格言。

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