第39.5話 Hidden Growth
カンナギの戦艦ブリッジ。夕暮れの綺麗な橙色が差し込む。
「いやぁ、ありがとうございます。ミランダ艦長、ヨシヒロさん」
「この艦は俺の命……万全に整備するのは元より」
リンドウが丁寧に軍帽を取り、二人に頭を下げる。
その頭髪は白髪交じりだ。
「燃焼効率の良い推進剤への交換、OS改造による機器類の反応速度向上。
軍備の提供まで、ありがとうございます」
「ハッハッハ、私達としても敵軍が本格的に侵攻した際の要ですから。
作戦の一番危険なポジション、本当にお任せしてよろしいのでしょうか」
ミランダの低い背を見下ろしながら、リンドウが配慮の言葉をかける。
「私達は、我が国の難しい戦局面を突破するための特殊部隊です。
ゆえに、私達がやらねばならないのです」
「勇ましいことです。我々も見習わねばなりませんね。
ところで、砂浜へのC爆弾配置は完了しそうですか?」
ヨシヒロが筋肉質の腕を組み、満足げな表情で応える。
「無論、予定より早く今日で終わる」
「ヨシヒロはこの見た目に反して、手先が器用でな。
私達の想定以上のスピードで組み上げから埋め込みまでしてくれたのよ」
「では、完了次第報告をください。よろしくお願いいたします」
リンドウがカンナギのブリッジを退室する。
一呼吸置いて、ヨシヒロが眉をしかめながらポツリと言葉を放つ。
「艦長、一言多い」
_______。
こちらはカンナギの格納庫。
片隅でノートデバイスを開いて、ヒヅル・クニトモ・ウォルノが座り込んでいる。
「さぁて、ヒヅルくぅん。
君のアマテラスに最適なM・A・Wプランを3つ用意したよ。
共通装備の機関砲、ビームセイバー×4以外は背部アームとアーマーの出撃前換装で選択できるからね」
「ヘッ、お前のクセに合わせて俺がプラン組んだんだぜ。
よーく見ておいてくれよォ!
最近落ち込んでるお前を元気づけるのに、一生懸命だったんだぜ!」
ガシッと肩を組み、笑顔のウォルノ。
尻尾をぱたぱたさせる様子は、オオカミ種の亜人、というよりイヌそのものだ。
「まずは、タイプA!マイティプラン!
君の長所である『眼』と『反射能力』双方を活かす総合装備だ。
背部ビーム砲『日照』、ビームカービン、シールド、そしてコレが新しい増設武器!
『ロングビームバスター 雷震』だ!
背部アームに接続されてて、肩に抱えて引き金も引けるし、アームから右腕に接続・構えもできる。
ただし、威力調整せずにフルパワーでぶっ放しまくるとすぐエネルギーダウンするから注意さね」
「これなら手隙でもビームで視線を外す牽制がしやすいですね」
ヒヅルが、憂える瞳の中に少し笑みを浮かべる。
彼としてはこのマイティプランは好みだったようだ。
「ヘッ、予想通り気に入ってくれて嬉しいぜ。
タイプB!リアクトプランだ!
お前の『反射能力』に極振りした装備だぜ……俺の好みも入ってるがな!
ダガーナイフ×2、ビームブーメラン、脚部ナイフに最後にバスターソード。
バスターソードは、少々小せえが、両刃でありつつ取り回しがよく軽量だ。
こっちは、左側の背部アームに接続されてらァ。
軽量で素早く移動、スカートのダガーと、膝・前腕のセイバーでガンガン行け!」
「これは……確かに僕らしいね」
多様な意味で尖った装備に、少したじろぐヒヅル。
「で、最後にタイプC。アイズプラン。
これはねぇ〜、君の『眼』に合わせたプラン。
日照×2、プラズマビームバズーカ、アームガン×2、そして長距離リニアキャノン『ハヤテ』が2つ。
このタイプだけ、前腕アーマー全換装だから予備のセイバー2本は無くなる。
代わりに連射の効くビームガンでなんとか。
ハヤテは、この前腕下部から伸びる長距離砲ね。
反動は大きいが、当たれば戦艦だろうとぶち抜く。
ヒヅルくんの眼の良さなら外すことは無いだろう、という信頼の上に成り立っているよぅ」
「使い終わった武器は脱着して、距離を詰め切られる前の撤退も可能なんですね。
退きどころの見極めも要求される装備、ですね」
流石に3つ目になるとの見込みが早いようだ。
「ま、役割で言うなら、汎用機、切り込み隊長、固定砲台の3装備だなァ」
「地形によっては組み合わせた特殊プランもあると思うけど、それはまた今度だねぇ」
2人がうきうきとしながら、ヒヅルの背をポンと叩く。
それでヒヅルには漸くわかった。
彼らもヒヅルを励まそうとしていたのだ。
彼らの思いやりを無駄にしてはいけない。
同じだ、高校の仲間や家族と。
彼らに支えられて、今も生きている。
そのありがたさに、少しだけ気づけたのだ。
その折、ふとウォルノがヒヅルに言葉を投げかけた。
「ん?お前……筋トレでもしてんのか?」
「え、どうして?」
突然の問いにヒヅルは眼を丸くする。
「なんだろうな、少し背中が広くなったな」
【ライナーノーツ】
1 タイトル元ネタ:元ネタというほどではないですが。
ヴァン・ヘイレンの隠しトラック「Growth」という15秒ほどのトラック……の海外考察記事っぽいのを見て一気に書き上げたお話。




