第65話 諸刃の嚆矢
第65話 諸刃の嚆矢
落ち着け、まずは落ち着いて周囲を掃討だ!
「あれは、カンナギのバツ付きか!」
「落とせ!」
ゴブ・オーグが4本の腕でショットガンを連射してくる。
「そうだ、奴らもこの島上にいるのに、ラインハルトの砲弾はおろか余波も喰らってない……ということはッッ!」
即座に降り立ち、セイバーとカービンで腕を落としてダルマにする。
「うおおおああーーーッッッ!何をする!」
「飛んでけえええーーーッ!」
真一文字に振り抜いたセイバーで脚を切り落とすと、そのまま回し蹴りをぶち込む!
ピピピピッ!
ラインハルトのコックピットに乾いた警告音がこだまする。
「!!!!チッ!」
胴だけにされ蹴り飛ばされたゴブ・オーグはホロボロスの胸部目掛け一直線に迫っていく。
流石に即座に右の手で防御行動を取るラインハルト。
それが付け入る隙を作るとも知らず。
「今だ!」
右手に持ったカービンでその胴部を撃ち抜くと、爆炎がラインハルトの視界を奪っていった。
「人命を目眩しに使うとは、てめえの正義も汚れたもんだな……何ィ!」
「……」
正確精密な動きで爆煙の向こうから、アマテラスが姿を現す。
セイバーを振り上げ、ホロボロスを一刀両断せんとする。
「小賢しい手で、この俺がやられると思ってんなら」
ロケットアームが来る!
「まだまだ甘いんだろうが!!」
「もう読めている!」
向かって左!肩を後ろに引き、体を逸らして回避する。
「まだまだぁ!」
次いで右から手がつかみかかる。
ヒヅルも必死に避けようと試みるが、右腕全体を掴まれてしまう!
「ぐうッッ!」
「羽虫は羽虫らしく、そのまま吹っ飛びなあ!」
ロケットアームの勢いが強く、掴まれたまま吹っ飛ぶ。
そうだ、ラインハルトは言った。
―――『なんの痛みもないままで』
だから、僕は僕の痛みを抱えながら、コイツに勝つ!
「うおおおおォォォォ!」
左手に持つセイバーを
「ヒヅル!マサカ!!」
自身の右肩目掛けて振り下ろす!
「何……やってんだコイツァ!!」
「ぐああァァ、痛ってええェェェ!」
極度に機体とシンクロしたヒヅルへ、自分の腕を切り落とす痛みがフィードバックされる。
肩から先が、焼けるような激痛に意識が飛びそうになる。
そして、そのまま右腕を切り落とし、大空に放り出される。
「トンデモな小手先を使ってきたがなあ、てめえの負けだ!
もう一回同じ技は食らわねえ!」
「いや……いいんだ。これでいいんだ」
空中で受け身を取り、紅白の機影が山上に着地する。
「リィロン、雷震のチャージは」
「OKダ、撃テルゾ!」
ビームバスターの砲身を、本当ならば右肩に担ぐ位置に持ってくる。
「あとは、撃ち貫くだけだ」
ピピピピピピピピピピ!!
照準の中心が、膝関節の傷をロックする。
「ターゲットロック!捉えた!!」
ヒヅルが引き金を引き、雷震から青白い閃光が放たれる!
「アイツ、まさかッッッッ!」
その閃光は、巨躯へヒビを入れていく。
0.5…1秒!あと少しで!
そして……
轟音とともに、その膝をうがった。
後ろに倒れゆき、小爆発を繰り返し土煙に消えゆくホロボロスの影。
「僕の……”勝ち”だ!!」
焼けついた雷震の銃口から煙がたなびく。
「ホロボロス、沈黙!艦長、ヒヅルの勝利ね!」
カンナギのデッキにチョウの声が響く。
「ヘッ、ッッッたくよ……」
大怪我を負って担ぎ出されたウォルノも、それを見ていた。
「や、やりました!リンドウ司令官!
彼が、やってくれました!」
しかし、この勝利を喜べぬ男が二人いた。
リンドウとジェイは未だ気を抜いていない。
「いえ、まだです。ここで終わるはずがない」
「奴はそんな生温い男ではない」
「アマテラス、これより帰投します」
「ヒヅル!熱源反応アリ!」
即座に、斃れこんだ巨体の方を振り返る。
「”ホロボロス”の”ホロ”ってのぁな」
煙の中から何かが立ち上がる。
「ホロコースティック・アーマーの”ホロ”よぉ」
FSだッ!
巨体の中心に収まっていたFSが、その鎧を脱ぎ捨てた。
連結したビームアックスを肩に担ぎ、立っている。
「さぁ、第二ラウンドだ!行くぜ、相棒”ハリヴォロス”!!」
【ライナーノーツ】
1 タイトル元ネタ:「紅蓮の弓矢」の歌詞
「Hass und Zorn sind eine zweischneidige Klinge(憎悪と憤怒は諸刃の剣だ).」と、「反撃の嚆矢だ」から。
アマプラで進撃見てたんだよ。。。




